高齢者に歯の矯正は必要?60代以上の人に歯列矯正をおすすめする理由

歯並びが悪いと歯垢が溜まりやすく歯周病になりやすいため、大人になってから矯正をする人が増えました。ただ、高齢となると「余生を過ごすのにお金と時間がかかる矯正は必要だろうか?」「高齢でも矯正ができるのだろうか?」と疑問を持つ人もいるでしょう。
そこで、ここでは高齢で矯正をすることのメリットをご紹介します。読み終わる頃には、矯正が必要だと実感できるようになるでしょう。
- 高齢になって歯並びをきれいにする必要はある?
- 高齢で歯列矯正をするメリットを知りたい
- 高齢でも矯正治療を受けられるの?
- 病気があっても矯正治療できる?
- 高齢者の矯正治療で歯医者さんが気をつけていることは?
1高齢者に矯正治療をおすすめする5つの理由
高齢者に矯正をおすすめする理由は、次の5つです。
- 自分の歯で噛める
- 認知症やうつを予防できる
- 誤嚥性肺炎を予防できる
- 全身疾患を予防できる
- いつまでも若々しくいられる
ひとつずつ詳しく説明していきますね。
1-1.自分の歯で噛める

歯並びや咬み合わせが整うと、歯周病になりにくくなり自分の歯で長く生活できるようになります。
というのも、歯を失う一番の原因は歯周病だからです。
- 歯周病(37%)
- 虫歯(29%)
- 破折(18%)
- 以下その他、埋伏歯など
矯正して歯並びを整えれば、ケアが行き届き歯周病になりにくくなります。自分の歯でしっかりと噛める喜びは、歯を失ってから実感する人が多く、一度失った歯は元には戻りません。

1本抜けると全体の歯のバランスが崩れてどんどん歯が弱くなってしまうんです。
その最初の1本を出さないためには、矯正が必要なんですね!
1-2.認知症やうつを予防できる

近年、咀嚼力と認知症やうつ病などの関係が明らかになってきました。ものを噛んだ時の顎の刺激によって、脳の記憶部分を司る海馬や感情を司る前頭前野に、神経伝達されていることが分かったのです。
入れ歯だと噛む力が弱く、固いものを噛めなくなります。つまり、脳への十分な刺激を与えられなくなるのです。現在、医療や福祉の現場では、自分の歯で噛むことが、認知症やうつの予防になると注目されています。
噛むことが認知症を防ぐなんて、知りませんでした!じいちゃんに教えてあげなきゃ!

そうですね。自分の歯で噛むことは、すごく重要なんです。
1-3.誤嚥性肺炎を予防できる

悪い歯並びや抜けた歯がある状態だと、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まります。よく噛めないと咀嚼力や飲み込む力(嚥下力)が落ちて、食べ物が気管に入ってしまいやすいからです。誤嚥性肺炎は、死亡原因のトップです。誤嚥性肺炎を予防するだけで寿命を守ることができます。

顎は使い続けないと舌や口内の筋力が落ちて飲み込む力が低下してしまいます。
柔らかいものばっかり食べてちゃダメなんですね。

固いものを噛むには、咬み合わせの合った健康な歯列が必要ですね。
1-4.全身疾患を予防できる

整った歯並びや咬み合わせは全身疾患の予防にも役立ちます。
歯並びが悪いと歯周病になる確率や咀嚼力の低下といったリスクが高くなります。歯周病は悪化すると原因菌が血液を通して体内に侵入し、心疾患や腎臓疾患を引き起こす原因になり、糖尿病を加速させてしまうのです。
また、咀嚼力が低下すると脳への刺激が減るほか、全身の骨や筋肉も弱くなってしまいます。
どうして全身の骨や筋肉が弱くなるんですか?

顎の骨は、全身の骨や筋肉のバランスを保っているからです。咀嚼力が弱くなると、骨が歪んで腰痛や肩こりの原因になったり、筋肉が減って老化が進んでしまいます。
へえー、そうなんですね!
1-5.いつまでも若々しくいられる

歯並びがいい人は、いつまでも若々しい印象ですね。審美性の面から考えても、きれいな歯並びは重要です。
もしも歯を1本失うと、歯並びが崩壊して健康な歯がどんどん少なくなっていき、最悪の場合、最終的には総入れ歯になる可能性もあります。
本当にそんなことあるんですか?

