最近増えているマウスピース矯正の不適切な矯正歯科治療を防ぐには?
マウスピース矯正はつけていることが人から見て分からないことが人気の矯正装置ですが、最近トラブルや苦情が増えているのをご存知ですか?
これを重く見た日本臨床矯正歯科医会は、2018年に医師向けに「カスタムメイドのアライナー型矯正装置を用いた不適切な矯正歯科治療について」というセミナーを開いています。
今回は上記の内容を元に、患者さんがマウスピース矯正で失敗しないように分かりやすく解説していきます。
現在マウスピース治療中で不安を抱えている方に対しての対処法もご紹介しますので、最後までお読みくださいね。
- 3年以上マウスピース矯正を続けているが、一向に効果が出ない
- 自分から希望したマウスピース矯正だけど、最初に説明された期間より長引いている
- マウスピース矯正中だが不安を感じている
- インターネットで買えるマウスピースは使用してもいい?
- 追加料金を請求されて結局高額になった
1.マウスピース矯正で増えているトラブルや苦情

マウスピースを使った矯正のトラブルや苦情でよくあるのは、アライナー型矯正装置(以後アライナー型)と呼ばれるマウスピースです。
アライナー型の矯正装置とは、3Dスキャンで作った透明なマウスピースのこと。着脱可能で一旦つけてしまえば人から見てつけていることが分からないというメリットがあります。正しく使用すれば良い選択肢と言えるでしょう。
・クリアライナー
・アソアライナー
・イークライナー
・アクアシステム
・DENマウスピース など
ただし、アライナー型のマウスピースは最近以下のようなトラブルや苦情が増加しています。
- 7年経っても効果が出ない
- マウスピースで矯正中だが治療が進んでいない
- マウスピースで矯正し始めたらあごが痛むようになってきた
- 担当医からマウスピースで出っ歯も治ると言われたが、他のサイトを見るとできないと書いてあるので不信感がある
- 治療に不安があり他の医師に相談したところ、マウスピースは適応しない歯並びだと言われた
へぇ〜、こんなにたくさんあるんですね!ちょっとビックリ!

確かにアライナーは技術の進歩によって高性能な種類も出ていますが、基本的な考え方を間違えるとトラブルの元になります。
基本的な考え方…ですか?

次章で詳しく説明しますね。
2. 着脱可能なマウスピース矯正の5つの注意点
マウスピース矯正を行う際には、以下の基本的な注意点があります。
- 効果が装着時間に左右される
- 適応する症例が限られる
- 歯の根からは動かせない
- 顎関節症になるリスクがある
- 本来なら保険内でできる場合も自費診療になる
1つずつ詳しく説明していきますね。
2-1. 効果が装着時間に左右される

矯正治療用のマウスピースは、1日20時間以上装着しなければ効果を得られません。
基本的には食事以外のすべての時間でつけていなければなりませんが、締めつけ感や不快感などから装着する時間を守らないと、計画通りに歯が動かなくなります。

マウスピースは最初に計画を立て、それに沿って作ったいくつものマウスピースを付け替えていきます。
そうですよね。

でも、その計画は1日20時間装着することを前提としているんです。
なるほど〜。だから勝手につけたりつけなかったりすると計画通りの効果が出ないんですね〜。
2-2. 適応する症例が限られる

マウスピース矯正は、大きく歯を動かすことができません。ワイヤー矯正では歯の1本ずつにかける力をコントロールすることができます。しかし、マウスピース矯正では歯によってかける力を区別することができません。
そのため以下のような症状の歯並びはマウスピース矯正ができないので注意しましょう。
- ガチャガチャの歯並び
- 大きく前歯が出ている(骨格が原因の出っ歯)
- 大きく下の歯が出ている(骨格が原因の受け口)
- 八重歯がねじれて生えている
- 歯の長さが1本だけ長い、または短い
- 咬み合わせが左右にズレている
- 成長途中の歯並びの矯正

特に骨格からズレている歯並びは、マウスピース矯正ではどうにもできません。
最近では出っ歯もマウスピースで治せるっていう歯医者さんもありますけど…

それは、ワイヤー矯正と併用してマウスピースを使うという意味ですよ。
あー、そうなんですね〜。
2-3. 歯の根からは動かせない

歯の根に原因がある歯並びの悪さは、マウスピース矯正では改善することができません。
歯の根が曲がっていたり、歯が歯ぐきの中に埋もれていて生えてこないようなものは、歯の根や骨を精密検査した後、然るべき対応をします。

歯には根っこがあってそこが原因になっているケースも多いんです。
ということは、マウスピース矯正は歯の見えている部分だけを動かすと考えていいんですか?

