【医師監修】インプラントとワーファリンの関係を分かりやすく説明!

【医師監修】インプラントとワーファリンの関係を分かりやすく説明!

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櫻井祐弥先生
櫻井 祐弥 先生
所属:エムズ歯科クリニック下落合
専門:デジタル
東京都出身。東京医科歯科大学を卒業し、インプラント専門医の下で臨床研修を行った後に医療法人社団翔舞会エムズ歯科クリニックに入社。現在、エムズ歯科クリニック下落合院長として診療をする傍ら、子育てと趣味の読書と最近習い始めたゴルフに奮闘している。

インプラントができない場合でよく耳にするのが「ワーファリン」という名前です。ワーファリンとはインプラント関係の専門用語なのか、はたまた何かの名前なのかと疑問に思う人もいるでしょう。また、ワーファリンと関わりがある人にとっては、インプラント治療について興味があると思います。

ここでは、ワーファリンについてと、ワーファリンとインプラント治療の関係について説明します。

ワーファリンとは薬の名前です

ワーファリンは薬の商品名で、血液をサラサラにする薬です。心筋梗塞脳梗塞などに対して処方されます。現在は高齢化社会ということもあり、ワーファリンを服用している人でインプラントを希望する人も多くなってきました。

心筋梗塞や脳梗塞は、動脈硬化などが進んで血液がドロドロになり、血管の中で固まって血栓ができる事により起こる病気です。血流が滞ると、酸素や栄養分が送れなくなって細胞が死滅してしまいます。心臓の筋肉に起こるものが心筋梗塞、脳に起こるものが脳梗塞です。

ワーファリンは、血液が固まるのを防ぐ「抗凝固薬」です。血液には元々、傷を修復するための固まる物質が複数含まれており、そのうちのいくつかがビタミンKによってつくられています。ワーファリンは、ビタミンKを阻害することで、血液の流れを良くする薬です。

ワーファリンを飲んでいるとインプラントはできない?

ワーファリンを飲んでいても、インプラント治療をできるケースは多いです。以前はインプラント手術をする際に、ワーファリンの服用を一時的に止めていました。しかし、ワーファリンを止めると心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まって非常に危険だということで、現在は服用を止めずにインプラントの治療をします。

ただし、患者さんの状況などによって慎重に行わなければなりません。そのため、かかりつけの内科医との連携や、事前検査が必要です。

同じような薬で「アスピリン」もよく聞くけど?

アスピリンというと鎮痛剤を思い浮かべますね。アスピリンは鎮痛剤として使用されていますが、心筋梗塞や脳梗塞などにも処方される薬です。アスピリンは「抗血小板薬」と呼ばれ、血中の血小板血栓が産生されるのを防ぐ薬です。

ちょっと込み入った話になりますが、血栓がつくられるしくみはこうです。血管壁の一部が傷つくと、それを補修しようと血小板が傷のある壁面にくっつきます。さらにこれを応援する血小板がやってきて、血小板同士がくっついて、傷になっている血管内部の壁をふさぎます。

この補修部分をさらに強固なものにするため、今度は血中にある数種類の凝固因子が応援に駆けつけます。複数の凝固因子はお互いに反応しあい、のようなものを作り出します。これに血小板が上からくっついて次第に大きな塊になるのですが、これが血栓です。つまり、血栓ができるには、血小板と凝固因子がセットで必要です。

健康な体は、血栓ができないようになっていますが、動脈硬化によって血管の内部にコレステロールがたまると、動脈硬化部分の血管内部にお粥状のドロドロとした塊ができます。塊は血管内を狭くするだけでなく、剥がれると血管壁に傷を作ります。それからは、上記で説明した血栓がつくられるしくみと同様のことが起こります。これが、心筋梗塞や脳梗塞のメカニズムです。

アスピリンは血小板が血栓を作るのを防ぎ、ワーファリンは凝固因子がつくられるのを防ぐ薬なのです。

その他の抗凝固薬・抗血小板薬の名前

ワーファリンやアスピリンは、薬の名称です。抗凝固薬や抗血小板薬には、別の名前の薬もあります。以下は、代表的な薬(商品名)です。

抗凝固薬ワーファリン(ワルファリン)
プラザキサ
エリキュース
リクシアナ
抗血小板薬バファリン
バイアスピリン
プラビックス
パナルジン
エパデール
プレタール
アンプラーグ
アンギナ―ル
ドルナー
プロサイリン
ペルサンチン
オパルモン
プロレナール
セロクラール
ロコルナール

ワーファリンやアスピリンを処方される病気

抗凝固薬や抗血小板薬を処方される病気は、以下のようなものです。

    • 心筋梗塞
    • 脳梗塞
    • 動脈硬化
    • 狭心症
    • 高脂血症
    • 静脈塞栓症
    • 心臓弁膜症
    • 脊髄管狭窄症 など

抗凝固薬や抗血小板薬とインプラント治療

抗凝固薬抗血小板薬を服用している人がインプラント埋入を行う場合には、薬の服用を中断せずに手術を行います。その場合には、局所の止血剤を使用したり、止血を行ったりしながら手術を進めます。止血剤には、骨ワックス特殊ガーゼ、シリコンスポンジ、シーネ(ギブスなどを作る際に使われる固定剤)などを使用します。手術は止血をしながら行うためやや時間がかかりますが、慎重に行うためには必要なことです。

服用を止めるとかえって危険

以前は手術中の出血を心配し、服用を一時中断してインプラント手術を行っていました。しかし、国内外から、抗凝固薬や抗血小板薬を中断して抜歯をしたことにより、合併症の比率が高い・予後の状態が悪くなるなど複数の報告がありました(抜歯も出血を伴うため、インプラント手術の参考とされています)。

そのため、日本循環器学会の抗凝固薬・抗血小板薬のガイドラインでは、抜歯時には抗血栓役の継続が望ましいとしています。インプラント手術もこれに準じると考え、最近では服用を継続したまま手術をします。ただし、手術前には特定の検査が必要です。

インプラント前にPT-INR検査でチェック

ワーファリンやアスピリンを飲んでいる人は、インプラント治療ができるかどうか、事前にPT-INR検査を行います。

PT-INR検査とは、国際標準に則った血液凝固薬系の血液検査のことです。年齢や病気など様々な条件によって適正値が異なりますが、2.0〜3.0未満までが出血や梗塞によるリスクが低いとされています。検査はごく小さな機器で行うことができ、歯科医でも実施しているところがあります。

ただし、ワーファリンやアスピリンを飲んでいる人は、医師に相談の上、内科医と歯科医師とが連携してインプラント治療に臨むことが前提です。

ワーファリンやアスピリンを飲んでいる人は必ず医師に相談を!

ワーファリンは抗凝固薬、アスピリンは抗血小板薬で、共に梗塞血栓症などの病気がある人が服用しています。服用していてもインプラント治療ができるケースが多く、その場合も途中で中断したりする必要はありません。

手術中は止血を行いながら慎重に行うため、通常よりも時間がかかります。インプラント治療を希望する人は、まずは内科医と歯科医に相談し、事前の検査をし、かつ体調などを考慮した上で進めます。ワーファリンを飲んでいるからと諦める必要はありません