命を落とすかもしれない?歯周病を予防!全身疾患との怖い関係

命を落とすかもしれない?歯周病を予防!全身疾患との怖い関係

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鈴木志帆美先生
鈴木 志帆美 先生
専門:小児歯科・歯内療法
2015年 神奈川歯科大学卒業
歯周病が、怖ろしい全身疾患にもつながることをご存知でしょうか?
歯周病は細菌による感染症です。細菌がお口の中の環境を悪化させるだけでなく、唾液や血液、呼吸器などを介して全身を巡り、時には命を脅かすほどの重い病気を引き起こす可能性だってあるのです。
ここでは、歯周病を起因として命を落とすことになるかもしれない、怖ろしい全身疾患についてお伝えします。

歯周病は感染症。細菌が全身を巡ると、どうなる?

毎年、歯周病を起因とする肺炎によって、たくさんの命が失われています。肺炎のほかにも、狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、関節炎・リウマチ、骨粗鬆症、妊娠性高血圧、早産・低体重児出産といったさまざまな重篤な疾患のリスクが高まります。
それぞれの発症リスクについて、詳しくみていきましょう。

歯周病菌が「肺」へ入ると…?

歯周病菌は口から呼吸器を介して肺に入り込むと、次のような疾患のリスクが高まります。
    • 肺炎
    • ぜんそく
    • 咽頭炎

歯周病菌が「血管」から全身へ送られると…?

歯周病菌は血液に入って血管を巡り、全身へ細菌が送られると、さらに怖ろしい疾患へとつながります。重篤な脳・心臓疾患を発症することも少なくありません。心臓発作に関しては、起こすリスクが3倍近くまで高まるといわれています。
    • 心臓発作
    • 心内膜炎
    • 脳梗塞

妊娠している女性が歯周病にかかると…?

妊娠している女性が歯周病にかかると、下記のような疾患の発症リスクが高まります。
歯周病がひどくなると子宮に害が及び、陣痛を促進します。そのため、生まれてくる赤ちゃんが早産であったり、低体重で出産に至ったりするリスクが7倍以上に膨れ上がるといわれています。
    • 妊娠性高血圧
    • 早産
    • 低体重児出産

高齢者が歯周病にかかると…?

日本人の死因4位は「肺炎」(厚生労働省:人口動態統計2018参考)です。65歳以上の高齢者がほとんどを占めていて、その多くが、歯周病をきっかけとする「誤嚥性肺炎」であると報告されています。

歯周病と関係が深い全身疾患について

歯周病がさまざまな全身疾患へのリスクを伴うことを知っていただけたと思います。
生命の危険に陥るような全身疾患を引き起こすことがないように、日常的にお口の中の細菌を減らすために、細菌の温床となる歯垢を除去してプラーク・コントロールを心がけなくてはなりません。
それではここで、歯周病菌に端を発する全身疾患がどのような病気であるのか、見ていきましょう。

誤嚥性肺炎

食べ物を飲み込む機能を嚥下(えんげ)といいますが、本来、口から喉を通り、食道へ入るはずの食べ物が、誤って気管に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」といいます。
誤嚥性肺炎」は、飲み込む力が弱まっているために、食べカスや唾液などが細菌を伴い、一緒に肺に入り込んでしまうことから発症します。

また、脳梗塞を発症していた場合、嚥下機能への問題に自覚症状がなくても、睡眠中、無自覚のうちに自然に唾液が気管に流れ込んでしまう場合があります。そういったきっかけでも、誤嚥性肺炎が発症しています。

狭心症・心筋梗塞

日本人の死因2位は「心疾患」(厚生労働省:人口動態統計2018参考)とあって、命を落とす人が多い疾患です。
歯周病を患っていると、狭心症・心筋梗塞を引き起こす確率が高くなります。
歯周病菌が狭心症・心筋梗塞を引き起こす原因として、さまざまな説があります。そのひとつが、歯周病菌の中でも血管壁を介して血液中に入り込む可能性が高い細菌ジンジバリス菌の影響です。
細菌が血管に入り込むと菌血症や敗血症の状態になり、身体の抵抗力が下がることで重篤な疾患への引き金となり、そして突然、狭心症・心筋梗塞が起こるのです。
また、歯周病菌が感染して歯ぐきに炎症を起こし、そのほかの危険因子をつくりだしていることも考えられています。そうしたリスクから身体を守るために血液内にも炎症物質が作り出され、血栓となって血管を詰まらせてしまうことから心筋梗塞を引きく起こすとも考えられています。

脳梗塞

脳梗塞は、糖尿病などの生活習慣病によって発症するリスクが高まります。
糖尿病の患者さんは歯周病にもかかっている率が高く、非常に脳梗塞を発症しやすい状態にあるといえます。
歯周病を治療していると糖尿病が改善することもわかっています。必然的に脳梗塞のリスクも下がります。
全身疾患を予防する意味でも、普段から歯周病の予防に力を入れましょう。

