抜歯しないで矯正する方法の是非|非抜歯矯正のメリット・デメリット

最近では、非抜歯という矯正治療の方法が一般的に浸透してきています。しかし、非抜歯を主張する歯科医がいる一方で、抜歯はやはり必要だと言う歯科医も多くいます。治療を受ける側としては、抜歯と非抜歯どちらがどう良いのか、しっかりと知りたいところですよね。
ここでは、抜歯と非抜歯の考え方や、非抜歯矯正のメリット・デメリットを取り上げていきます。今後矯正治療を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
- できれば抜歯せずに矯正したいと思っている。
- 非抜歯と抜歯の違いを知りたい。
- 非抜歯のメリットとデメリットを知りたい。
- 非抜歯のトラブルをよく耳にするが、どんなトラブルなのか知りたい。
- 非抜歯を勧められたが、本当に良いのだろうか?と疑問を持っている。
矯正における抜歯・非抜歯の考え方

先生、最近流行りの非抜歯矯正を詳しく教えて下さい。

流行っているわけではないんですが(苦笑)
矯正における抜歯・非抜歯の考え方は様々です。ただ、患者さんだけでなく、歯科医もできることなら健康な歯は1本でも残しておきたいというのが、正直なところです。ほとんどの歯科医が、できる限り健康な歯を残して治療することをベースに考えます。
しかし、歯や顎の状態によっては、抜歯しないと理想的な口元にならないことがあり、そのためには抜歯という方法を取らざるを得ません。誰でも健康な歯を抜いてしまうのには、ためらいがあります。ですが、歯科医は最終的にナチュラルで整った歯並びにするために、避けられない抜歯があると考えています。
矯正で抜歯する理由とは

矯正で抜歯する理由は、おおまかには「十分なスペースの確保」と「理想的な口元にすること」の2つです。
抜歯すると十分なスペースを確保できる
成長が終了している大人の顎の場合、歯を動かすためのスペースを確保する必要があります。成長段階でまだ乳歯が残っているような場合であれば、顎の成長に合わせてスペースを確保し、歯を動かすこともできます。しかし、大人の場合は今あるスペースでなんとかしなければなりません。
日本人の顎は元々小さく、大きな大人の歯がすべてきれいに生えるには少し狭い場合があります。八重歯や凸凹に生えている叢生などは、生えるための面積が少ないので、重なったり斜めに生えてしまったりしている状態です。例えて言うなら、10人がけの電車のシートに11人座っているようなイメージというと分かりやすいでしょうか。

なるほど〜!歯がギュウギュウ詰めだったんですね。

そうですね。ゆったり座らせてあげるには、スペースが必要ですね。
これをきれいに並べるには、スペースを作るしかありません。歯を抜いてスペースを作ることで、重なったり斜めに生えている歯を、正常な向きと位置に戻すことが可能となります。抜歯はスペースを作るために必要なことなのです。
ところで、抜歯するのはどの歯って決まってるんですか?

通常は、比較的噛み合せに影響のない小臼歯が選ばれます。

抜歯すると口元が美しくなる

抜歯直後は歯がすっぽりと抜けた状態なりますが、徐々に歯を動かすにつれて、歯全体が正常な位置に収まり、出っ張っていた口元が引っ込みます。
特に八重歯やガチャガチャの歯並びの人は、口元が突き出ていたり、口をきちんと閉じられないというお悩みを持っています。抜歯でスペースを作り、歯を全体的に動かして矯正すれば、歯並びが良くなるだけでなく口元も引っ込んで自然な美しい口元になります。
実は私も八重歯が気になって矯正を始めたんです〜!

矯正が終わる頃には、口元が気にならなくなりますよ。
非抜歯のメリット・デメリット

抜歯・非抜歯は歯科医だけに頼るのではなく、自分でもメリットとデメリットを把握しておきましょう。
メリット:健康な歯を抜かずに済む
非抜歯のメリットは、なんと言っても健康な歯を抜かなくて済むことです。厚生労働省が掲げる8020運動は、80歳になっても健康な自分の歯を20本以上保とうというもの。高齢になっても健康な歯で食事ができるということは、栄養の摂り方にも左右するため重要なことです。
年をとっても自分の歯で噛めるって、何気にすごいことなのね。
デメリット:口元が出っ張るリスクがある
非抜歯の最大のデメリットは、歯並びだけに着目し、口元の仕上がりまで考えていないケースです。そのせいで矯正後も口元が突き出てしまったというトラブルも多く聞きます。抜歯せずに無理に歯を並べようとすれば、歯に無理な圧がかかって出っ歯になってしまったり、元に戻ってしまったりしやすくなります。いくら歯並びが整っても、顔相が悪くなったり再治療が必要となれば、成功とは言えないでしょう。それじゃ、せっかく高いお金を出してもムダになっちゃう。

費やした時間や労力も全て無駄になってしまうのは、もったいないですよね。
非抜歯で矯正する方法

大人が非抜歯で矯正できるのは、歯を大きく動かさなくても良い場合です。非抜歯で矯正する方法は、以下の2つになります。
顎を拡大する
顎を拡大って、も、もしかして…。

もちろん、工具などで顎を無理やり押し広げたりはしませんよ(笑)
顎を拡大するとは、通常の歯列より外側に歯を並べることによって、スペースを作る方法です。歯列を半円形に例えるなら、半径を一回り大きくするイメージです。ただし、全体の歯列を外側に広げるため、口元全体が出っ張ってしまう可能性があります。
歯を削って小さくする

治療したい歯の両隣の歯をわずかに削って、スペースを作って歯を動かす方法です。ディスキング、ストリッピング、IPRとも呼ばれます。ヤスリ状の道具を用いて削っていきます。抜歯しなくて良いという他に、ブラックトライアングル(歯と歯に生まれる黒い隙間)がなくなるというメリットもあります。
先生、でもエナメル質削ったら虫歯になりやすいんじゃ…。

鋭い指摘ですね!確かにそのような可能性もあります。
歯を削る治療の場合、削る量をしっかりとコントロールする必要があります。適切な量を削ることができれば、知覚過敏や虫歯は起きないという報告もありますが、とても高度な技術を要します。
悩んだらセカンドオピニオンという選択もアリ


もしも歯医者さんに提案された治療法で悩んだら、セカンドオピニオンを聞いてみるのもおすすめです。
セカンドオピニオンは、主治医から提案された治療法についての意見を、主治医以外の医師に聞くことができるシステムです。セカンドオピニオンを希望する場合は、一般的には主治医にその旨を伝えて紹介してもらいます。
「他の歯医者さんに聞くなんて、なんだか申し訳ない」と思う人も多いのですが、セカンドオピニオンは患者さんが納得し安心して治療を受けられるための制度です。医師はそのことを心得ていますから、不安なら思い切って聞いてみましょう。
矯正の最終目的は口元の美しさ!
矯正治療の最終目的は、理想的な歯並びと口元にすることです。そのために抜歯が必要であれば、噛み合せに影響の少ない小臼歯を抜くことになります。抜歯・非抜歯で矯正を考えるのではなく、歯列の状態からどんな治療が必要かを考えて行います。

非抜歯のメリット・デメリットを思い出して、医師とよく相談してみてください。
自分で分かってると相談しやすいですね〜。
- 理想的な歯並びと口元にするためには、矯正での抜歯が避けられないこともある
- 抜歯する理由は、十分なスペースの確保と理想的な口元にすること
- 非抜歯は歯を抜かずに済むが、口元が突き出す可能性もある
- 非抜歯の治療法は顎を拡大する・両隣の歯を削るなど