歯周病を引き起こす最凶の原因菌レッドコンプレックス!対処法を徹底解説
歯周病は、感染症の一種であることをご存じでしょうか?歯周病の原因となる口内細菌によって引き起こされる病気です。
中でも、重症な歯周病を発症させる危険な細菌群があります。それはレッドコンプレックスと呼ばれる3大歯周病菌です。
今回は、レッドコンプレックスに含まれる菌の特徴や、歯周病の治療法・予防法について解説します。
- 歯周病の原因は何なのか知りたい方。
- 歯周病は感染症と聞いて感染が気になっている方。
- どんな細菌が歯周病菌の原因になるのか知りたい方
- 歯周病の治療法や予防法を知りたい方。
- 歯周病は手術で治せると聞いたが本当?
歯周病とは?


歯周病ってよく耳にするけれど、結局のところ何なんですか?むし歯とは違うんでしょうか?

歯周病もむし歯も、細菌によって引き起こされる感染症です。

えっ、感染症なんですか!?

はい。歯周病に感染すると歯ぐきが腫れ、歯を支える骨が溶けていき、最終的に歯歯が抜け落ちることもあります。

えぇーっ、怖いですね!
歯周病に感染すると歯ぐきに炎症を起こし、やがて、歯の周りの組織が破壊され、歯を支える骨が溶かされて歯がグラグラします。ひどいときには、歯が自然に抜け落ちてしまうこともありますし、治療をしたくても抜歯を免れないケースも少なくありません。
歯周病は菌によって引き起こされる感染症
口内に棲む細菌は、700種類にも及ぶといわれています。身体によい働きをする乳酸菌のような善玉菌も多いのですが、なかには、歯周病やむし歯の原因になる悪玉菌も多く存在します。
口内環境が良好であれば問題ないのですが、ひとたび歯磨き不足になったり砂糖を摂りすぎたりすると悪玉菌の量が増加します。
そこに睡眠不足やストレス過剰で免疫機能の低下という悪条件が重なると、たちまち歯周病菌が活発化し、歯ぐきの腫れや出血といった症状があらわれるようになります。
歯周病は命に関わる全身疾患にも影響を及ぼす
実は、歯周病は、初期の軽度の段階では自覚症状がほぼありません。腫れや痛み、出血、しみるといった症状がでている段階は、かなり歯周病が進んでいると考えられます。
歯周病が重度になると、お口の中に細菌がうようよと存在する状態です。そうなると、歯ぐきにできた炎症から血管に入り込み、毒性の強い炎症物質が全身を巡ります。
そして、脳や心臓、肺、子宮などの重要な器官でトラブルを起こし、動脈硬化、心疾患、脳梗塞、肺炎、早産といった命を脅かしかねない病気を発生させるのです。
歯周病の3大原因菌「レッドコンプレックス」を知ろう


感染症ということは、どんな細菌が歯周病の原因なのかわかっているんですか?

わかっていますよ。歯周病の3大原因菌は、「レッドコンプレックス」と呼ばれています。

レッドコンプレックス!?うわ~、悪役まるだしの名前ですね!怖そう!
歯周病と関係の深い口内の常在菌を、歯科領域ではピラミッド型に色分けして図式化し、共有しています。
口内には700種類もの細菌が常に存在しています。
その中でも、最も重症な歯周病を引き起こすとわれる3種類の細菌は「レッドコンプレックス」と呼ばれ、ピラミッドの頂点に君臨しています。
その下の層はオレンジで、最も関連が薄いとされる最下層はブルー、そのほかパープル、グルーン、イエローの各コンプレックスに分けられています。
歯周病の原因と関連が深い菌種群ピラミッドの頂点
レッドコンプレックスは、重症の歯周病の原因になる3大歯周病菌です。
- ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.g.菌)
- レポネーマ・デンティコーラ(T.d.菌)
- タンネレラ・フォーサイセンシス(T.f.菌)
最凶!ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.g.菌)
歯周病菌のなかでも最凶といわれるのが「ポルフィロモナス・ジンジバリス(P.g.菌)」です。
ネバネバとした粘着力が強いタイプで、頑固な細菌のかたまりであるバイオフィルムを形成しやすいという特徴があります。
血管内に入り込む!レポネーマ・デンティコーラ(T.d.菌)
レッドコンプレックスのナンバー2といわれる「レポネーマ・デンティコーラ(T.d.菌)」は、歯と歯ぐきの隙間にある歯周ポケットで繁殖する細菌です。
毒素を発して歯を支える顎の骨を腐食させ、ひどい口臭を発生させます。
また、歯ぐきの炎症から血管に入り込んで全身に毒素をばらまきます。
歯周組織を壊す!タンネレラ・フォーサイセンシス(T.f.菌)
3凶歯周病菌の一員である「タンネレラ・フォーサイセンシス(T.f.菌)」も、レポネーマ・デンティコーラ(T.d.菌)と同様に歯周ポケットに付着して歯周組織を破壊する細菌です。
このほかにも、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(A.a.菌)やプレボテラ・インターメディア(P.i.菌)といったさまざまな細菌が、歯周病に悪影響を及ぼすことがわかっています。
特にプレボテラ・インターメディア(P.i.菌)は、女性ホルモン「エストロゲン」が大好物。女性ホルモンの分泌量が通常の10倍~30倍と爆発的に増える妊婦さんの口内環境が悪化しやすいのは、こういった嗜好をもつ歯周病菌の影響なのです。
歯周病の治療法・予防法


