【保存版】インプラントと全身疾患の関係と治療後の全身へのリスク

【保存版】インプラントと全身疾患の関係と治療後の全身へのリスク

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杉田大先生
杉田 大 先生
所属:杉田歯科医院(千葉県船橋市)
専門:保存修復
2013年 東京歯科大学卒業。現在は杉田歯科医院での臨床のほか、株式会社DoctorbookでDental事業部のマネージャーを務める。

インプラントをしたいけど、持病があるとできないのでは…と悩んでいませんか?実際に断られるケースも多いようですが、疾患の症状の程度によっては、インプラントができる可能性があります。この記事では、全身疾患がインプラント治療に与える影響を、疾患別に取り上げて説明します。全身疾患があってもできるインプラントの方法もお伝えしますので、最後までご覧ください。

インプラントでリスクが考えられる全身疾患

インプラントで考えられるリスクには、手術中のリスク手術後の骨結合を妨げるリスクがあります。厚生労働省が発表している指針で、インプラントでリスクのあるとされる全身の基礎疾患は、以下のものです。

    • 高血圧
    • 心疾患
    • 脳血管障害
    • 糖尿病
    • 骨粗鬆症
    • 消化器疾患
    • 腎臓機能障害
    • 気管支喘息
    • 慢性閉塞性肺疾患
    • 貧血
    • 自己免疫疾患
    • 金属アレルギー
    • 精神疾患

それでは、ひとつずつ詳しく説明していきましょう。

1.インプラントと高血圧

高血圧の原因のひとつは、動脈硬化です。動脈硬化の人は血液の流れを良くする薬(抗血栓薬・抗血小板薬)を飲んでいますが、手術の際にはこれが災いして出血が止まらない可能性があります。また、手術前には、ストレスから血圧が上がってしまうリスクが高まる可能性があります。しかし、対策を講じることでリスクを軽減することが可能です。

ひとつは、服用している薬を継続して飲み続けることです。症状がコントロールされていれば、リスクは低くなります。手術中は止血対策をしながら進められます。もう1つは、静脈内鎮静法です。精神をリラックスさせる薬を点滴で入れることにより、ウトウトしている間に手術が終了します。

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2.インプラントと心疾患

インプラントで影響があるのは、虚血性心疾患です。狭心症や心筋梗塞など、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が狭くなる、あるいは血管が痙攣を起こすことなどによって血液や酸素が行き届かなくなる病気です。

術中に血管に障害が起こると、血液や酸素が行き渡らなくなります。そのため、服用している薬を継続して飲み続けるほか、合併症が起こらないよう十分に配慮して手術が進められます。

3.インプラントと脳血管障害

脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血などの病気を持つ人も、抗血栓薬抗血小板薬を飲んでいる可能性が高いです。やはりインプラント手術中には合併症を引き起こしやすいため、状態などを詳しく検査した上で、手術ができる場合があります。

また、後遺症により運動麻痺がある場合は、術後の口腔清掃ができるかどうかが鍵となります。インプラントは口の中の清潔を保っていないと、インプラント周囲炎という病気のリスクがあるからです。

4.インプラントと糖尿病

糖尿病の場合は、手術中と骨結合両方にリスクがあります。手術中は、低血糖や過血糖など、血糖値が不安定になることが考えられるため、手術前の注射のタイミングなどを医師とよく相談して行うことが重要です。

また、糖尿病にかかると骨がもろくなるので、骨結合が難しくなるケースが多いです。糖尿病にかかると免疫力も下がるため、感染へのリスクも高まります。医師の指示の下、きちんとした管理がなされている場合にはインプラント治療が可能ですが、重度の糖尿病ではインプラント治療が難しい場合もあります。

5.インプラントと骨粗鬆症

骨粗鬆症は、骨の結合に関係があります。骨密度が少ない場合は、骨に強度がないために骨と結合しにくく初期固定で失敗するというリスクが考えられます。

また、骨粗鬆症の薬の一部は骨の治癒を阻害ため、この系統の薬を飲んでいる人はインプラントができません。ビスホスホネート系や骨粗鬆症の一部の薬を飲んでいてインプラント治療をした際に、顎骨壊死や顎骨骨髄炎が発症した症例が報告されています。

