妊娠中に虫歯になりやすい理由と妊婦さんにおすすめの虫歯予防の方法

妊娠中に虫歯になりやすい理由と妊婦さんにおすすめの虫歯予防の方法

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柿木辰美先生
柿木 辰美 先生
専門:一般歯科
2013年 明海大学歯学部卒業。卒後は東京都内の歯科医院に常勤歯科医師として勤務。 現在は複数の歯科医院で非常勤歯科医師として、インプラントや歯内療法を軸に一般歯科診療を日々行なっている。

妊娠中はお腹が大きくなるだけでなく、体に様々な変化が起こるので戸惑ったりすることもありますよね。お口の中に関しても同じです。

妊娠中は何かとお口の中のトラブルが起こりがちです。今回は、妊娠と虫歯の関係について、ご紹介します。

妊娠すると虫歯になりやすいって本当?

本当です。今まで歯が丈夫で何も心配したことがなかったのに、妊娠したら虫歯や歯茎の腫れなどを訴える人が多くいます。その理由を説明していきましょう。

ホルモンバランスの変化による口内への影響

妊娠すると、体内の女性ホルモンのバランスが大きく変化します。体の中では女性ホルモンをはじめ様々なホルモンが目まぐるしく活躍して赤ちゃんを生むための準備をするからです。

ホルモンは自律神経を大きく左右します。鬱っぽくなったりイライラしたり、反対にこれまでにない幸せな気分を味わったりするのも、自律神経の影響です。

自律神経は口の中にも大きな影響を及ぼします。ホルモンバランスの変化によって唾液の量や口内のpHバランスが変化すると、口の中の常在菌のバランスも崩れます。

口の中には善玉菌と悪玉菌がいて、通常はpHバランスによってうまく保たれているので悪玉菌は抑えられています。しかし、口内バランスが崩れると、悪玉菌が活動できるようになり、虫歯などになりやすくなってしまうのです。

つわりによる歯に良くない影響

つわりの時期は、歯ブラシのヘッドを口に入れるだけでも辛いことがあるため、歯をきちんと磨きにくくなります。また、酸っぱいものがほしくなることや胃酸の逆流によって、口の中が酸性になりやすいです。

さらに、食事についても一度にたくさん食べられない時は、少量を複数回に分けて食べるようになるため、口内に食べカスが残りやすくなります。

普段は唾液の働きでpHバランスが整えられたり、唾液の水分で食べカスが流されたりして、口の中の清潔が保たれています。しかし、妊娠中はホルモンバランスの影響で唾液がネバネバした性質に変化するので上記のような働きも十分でなくなるのです。

そのため口内は菌が増殖しやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。

食べ物の嗜好が変化する影響

妊娠中は食べ物の好みが変わります。妊婦さんは酸っぱいものやさっぱりしたものばかり欲しくなるイメージがありますが、意外にもハンバーガーやポテトチップスなどのジャンクフード、フライや揚げ物などのガッツリ系、おまんじゅうやドーナツ、ケーキなどの甘いものが無性に食べたくなるという人が多いのです。

上記のような食べ物は、柔らかくて歯にくっつきやすくタンパク質や油分が豊富でいずれも虫歯菌の大好物です。

それに加えて少量ずつ食べるので食事回数が多くなったり、歯磨きが不十分になったりするため、虫歯になりやすい環境になります。

歯医者さんに行きづらくなる影響

妊娠すると体調が思わしくない日が多くなり、外出にも気を遣います。歯医者さんの予約を取っても予定通りに行けなくなる場合が多くなります。また、定期検診などの通院もあるので、歯医者さんの予約もとなるとせわしなくなり行きづらくなってしまうのです。

そのため、虫歯が気になっても「出産してから治せばいいか」と後回しにしてしまいがちです。

出産してから虫歯を治すのでは遅い理由

しかし、出産してから虫歯を治すのでは、以下のようなリスクを避けることができません。

虫歯や歯周病の菌は早産のリスクを高める

口内に潜む菌は、低体重児の出産早産のリスクが高いことが、多くの研究で分かっています。口内の菌が作り出す炎症物質細菌が血中に入り、体をめぐって胎盤から胎児に影響をもたらしてしまうのです。

虫歯菌は赤ちゃんにうつる可能性がある

虫歯はよく遺伝すると言われますが、そもそも虫歯は感染する病気です。

赤ちゃんが生まれると、保健所などから「食べ物は口移ししないようにしましょう」「同じスプーンや食器を使わないようにしましょう」と指導されます。その理由は、虫歯は唾液で感染するからです。