関節炎・リウマチ

歯周病は、関節炎・リウマチ発症にも深い関係があることが指摘されています。
歯周病菌のポリフィロモナス菌が、リウマチ発症のきっかけとなる免疫異常に関係しているという研究が進んでいます。関節炎を患っている人の多くが歯周病も発症しているという調査結果からもわかるように、歯周病の予防として口内細菌のコントロールを行っている人といない人では、関節炎やリウマチの発症リスクに差がでてきます。
また、関節炎・リウマチを患うと運動機能にも影響がでます。そうすると、歯ブラシやデンタルフロスを使ってのセルフケアが満足にできなくなることがあります。お口の中にの菌の繁殖を止められなくなり、全身疾患のリスクが高まります。

骨粗鬆症

骨粗しょう症は、骨の量が少なくなって、骨がもろく、折れやすくなる状態です。
骨は、古い骨を溶かし、カルシウムを吸収することで新しく骨を作る「骨代謝」を繰り返して強さを維持しています。
骨粗しょう症になると骨が溶ける量に対して新しく作られる量が減り、骨が弱くなってしまうのです。
特に、古い骨の吸収には女性ホルモンのエストロゲンが関わっていることから、閉経によって分泌量が急激に減る60代以上の女性に骨粗しょう症が多くみられます。
また、骨の吸収に関わる女性ホルモンが減少すると、歯周組織に炎症が起こりやすくなります。そして歯の土台となるあごの骨と歯ぐきをつなぐ歯槽骨が溶けて歯がグラグラし、歯周病が進行していきます。
骨粗しょう症の症状があると、歯周病が進行するスピードが速くなり、歯が抜け落ちる、抜歯を免れない、といった状態にまで悪化しやすくなります。
歯周病の予防や改善のための治療を行い、歯周組織の炎症を抑えると、骨粗しょう症を改善できることもわかっています。

妊娠性高血圧

妊婦さんは、とても歯周病にかかりやすい状態です。妊娠性高血圧を発症するリスクも高まります。妊娠性高血圧は、歯周組織でつくられた炎症物質を起因とするため、通常時よりリスクが2.4倍高まるといわれています。

歯周病菌のひとつに、女性ホルモンのエストロゲンが多い環境を好んで繁殖しやすいプレボテラ・インターメディアという菌があります。
妊娠すると女性ホルモンの分泌量が圧倒的に増えます。妊娠初期と妊娠後期でも5倍以上もの増加がみられます。
赤ちゃんがお腹のなかにいる大切な時期、女性にとって最も歯周病のリスクが高まっている時期でもあるのです。無菌で産まれてくる赤ちゃんに菌を移さないためにも、妊娠中にお口のケアをしっかりとおこなって歯周病を予防しましょう。

早産・低体重児出産

歯周病を発症した妊婦さんは、妊娠22週~36周までに赤ちゃんを出産する早産や、2500g未満の赤ちゃんを出産する低体重児出産のリスクが高まります。
原因は、歯周病のよって歯周組織に作り出される炎症物質です。これが血液に入り込んで体内を巡ります。やがて子宮に影響を及ぼし、早産などの異常事態につながるのです。
妊娠期は非常に口内環境が悪化しやすく、歯周病を発症しやすい時期でもあります。

妊娠中に歯科治療を受けてもいいの?」という疑問を持っている方もいらっしゃいますが、問題ありません。むしろ、妊婦さんこそお口のケアが大切です。

歯周病の症状が、国家資格を持った歯科衛生士によるプロのクリーニングを受けるだけで症状が改善することもあります。特に、自宅でのセルフケアが行き届かなくなりがちで、磨き残しをしてしまいやすい時期でもあります。体調と相談しながら、お口のケアのために歯科医院へ積極的に通うことをおすすめします。

体調に大きく変化がある時期ですので、なるべく安定期に入った妊娠5カ月~7カ月に治療を受けるようにするとよいでしょう。それ以外の時期でも応急処置などは受けられますので、お口にトラブルが発生したら、我慢しないで早期に歯科医師に相談しましょう。

口腔ケア・歯周病の予防で症状は改善する?

正しい歯磨きの方法がわからないまま、毎日なんとなく歯を磨いているせいで磨き残しが溜まり、それが歯垢になって歯周病菌を繁殖させてしまうケースは少なくありません。
適切なセルフケアを行い、生活習慣を整えれば、歯周組織の炎症を鎮めて症状を改善することができます。

また、介護を必要とする高齢者や闘病中の方は、訪問歯科を利用して口腔ケアを受ける方法もあります。
お口のリハビリテーションにもなって、嚥下機能が回復したというケースや、口臭が改善してお世話をする方の負担が少なくなったというケースもみられます。
口腔ケアは、歯周病を確実に改善します。

毎日の歯磨き+歯科医院でのプロケアを併用

歯周病は、歯科医院でお口のケアを行い、毎日の歯磨きを励行することで症状を改善できる病気です。
1日3回、食事の後の歯磨きと、1日1回以上、歯ブラシ1本+歯間清掃器具を使った念入りな歯磨きを継続していくだけでも効果があります。
そして、歯ブラシでは届かない部分に溜まった歯垢の清掃などは、歯科医院でプロのメンテナンスにおまかせしましょう。
定期的に通うことで自分のお口の状態がわかりますし、担当の歯科衛生士がついてくれることもありますので、一人でケアしているよりも歯周病の治療や予防もモチベーションが上がります。

一人ひとりのお口や歯の形に合わせた適切な歯磨きの方法があります。歯科医院で自分のお口に合ったオーダーメイドのセルフケアの方法を指導してもらいましょう。