危険な歯周病菌、どうすれば倒せますか~?

歯周病治療の基本は、歯磨きの徹底と歯科での歯石除去です。重症化した歯周病には、外科処置を行うことになりますね。

へぇ~!歯周病って手術で治せるんですね!

そうなんです。ですが歯周病の手術は、その後のメンテナンスの継続がセットです。手術で大きく改善を図り、引き続き歯磨きの徹底と歯科でのメンテナンスを続けます。

ほほーう、なかなか時間がかかりそう……!
歯周基本治療
歯周病の治療でまず行われるのが「歯周基本治療」です。
歯周基本治療で改善が見られ、歯周ポケットが4mm以下まで浅くなったら、定期健診・メンテナンスにうつります。
プロケア(歯科での歯石除去)
歯科で、歯周病の原因となっている細菌のかたまりである歯石の除去(スケーリング、ルートプレーニング)、歯面の清掃を行います。
セルフケア(歯磨き)
歯科での歯周病治療を併用しながら、ご自宅では徹底した歯磨きを行います。
歯科で磨き残しやすいところのチェックや、効果的な歯磨きの方法を指導されますので、それに従って毎日続けます。
歯周外科治療
歯周基本治療では改善が見込めないほど悪化した歯周病の場合、外科手術を行います。
外科手術の目的には2つあります。
1つは、歯周ポケットの奥底にたまっている歯石の除去。歯ぐきを切開し、その内側をキレイに清掃します。
2つは、歯ぐきの再生治療。歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶かされて安定感が失われているケースがあります。その場合は歯ぐきを切開して歯石を取り除いたあと、リグロスやエムドゲインという薬剤を注射して歯周組織の再生を図ります。
※リグロスやエムドゲインを使った「歯周組織再生療法」については下記の記事が参考になります。
定期的なメンテナンス
歯周病が改善しても、再発防止のために引き続き定期的なメンテナンスを受けましょう。
お口の状態にもよりますが、最初は1カ月に1回の通院でも、健康を取り戻すにつれて3~4カ月に1回、半年に1回と頻度が少なくてすむようになります。
歯周病の治療・予防の基本はブラッシング!

歯科での定期的なケアと、毎日の歯磨きをしっかりと行って歯周病を予防しましょう。
歯科健診では、年齢やお口の形状によって異なる一人ひとりに適した効果的なブラッシングの方法をレクチャーしてもらえます。
健康な方でも半年~1年に1回は定期健診をうけて蓄積した歯石除去をすると、お口のトラブルとは無縁に過ごせるようになれるでしょう。
- 歯ブラシの毛先を当てて磨く
- 歯ブラシは細かく動かす
- 歯ブラシは軽く磨く
- 1カ所10~20回、5分以上かけて磨く
- デンタルフロスで歯間の汚れを除去する
- できれば毎食後、寝る前に丁寧に磨く

へぇ~!なんとなく磨いていたことに気付かされました~!夜寝る前の歯磨きって大事なんですね。

睡眠中はお口の中が乾燥しますから、口内細菌が活発になって増殖するタイミングなんです。寝る前に歯磨きをして、できるだけ細菌量を減らしておくといいですね。感染症の予防にもおすすめですよ。

へぇ~!さっそく今日からやってみます!

意識して磨くと、歯磨きの予防効果がみるみるアップしますよ。楽しみですね。
- 歯周病は、口内細菌による感染症の一種。
- 特に重症な歯周病を引き起こす3つの細菌がある。
- レッドコンプレックスは危険度の高い歯周病菌群。
- 歯周病の改善は、歯科でのメンテナンスと歯磨きの徹底。
- ブラッシングのコツを実践すれば予防効果が高まる。