【歯科医監修】インプラント治療するとがんになるって本当?

【歯科医監修】インプラント治療するとがんになるって本当?

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杉田大先生
杉田 大 先生
所属:杉田歯科医院(千葉県船橋市)
専門:保存修復
2013年 東京歯科大学卒業。現在は杉田歯科医院での臨床のほか、株式会社DoctorbookでDental事業部のマネージャーを務める。

インプラントでがんになるという話を聞いて、不安になっている人がいるかも知れません。また、インプラントの良い話はたくさん聞くけど、デメリットやインプラントができないケースなどについて知りたいと思っている人も多いでしょう。そこで、ここではインプラントとがんとの関係インプラントのデメリットなどについて説明していきます。

INDEX
  1. インプラントが原因でがんになることはありません
  2. 口腔がんについての基礎知識
  3. インプラントのデメリット
  4. 全身疾患とインプラントの関係
    1. 放射線治療をしている人は原則として受けられない
    2. 特定の薬を服用している人は受けられない
  5. インプラント周囲炎とは
    1. インプラントと喫煙の関係
  6. インプラント周囲炎への対策法
    1. しっかりとしたセルフケアを行う
    2. きちんと定期メンテナンスに通う
  7. インプラントはその後のケアが最重要!

インプラントが原因でがんになることはありません

結論から言うと、インプラントが直接的な原因で埋入手術直後に突然がんになるということはありません。インプラントは発がん率が高いとどこかで聞いたことがある人もいると思います。しかしそれは、インプラント埋入後の管理がきちんとされておらず、口内が汚れていて細菌が繁殖しやすい状況や、喫煙などをしている場合が考えられます。つまり、インプラントを入れているかどうかによらず、そもそも口内ががんになりやすい環境だということです。

インプラントでなりやすいのは、インプラント周囲炎という病気です。インプラント周囲炎は歯周病とよく似ていますが、歯周病にかかっている人は全身の疾患にもかかりやすい傾向があるとの報告があります。つまり、インプラント周囲炎になりやすい人は、他の病気にかかるリスクも高いかもしれません。しかし、毎日のケアを徹底すればインプラント周囲炎にかからず、健康なお口の状態を保つことができます。

口腔がんについての基礎知識

口腔がんとは口の中にできるがんのことで、舌・舌裏・歯ぐき・頬の内側など、口の中のあらゆる粘膜にできます。現在、日本人の2人に1人が一生のうちがんになり、3人に1人ががんで死亡すると言われています。その中で、口腔がんの確率はがん全体の1〜2%ほどで、粘膜に関係がある扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)は口腔がんの中で90%以上を占めているとされています。

扁平上皮とは体の表面を覆っている組織の一つです。扁平上皮癌は口内・喉・膀胱・肛門・子宮頚部など、内部が空洞になっている臓器の粘膜組織に見られます。扁平上皮癌の原因のひとつに慢性炎症があることから、インプラント周囲炎が連想され、インプラントと結びつけて考えられることがあるのでしょう。

しかし、扁平上皮癌を含め口腔がんの原因の多くは、口内の衛生状況の悪さ飲酒・喫煙ということが分かっています。また、口腔がんは虫歯や義歯、口内の乾燥、辛いものや熱い飲食物など、口内を頻繁に刺激にさらすことも関連しているとされています。口内に強い刺激があると、細胞の遺伝子が傷ついてがん化するリスクが高まるからです。しかし、インプラントは骨に埋入してしっかりと固定され金属部分が外に出ていないため、口内刺激になることは考えにくいです。

インプラントのデメリット

それではインプラントそのもので考えられるデメリットは?と不安を抱える人も多いと思います。インプラントで考えられるデメリットは、以下のものです。

    • 治療期間が長い
    • 治療費が高め
    • 外科手術をする必要がある
    • 外科手術に伴う腫れ・痛み・感染症のリスクがある
    • 全身疾患がある人は受けられない場合がある
    • ヘビースモーカーの人は受けられない
    • 16歳未満は受けられない
    • インプラント周囲炎になる可能性がある

インプラントの治療期間は固定期間などを挟むため、一般的には3ヶ月〜6ヶ月です。また、外科手術を伴うため、治療費も通常の歯科治療より高くなるケースがあります。骨を削る手術のため、治療後は痛みや腫れが出ることがあり、感染症のリスクなどもあります。

16歳未満というのは、成長期にある人を指します。骨が成長している最中にインプラントを行うと、成長に伴う噛み合わせの変化阻害する可能性があります。それゆえインプラントは、口内や顎骨の成長が落ち着く16歳以上の人を対象としているのです。全身疾患以降の項目については、以下で別々に説明していきます。

全身疾患とインプラントの関係

糖尿病や心臓病、高血圧、腎臓病、骨粗鬆症など血液や骨が関連する全身疾患がある人は、インプラント治療をするのが難しく、中にはできないケースもあります。インプラントは外科手術を伴うため、感染症のリスクが高くなるからです。

放射線治療をしている人は原則として受けられない

がんなどで放射線治療を受けている場合、外科手術を行うと影響が出る場合があります。放射線を当てた部位に外科手術を行うと、骨髄炎になるリスクがあるからです。また、放射線治療を受けると唾液量が少なくなります。唾液は口内を殺菌・防菌する作用があるので、インプラント治療が成功しても唾液が少ないことが原因でインプラント周囲炎になる可能性があります。