たとえスプーンや食器を別々にして細心の注意を払ったとしても、熱いものをフーフーして冷ましてあげたり、くしゃみや咳などで感染しないとも限りません。

生まれたばかりの赤ちゃんの口内には虫歯菌は存在しませんが、身近な大人から感染ると赤ちゃんも虫歯になってしまう恐れがあります。

赤ちゃんのためにも、生まれる前に虫歯の治療をしておくのが賢明です。

出産後は自分のことが二の次になってしまう

赤ちゃんが生まれると、お母さんはとても忙しくなります。3時間毎のミルクや授乳、オムツ替え、泣いたら抱っこするなどの傍らで通常の家事もしなければなりません。

やることがたくさんあるので、自分のことにかまけていられなくなるのです。そのため、出産したら治療しようと思っていても、なかなか歯医者さんに行けない可能性があります。

妊娠中の歯の治療で気になるリスク

いろいろなことを考え合わせてみると、出産前に虫歯治療はしておいたほうが良いのですが、中には「妊娠中に歯の治療をしても大丈夫なの?」と不安になる人もいると思います。中でもよく聞くリスクについて、ご説明します。

レントゲンは胎内に良くないのでは?

歯の治療でもレントゲンが必要になる場合がありますが、その一方で「妊娠中はレントゲンを撮ってはいけないのではないか」と思いますよね。

歯医者さんで撮るレントゲンは、お腹から離れた口内の一部分であることと、放射線を通さない鉛のエプロンを必ず着用するので赤ちゃんへの影響はほとんどないことが確認されています。

麻酔や鎮痛剤が使えないのでは?

妊娠中は薬を飲んではいけないと言われますが、歯の治療で使う麻酔や痛み止めは使用しないで治療をするのかと不安になる人も多いでしょう。

しかし、麻酔は局部麻酔になるため、治療する場所周辺にしか影響はありません。また、鎮痛剤はアセトアミノフェンなら安全です。

まったく100%安全という薬はありませんが、歯医者さんではできるだけ母体やお腹の中の赤ちゃんに影響が少ない薬を使います。

お腹が大きくなると姿勢が辛いのでは?

歯医者さんの治療台は、仰向けになるのでお腹が上になって心配という声もあります。たしかに妊娠後期になると、自宅で眠る時も横向きになり、仰向けでは寝られません。

妊娠中に歯医者さんに行く時期は、安定期の5〜9ヶ月がおすすめです。この時期ならまだお腹も苦しくない場合が多いからです。

ただし、姿勢が苦しい時は、我慢せずにすぐに歯医者さんに伝えましょう。

妊娠したら行いたい口内ケア

妊娠すると歯磨きが不十分になりがちで、つわりなどの関係から口内ケアがしにくくなります。そんなときでもおすすめなのが、下記の方法です。

つわりでも口内を清潔にできるうがい

つわりで歯ブラシを使用できない時は、水うがいだけでもかなり口内がきれいになります。市販のマウスウォッシュや殺菌作用のある緑茶でうがいをするのもおすすめです。

ハーブも良いですが、ハーブには妊婦さんが使ってはいけない種類(ミントなど)もあるので、注意しましょう。

キシリトールガムを習慣にする

キシリトール配合のガムは、手軽に口内を清潔にできるのでおすすめです。キシリトールには細菌の繁殖を抑える働きがあるほか、ガムを噛むと唾液が増えて、唾液による殺菌作用を働かせることができます。

歯医者さんに相談する

虫歯など口内で気になることがあったら、気軽に歯医者さんに相談しましょう。歯医者さんでは妊娠中の人には考慮して治療が進められるため、妊娠時期に関わらず、妊娠していることを必ず伝える必要があります。

体調なども考慮してくれるので、体調が優れず予約時に行けない時は、電話で相談すれば大丈夫です。

妊娠したら早めに歯医者さんで検査をしよう

妊娠したら、口内トラブルが発生しやすくなります。妊娠中に口内の検診を受けておくと安心です。また、虫歯菌は妊娠・出産後にも様々な影響を及ぼすため、できるだけ早めに歯医者さんと相談して、治療をするのをおすすめします。母体や胎内が落ち着いている安定期に行ってくださいね。

また、ストレスや不安はお母さんにもお腹の赤ちゃんにもよくありません。検査や治療で少しでも不安や心配なことがあったら、遠慮なく歯医者さんに言って、不安を取り除きましょう