MEMO
インプラントの初期固定とは、インプラントを埋入した直後にインプラントがグラつかずにきちんと収まることをいいます。その後、二次固定で、生物学的に骨組織とインプラント体がしっかりと合体します。

6.インプラントと消化器疾患

消化器疾患とは、肝機能障害胃・十二指腸潰瘍などです。肝臓は、血液凝固因子という傷を治す物質が主に作られる場所です。そのため肝機能に障害があると、血が止まりにくく免疫機能も下がるので、傷口の治癒が遅くなるというリスクがあります。ウイルス性肝炎の場合は急性や末期でなければ、手術自体に大きな影響はありません。ただし、ウイルス性肝炎の場合、型によってはインプラントの手術中に、院内感染の恐れがあります。

また、胃・十二指腸潰瘍の病歴がある人は、インプラント治療の後に処方される痛み止めや抗生物質などで、病気が再発してしまう可能性があります。しかし、かかりつけの内科と連携し、手術後の投薬などに注意すれば、インプラントの治療を受けることは可能です。

7.インプラントと腎機能障害

腎機能疾患がある人は、高血圧浮腫、うっ血性心不全などの合併症を伴うことが多いです。免疫力が低くなって感染症の危険もある他、透析をしていると唾液量も少なくなるので、インプラント周囲炎にもかかりやすくなります。症状が重い腎不全で透析治療をしている場合は、上記の理由からインプラント治療はできません

8.インプラントと気管支喘息

気管支喘息アスピリン喘息などの呼吸器系の病気を持っている人は、手術中に使う薬剤などが刺激となり、症状が出てしまうというリスクがあります。症状をコントロールできるのであれば手術は可能ですが、以下のようなリスクもあるのであまりおすすめできません

    • 治療薬としてステロイド系を使っている場合:感染症のリスクあり
    • アスピリン喘息:非ステロイド性抗炎症剤は服用できない

特にアスピリン喘息の場合は、非ステロイド性抗炎症剤は禁忌とされていますが、術後に痛み止めとして誤って服用すると、最悪の場合死に至る危険があります。

9.インプラントと慢性閉塞性肺疾患

慢性閉塞性肺疾患とは、以前は慢性気管支炎肺気腫などとも呼ばれていた病気です。主にタバコの煙などを長年吸入することによって肺の細胞が壊れ、酸素が全身へ送り込めなくなる生活習慣病です。タバコの他にもハウスダスト、医薬品、自己免疫疾患が原因のものもあります。

長年喫煙をしている人は、歯ぐきの血行が悪くインプラントの骨結合が難しいです。また、インプラント周囲炎にもなりやすくなります。また、気管支喘息と同じように、薬剤が刺激となって手術が困難になるリスクが考えられます。

10.インプラントと貧血

貧血の原因は、血液中の赤血球やヘモグロビンが少なくなるまたはその機能が低下することです。これらが少なくなると、酸素が全身にうまく運ばれなくなり、免疫力や治癒力が低下してしまいます。

そのため、インプラントの手術をしたあとの治りが悪くなったり、細菌感染のリスクがあります。ただし、症状によっては手術が可能な場合や、改善を待って手術する場合もあります。

11.インプラントと自己免疫疾患

自己免疫疾患とは、膠原病関節リウマチ、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎などです。自己免疫疾患にかかっている人は治療にステロイド薬を使っている場合が多いですが、ステロイドを長期服用していると、免疫が弱まり手術による体の急な変化に対応できなくなってしまう可能性があるため難しいです。

12.インプラントと金属アレルギー

インプラントは基本的にチタンという金属を用います。チタンは生体結合しやすい物質で、硬く体内に溶け出しにくいため、メインの素材とされています。金属アレルギーの人でも比較的対応しやすいですが、中にはチタンアレルギーの人もいます。まずはパッチテストなどを行い、チタンアレルギ―である場合は、非金属のジルコニアなどのインプラントを用いることになります。

