親知らずを抜歯するのにCT検査が必要なのはなぜ?CT検査をする理由
「どうして2回もレントゲンを撮る必要があるの?」
「普通のレントゲンとCTって何が違うの?」
親知らずの抜歯をする際、レントゲンを撮ったのにさらにCTレントゲンも撮る場合、上記のような疑問を持つ方もいるでしょう。
中には「追加料金が狙いでは?」と不信感を抱く方もいるかもしれません。
しかし、通常の歯科用レントゲンとCTレントゲンでは、それぞれの役割が違います。
ここでは、親知らずの抜歯をする際になぜCT検査が必要なのかを詳しく説明していきます。
- 歯を抜くだけなのに CT検査で追加費用を払うことに疑問を感じる
- なぜレントゲンを撮ったのにCT撮影まで必要なの?
- レントゲンとCTの違いはなに?
1. 親知らずの抜歯でCT検査をする理由
親知らずを抜歯するためにCT撮影をして検査するのは、以下のような理由です。
- 見えなかったものが見える
- 経験や勘だけに頼らない医療ができる
- リスクを回避できる
1つずつ詳しく説明しますね。
1-1. 見えなかったものが見える

通常の歯科用レントゲンは平面写真です。平面では奥行きがわからないため、歯がどのような向きや角度で生えているのか、神経や血管とどのくらいの距離があるのかまでは分かりません。
CTは三次元の立体写真なので、親知らずとその周辺の詳細な情報が分かるのです。

平面では影になっている部分は見えないですが、CTではそういう部分まで見ることができます。
なるほど、奥行きとか交差しているようなものも分かるんですね!
1-2. 経験や勘だけに頼らない医療ができる

従来は経験による勘や知識に頼る治療を行っていた歯医者も多かったのですが、CTが導入されてからは客観的に診断できるようになりました。
ちなみに、歯科用CTは一般的な医療用CTと比べるとより高解像度なので、歯・神経・血管・骨などを詳細に見ることができます。頭部のみの撮影なので、横にならず自分の服を着たまま撮影できるというメリットもあります。

経験や勘だけに頼っていた時は歯医者の技量に大きく差が出ましたが、CTを使うと技量の差を縮めることができるんです。
どの歯医者さんでも一定以上の医療を受けられるのは嬉しいですね!
1-3. リスクを回避できる

親知らずが生えている場所には大きな神経などが通っているため、リスクを回避するためにもCTで撮影し周辺の状態を把握しておくのは重要です。
リスクって具体的にはどんなものですか?

実際にどんなリスクがあるのかは、次の章で説明しますね。
2. 親知らずの抜歯に伴うリスクとは
ここでは親知らずの抜歯に伴うリスクについて、詳しくご紹介します。
- 大きな傷みや大量出血がある可能性がある
- 神経を傷つける恐れがある
- 麻痺などの後遺症が残る可能性がある
こちらもひとつずつ詳しく説明していきますね。
2-1. 大きな傷みや大量出血がある可能性がある

親知らずが生えている場所は、上あごは上顎洞という鼻から上に存在する大きな空洞のすぐ近くです。下あごには大きな神経が通っています。
そのため、稀ではありますが上顎洞や神経を傷つけてしまった場合は大きな傷みや大量の出血が起こることがあります。
親知らずが生えている場所が問題ってことですね!

はい。とても繊細な位置なので、痛みや出血を少しでも抑えるためにも、CT検査は必要です。
2-2. 神経を傷つける恐れがある

下あごには下顎管(かがくかん)という大きな神経が通っています。人によって位置が微妙に異なり、親知らずと下顎管が離れていれば、そのまま抜歯をしても問題ありません。
しかし、親知らずと下顎管が重なり合っているような場合や接触しているような場合は、そのまま抜歯すると神経を傷つけてしまう恐れがあります。
そのため、CTで確認して慎重に治療を進める必要があります。

親知らずの根っこが曲がっていて、抜歯するときに下顎管を傷つけてしまうケースもあります。
CTでどのくらい重なり合っているかとかが分かれば、抜き方も注意できるってことですか!

そんな感じです。神経に触れないように抜歯することが可能になります。
2-3. 麻痺などの後遺症が残る可能性がある

万が一、神経を傷つけてしまった場合には、顔面に麻痺などの後遺症が残る可能性もあります。
そんなトラブルを起こさないためにも、事前にCT撮影をして状態を把握し、リスクを回避します。
親知らずを抜くのって痛みをちょっと我慢すればすぐ終わりかと思ってけど、実は色々と複雑なんですね!

そうですね。血管や神経だけでなく、骨格の大きさや形も関係するので検査してみないと分からないんです。
3. CT検査の結果、抜歯を中止するケースも

親知らずの抜歯をする際には、まずはパノラマレントゲンで親知らずとあごの状態を確認します。その後、リスクがある可能性がある場合にはCT撮影をすることになりますが、検査の結果、抜歯を中止することもあります。
抜歯をするメリットよりもリスクが上回った時や、一般的な歯医者では対応できないような時です。
そういった場合は、口腔外科や整形外科が併設された歯科が入った大学病院を紹介されるケースもあります。
一般の歯医者さんで対応できないのはどんなケースですか?

骨の切除が必要な場合や、神経や血管が入り組んで難しい抜歯になる場合などですね。
4. CT検査は保険が適用される

CT撮影は、全額負担だと10,000円〜15,000円程度です。しかし、パノラマレントゲンを撮影してリスクがありそうと判断された場合は、CT撮影の費用は保険が適用されます。
保険適用内の費用は、4,000円弱〜5,000円程度です。

CT機材はクリニックによっても違うので、費用も異なります。
そうなんですか!CT撮影の機械にも種類があるんですね!
5. CT機材がない歯医者の場合はどうする?

近年ではCTを導入している歯医者がかなり増えてきましたが、中には導入していない歯医者もあります。
もしも親知らずの抜歯を希望していてCT機材がない場合は、CT機材がある別の歯医者や医療機関を探して受診することをおすすめします。
親知らずの抜歯には、先ほど述べたような重大なリスクがある場合があります。パノラマレントゲンだけでは分からないリスクが潜んでいる可能性もあるので、CT撮影を行える環境が整った歯医者で治療を受けるほうが安心です。

自院にCTがなくても、パノラマレントゲンでリスクがありそうと分かった場合は、CTがある医療機関を紹介してくれるところも多いですよ。
それなら安心ですけど、リスクがありそうと判断するかどうかにもよりますね…。

そうなんです。ですので、できればはじめからCTのある歯医者さんに行くのがおすすめです。
5. CT検査は親知らずの抜歯をより安全に行うのが目的
CT検査は、親知らずの抜歯をより安全に行うために必要な検査です。
通常のレントゲンを撮ったときに、なんの問題もなければCT撮影をせずに抜歯を行います。しかし、親知らずは形状が複雑なうえに大きな神経や上顎洞に近いため、抜歯に大きなリスクを伴うのです。ほんの少しでもリスクがあればCT撮影をしてより詳細に検査します。
もしも疑問に思うことがあれば、遠慮なく質問しましょう。きっと丁寧に説明してくれるはずです。
- CT撮影をすると見えなかったものが見えてくる
- 経験や勘だけに頼らない医療ができる
- 痛みや大量出血、麻痺などのリスクを回避できる
- CT検査の結果、抜歯のメリットよりリスクが大きい場合は抜歯を中止するケースもある
- 一般の歯医者で対応できない時は大学病院での抜歯を勧められることも