放射線治療をしている人すべてがインプラント治療をできないわけではありませんが、上記のような理由があるため、あまりおすすめはできません。

特定の薬を服用している人は受けられない

インプラントの禁忌として、特定の薬があります。それが、ビスホスホネート(ビスフォスフォネート)系ステロイド系の薬です。ビスホスホネート系の薬は骨粗鬆症の人が飲む薬ですが、骨の結合を阻害したり、顎骨壊死の可能性があります。症状が軽く少量の服用であれば3ヶ月服用を中断すれば、インプラント治療ができるという記述もありますが、最新の情報では3ヶ月の休薬でもリスクは変わらないとされています。骨粗鬆症治療中または既往歴がある人は、かかりつけ医とよく相談することが重要です。

ステロイド系の薬を飲んでいる人がインプラントNGなのは、手術などのストレスでショックを引き起こすリスクが高いためです。ステロイド系の薬は副腎機能が抑制する薬で、喘息やリウマチなど自己免疫疾患の病気の人が飲んでいます。手術中に発作などが起こった場合は、大変危険です。また、免疫力も落ちているため、非常に感染しやすいといったリスクも伴っています。

その他、インプラント手術が難しいとされているのは、高血圧や脳梗塞などの人が飲む、血液を流れやすくする薬(抗凝固薬抗血小板薬)です。抗凝固薬や抗血小板薬を飲んでいる人は、手術中に血が止まりにくいという現象が考えられます。だからといって薬を一時的に中断すると、今度は手術中に体内に酸素や血液が流れなくなる血栓や梗塞などの危険にさらされます。

いずれにせよ、全身疾患の人は免疫力が低下していて感染症になりやすいので、十分な状態確認や検査をして慎重に手術する必要があります。インプラントと薬や全身疾患に関する記事は、以下で詳しく述べています。

【保存版】インプラントと全身疾患の関係と治療後の全身へのリスク

【医師監修】インプラントとワーファリンの関係を分かりやすく説明!

インプラント周囲炎とは

インプラント周囲炎とは、インプラントの歯周病と考えると分かりやすいでしょう。インプラント本体は人工物なので病気にはなりませんが、インプラント周辺の粘膜組織や骨組織がかかる病気です。

口内には歯周病の元となる菌が常在しています。通常は唾液の自浄作用によって抑制されていますが、食べカスなどからプラークが形成されると細菌の働きが活発になり、歯周病が作られます。歯周病菌はインプラント周辺組織に炎症を起こし、インプラントを支える骨まで侵入してしまうのです。しかも、インプラント周囲炎は一旦かかると進行のスピードが早く治りにくいので非常にタチが悪いです。

インプラント周囲炎を放置しておくと、最悪の場合には骨が退縮してインプラントがむき出しになったり、抜け落ちたりします。

インプラントと喫煙の関係

インプラント治療は、基本的に喫煙者はできません。というのも、タバコに含まれるニコチンやタールは歯ぐきの血流を悪くし、インプラント周囲炎になりやすい環境にするからです。また、それらタバコの成分は、インプラントと骨との結合も阻害します。顎骨や歯ぐきに走っている細かい血管を収縮させるため、骨の再生や傷の治りが悪くなるからです。

喫煙者がインプラントを希望する場合、ほとんどの歯科では禁煙をしてもらいます。

インプラント周囲炎への対策法

インプラント周囲炎への主な対策は予防です。全身にも様々な弊害を引き起こすインプラント周囲炎にならないためには、以下の2つを守ることが重要です。

しっかりとしたセルフケアを行う

セルフケアでは、毎食後寝る前などの歯磨きをしっかりとし、口の中にプラークを作らせないことが大切です。食事の後にはプラークができやすくなります。プラークの大好物は食べカスなので、食べカスをしっかりと取り除けばプラークはできません。歯磨きだけでは不十分なので、歯間ブラシやフロスなどを併用するのがおすすめです。

また、就寝中細菌が一番繁殖する時間帯です。寝る前にしっかりと歯磨きをすることで、インプラント周囲炎のリスクを低減することができます。

きちんと定期メンテナンスに通う

定期メンテナンスはとても重要です。歯磨きはしっかりとやっているようでも、誰にでも磨き残ししやすい場所があるもの。定期メンテナンスでは、磨き残ししやすい場所やブラッシングの仕方なども教えてくれます。

万が一インプラント周囲炎になったとしても、初期の段階ならインプラント上部を外して除菌などを繰り返せば、症状は落ち着いてきます。こういった処置ができるのも、定期メンテナンスの特徴です。

インプラントはその後のケアが最重要!

インプラントが直接的な原因でがんになることはありませんが、全身に弊害があるとすれば全身疾患の人は慎重にインプラント治療を行わなければならないことと、インプラント周囲炎です。もし、なんらかの持病がある場合には、歯科と内科それぞれのかかりつけ医とよく相談することが重要です。既往歴服用している薬があれば、インプラント治療前に歯科医に報告しましょう。

インプラント周囲炎は、インプラントの大敵です。セルフケア定期メンテナンスをしっかりとし、プラークを作らせないようにすることが重要です。