アレルギーでいうと、他にはアトピー性皮膚炎薬物アレルギーがあります。いままでに何か薬でアレルギー反応があったという人は、事前に検査しておくことが大切です。

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13.インプラントと精神疾患

うつ病、統合失調症、神経症、認知症などの精神疾患のある人でインプラントを希望する場合は、感情面で長期に安定していなければ、術後に悪化する可能性があるためインプラント治療は避けるべきとされています。

また、薬の管理治療後の口内清掃を管理できることが前提です。特に、術後の口腔清掃はとても重要です。インプラント周辺の組織はインプラント周囲炎という病気にかかりやすく、一旦かかってしまうと治りにくいうえに、骨が急速に吸収されてインプラントを支えるものがなくなっていってしまいます。インプラント周囲炎になる原因は、口内の歯垢虫歯、歯周病などによる感染です。そのため、毎日の歯磨き定期メンテンナンスにきちんと通えることが、インプラント治療の大前提となります。

インプラント治療後になる可能性のある病気

インプラント治療後に気分がふさぎ込む、顔がピリピリする気がするなどの、うつ症状心身症が発生する場合があります。近年多くなっているケースで、歯科心身症と呼ばれています。インプラント治療はきちんと成功しているのにこのような自覚症状がある場合は、知覚神経が関係しています。口は顔面や脳に近く、口内の粘膜や神経はとても敏感なのです。

インプラント治療後になんとなく気分が塞ぐ、違和感が取れないなどの不調が続くようであれば、大学病院などの口腔外科や、「心療歯科」「心身医学」をかかげている歯科を訪れることをおすすめします。

全身疾患がある人がインプラント治療を受ける際の注意

全身疾患がある人は、以下のようなことに注意してインプラント治療を受けることが重要です。

主治医に相談する

まずは、かかりつけの内科と歯科に相談します。治療には多くの薬剤や機器などを使うため、素人判断だけでは手術が可能かどうかの判断ができません。また、両方の医師が直接連携をとって行うケースも多々あるため、必ず両方の主治医に相談しましょう。

治療する歯科医を選択する

歯科医選びはもっとも重要です。歯科医によって考え方が異なりますし、その歯科医の経験や技量、病院の設備などによっても治療内容が左右されます。全身疾患があっても、なんとかインプラント治療をできるように考えてくれるところもあれば、大事を取って絶対禁忌とするところもあります。また、仮に「全身疾患があっても可能」と言っていても、知識不足からなのか、豊富な経験や症例を持っているからなのかを、見極める必要があるでしょう。

ほとんどの病院のホームページには、その病院の治療方針などが詳しく記載されています。よく読み比べて検討し、不明点は直接説明を聞きに行ってみるなどして、十分に考えて選択することがおすすめです。

タイミングや薬について知る

自分の服用している薬飲むタイミング、症状の程度などを知っておくことは重要です。薬を飲むタイミングは主治医から指示があると思いますが、自分でも理由を把握しておくと、飲み間違えや飲み忘れることがありません。また、同じ病気でも、改善を待てばインプラント治療ができる場合もあるので、自分の病気の状態をぜひ把握しておきましょう。

フラップレス法ならインプラントできる可能性あり

ほとんどの歯科医院では、全身疾患がある場合には慎重を期して、あまりインプラント治療を勧めません。ただ、最近では患者さんの負担が少なく、最小限のわずかな穴をあけるだけで手術が可能な「フラップレス法」があります。

フラップレス法は、実施している歯科とそうでないところがあるので、実施しているかどうか確かめてみましょう。フラップレス法に関する詳しい内容は、以下の記事で紹介しています。

【医師監修】フラップレスインプラントのメリットとデメリットとは?

インプラントと全身疾患のまとめ

全身疾患があると、外科手術はどうしても何らかのリスクが伴います。ただ、症状の程度や状態によっては、インプラントの手術ができる可能性もあります。全身疾患があるからと諦めず、まずは主治医やインプラントの歯科医に相談してみることをおすすめします。

自分でも病気について調べ、疑問や不安があったら歯科医に質問してみるのも良いでしょう。その際は、経験豊富で全身疾患にも明るい大学病院口腔外科などに行くのがおすすめです。