例えば、部分入れ歯は、健康な歯を支えにします。支えている歯は使っていくうちに弱くなり、ダメになるとそこも部分入れ歯の対象になってしまうんです。
それを繰り返すうちに入れ歯の面積が広がって…なるほど!
2.高齢者の矯正は何歳までできる?
ここまで読んで、改めて矯正治療の重要性を感じたことでしょう。しかし、矯正治療は何歳までできるのか、気になりますね。
2-1.基本的に年齢制限はありません

矯正治療は、基本的に何歳からでも可能です。近年では支える顎骨が少ない人や、歯がない部分がある人でも受けられる治療法も開発されています。

矯正治療ができる状態であれば、何歳でもできますよ。
治療ができる状態っていうのがミソですね。
2-2.矯正治療ができない人

高齢で矯正治療ができないのは、以下のような場合です。
- 虫歯や歯周病がある人
- 歯磨きなど口腔ケアがしっかりできない人
- 月1回の定期検診に通えない人
- 体力的に矯正治療に耐えられない人
- タバコをやめられない人

虫歯や歯周病がある場合は、先にそちらの治療をしてから矯正に移ります。
タバコもダメなんですね?

タバコを吸っていると歯周病になりやすいですからね。
3.高齢で歯科矯正をすることで考えられるリスク
高齢で矯正治療をする場合、身体などへのリスクはないだろうかという心配もありますね。ここでは考えられるリスクについて説明します。
3-1.時間がかかる

矯正治療は1年以上かかります。矯正装置は月に1度など定期的に通院して調整する必要があるので、生活や体力的なことを考慮した上で治療を受けることが重要です。

入院などで途中で治療が中断されると、最初からやり直しになる可能性もあります。
どうしてですか?

動かした歯が戻ってしまうからです。
あー。矯正って完了までやり続けないとダメなんですね。
3-2.移動させる歯の位置などに制限がある

人は誰でも加齢につれて粘膜や筋肉の状態が変化します。そのため、移動させる歯の位置が思い通りの場所に動かせない場合や、使う矯正装置に制限が出てくることなどが考えられます。

歯茎や骨の関係で、動かしたい位置に移動できない可能性があるんです。
へえー、複雑なんですね。

そうですね。でも、患者さんの立場に立ってできるだけ最善の方法を考えますよ。
3-3.全身疾患がある場合は注意が必要

なんらかの全身疾患で骨の代謝に影響のある薬を服用している人は、矯正治療を受けられない場合があります。矯正治療を希望する場合は必ずカウンセリングを受けるので、その際に服用している薬を申し出ましょう。内科の先生に相談するのもおすすめです。
金属アレルギーがある人も申し出てくださいね。

カウンセリングのときは、できるだけ細かく伝えた方がいいんですね!
下の箇条書きをメモして持っていくといいですよ。
- 治療期間はどのくらいかかりそうか
- 自分にはどの矯正装置が適しているか
- 抜歯が必要か
- 全体の費用はどのくらいになるか
- 治療中に生活で気をつけること
- 治療中のリスク
- 治療中の病気
- 服用している薬
- 金属アレルギーの有無
矯正で咬み合わせを治していつまでも健康に過ごそう!
自分で噛むことは、長生きに直結します。なにより、何でも美味しく食べられるのは歯並びや咬み合わせが整ってこそ。いつまでも若々しく美しい歯並びは、友人やお孫さんにも自慢できますね。矯正治療を受けられるかどうかは、歯科医院の医師とよく相談しましょう。高齢者の矯正治療の経験が豊富な歯科医院がおすすめですよ。
- 高齢で矯正治療をするメリットは次の5つ
- 自分の歯で何でも噛める
- 咀嚼力が維持でき、認知症やうつを予防できる
- 咀嚼力が維持でき、誤嚥性肺炎を予防できる
- 歯周病になりにくくなり全身疾患を予防できる
- 歯並びが美しくなり若々しい印象
- 矯正治療は基本的に何歳からでもできる
- ただし、骨代謝薬を飲んでいる場合は要注意
- 矯正治療を受ける時は聞くことをメモして持っていく