ざっくり言えばそうですね。
2-4. 顎関節症になるリスクがある

マウスピース矯正は歯列全体に被せるしくみです。動かしたい歯が一部でも、動かさない奥歯までマウスピースで覆います。
そのため奥歯に過剰な圧がかかることがあり、日頃から食いしばりがある方や噛みしめが強い方の場合、顎関節症になってしまうリスクがあるのです。

食いしばりや噛みしめの強さも事前に検査すれば分かるのですが、医師の矯正の知識が浅いとこういうことも起こり得ます。
マウスピース治療って気軽な印象だけど、きちんと矯正の専門家に受けないとダメなんですね〜。
2-5. 本来なら保険内でできる場合も自費診療になる

マウスピース矯正で使うアライナーはどこの国で製造したものであっても、現在日本の薬機法では認可されていません。そのためワイヤー矯正で治療すれば保険が適用される症状も、マウスピース治療を選択すると全額支払うことになります。
薬機法ってなんですか?

昔の薬事法のことですよ。平成26年に名称が変わったんです。
そうなんですね〜。
3. 良い矯正歯科医院を選ぶポイント

上記のことを知っても、どうしてもマウスピース矯正をしたいという方もいるでしょう。そこで、良い矯正歯科医院を選ぶポイントをご紹介します。
- 矯正歯科医が常勤で在籍している
- CT検査を実施している
- 精密検査の後、矯正歯科医自身が診断している
- 矯正歯科医が治療計画や費用について詳しく説明している
- 矯正歯科医が、マウスピース矯正が適するかどうか説明している
- 満足のいく効果が得られなかった際の、代替え治療法やセカンドオピニオンについて説明している
セカンドオピニオンって他の歯医者さんに移るってこと合ってますか?

はい、半分は正解です。詳しくは後ほど説明しますね。
4. もしもマウスピース治療で不安になったらセカンドオピニオンを利用する

もしも現在マウスピース治療をしていて、不安や不信感を抱いている場合は、セカンドオピニオン制度を利用することができます。
セカンドオピニオン制度とは、現在治療している内容を他の医師にも診てもらうことで、現在の治療についてより深く把握することができるというものです。
もしも他院で相談して現在の治療内容に納得がいかなければ、別の歯医者に移ることもあります。
他の歯医者さんに相談するなんて、なんだか信用してないみたいで悪い気がします…。

セカンドオピニオン制度は患者さんとの信頼を深めるきっかけになるので、どの先生も快く受けてくれるはずですよ。
6. 不適切なマウスピース矯正のまとめ
マウスピース矯正は、治療中のメリットも多いので悪い治療法というわけではありません。ただ、医師側が正しい知識を持って治療に当たっていないと不適切な治療にもなり得ます。治療を受ける側も今回ご紹介した注意点を知ることで、良い矯正歯科医を選んで不適切な矯正治療を防げるようになるでしょう。
- マウスピース矯正は1日20時間以上装着しなければ効果を得られない
- 歯並びにはマウスピース矯正に向き不向きの症例がある
- 歯の根や骨格が原因の歯並びはマウスピース矯正では治せない
- 食いしばりや噛みしめのクセがあると顎関節症になるリスクがある
- 本来なら保険内でできる場合も自費診療になる
- マウスピース矯正にはCTを用いた精密検査が必要
- マウスピース矯正には矯正の専門知識が必要不可欠
- マウスピース矯正装置は製造国を問わず、日本の薬機法で医療機器と認められていない
- マウスピースを用いて矯正する場合、医師は矯正歯科学の専門的知識が必要