出っ歯の矯正で健康保険が利くのはどんなとき?医療控除は受けられる?

矯正治療は基本的に自由診療で、健康保険が使えません。ただし、出っ歯の場合、人によっては健康保険が使える場合があります。ここでは、どんな人が保険を使えるのか、厚生労働省の定めている内容をわかりやすく簡単に解説していきます。ご自分が保険を使って矯正できるかどうか、ぜひ確かめてみてくださいね。
- 出っ歯の矯正はまったく保険が使えないの?
- 矯正で保険が利くのはどんなとき?
- 保険適用の場合、どこの歯医者さんでも治療できるの?
- 矯正は医療控除が受けられると聞いた
出っ歯の矯正で保険が利く場合

出っ歯の矯正で以下のような症状の場合には健康保険を使って治療できます。
- 骨格に原因があり外科手術を伴う
- 前歯3本以上の永久歯が萌出不全で咬み合わせに問題がある
- 厚生労働省が定める疾患

つまり、審美目的ではなく先天性や疾患が原因で外科手術を伴う矯正です。
あー、なるほど〜。
これだけではちょっと分かりにくいので、このあとそれぞれ詳しく説明していきます。
1.骨格に原因があり外科手術を伴う出っ歯

骨格に原因があるのは、主に上顎や下顎が原因で咬み合わせに問題があるケースです。医学的には顎変形症といいますが、上顎が過剰に伸びている場合や、反対に下顎が成長不足で極端に小さい場合をいいます。
上顎が下顎よりも長い場合は、上の歯茎から盛り上がって前歯が出ています。下顎が小さい場合は、口を閉じる時に力が必要になり、無理に閉じようとすると下顎が緊張してシワが寄ってしまいます。また、上下の前歯の間に隙間ができているような出っ歯(開咬)も該当します。
子どもは成長を利用して矯正することができますが、大人の場合は矯正治療だけでは咬み合わせのバランスを整えられないので、外科手術をして改善します。

歯医者さんで手術が必要と言われたら、保険が利く可能性があります。
手術はふつうの街の歯医者さんでもやってもらえるんですか?

外科手術は矯正歯科や口腔外科でしかできません。あとで探し方についても説明しますね。
わぁ、お願いします!
2.前歯3本以上の永久歯が萌出不全で咬み合わせに問題がある

上下を含めた前歯3本以上の永久歯がきちんと生えてこないことが原因で、咬み合わせのバランスに問題がある場合です。
前歯の永久歯が生えてこないこともあるんですか?

歯茎に埋もれた状態のままということがあるんです。そのままにしておくと、両隣の歯が寄ってきて歯並びが悪くなります。
へぇ〜。これは子どもの時に治療するんですよね?

そうですね。歯茎を切って永久歯を出やすくしたり、引っ張り出してあげます。
3.厚生労働省が定める疾患が原因の出っ歯

厚生労働省が定める疾患はとてもたくさんあり、ひとつひとつを詳しく説明することができないので、名称のみご紹介しておきますね。
- 唇顎口蓋裂
- ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。)
- 鎖骨頭蓋骨異形成
- トリーチャ・コリンズ症候群
- ピエール・ロバン症候群
- ダウン症候群
- ラッセル・シルバー症候群
- ターナー症候群
- ベックウィズ・ウイーデマン症候群
- 顔面半側萎縮症
- 先天性ミオパチー
- 筋ジストロフィー
- 脊髄性筋委縮症
- 顔面半側肥大症
- エリス・ヴァンクレベルド症候群
- 軟骨形成不全症
- 外胚葉異形成症
- 神経線維腫症
- 基底細胞母斑症候群
- ヌーナン症候群
- マルファン症候群
- プラダー・ウィリー症候群
- 顔面裂(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む。)
- 大理石骨病
- 色素失調症
- 口腔・顔面・指趾症候群
- メビウス症候群
- 歌舞伎症候群
- クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
- ウイリアムズ症候群
- ビンダー症候群
- スティックラー症候群
- 小舌症
- 頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。)
- 骨形成不全症
- フリーマン・シェルドン症候群
- ルビンスタイン・ティビ症候群
- 染色体欠失症候群
- ラーセン症候群
- 濃化異骨症
- 6歯以上の先天性部分無歯症
- CHARGE症候群
- マーシャル症候群
- 成長ホルモン分泌不全性低身長症
- ポリエックス症候群(XXX症候群、XXXX症候群及びXXXXX症候群を含む。)
- リング18症候群
- リンパ管腫
- 全前脳胞症
- クラインフェルター症候群
- 偽性低アルドステロン症
- ソトス症候群
- グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
- 線維性骨異形成症
- スタージ・ウェーバ症候群
- ケルビズム
- 偽性副甲状腺機能低下症
- Ekman-Westborg-Julin症候群
- 常染色体重複症候群
- その他顎・口腔の先天異常
※「その他顎・口腔の先天異常」とは、顎・口腔の奇形、変形を伴う先天性疾患で、その病気が原因で歯の咬み合わせに問題がある場合に歯科矯正の対象と認められるものです。
へぇ〜、知らない病気がたくさんあります〜。

そうですね。令和2年では59個が指定されているので、歯医者さんをしていても出会わないこともあるような病気もたくさん含まれてますよ。
保険適用の出っ歯は指定医療機関で治療できる

上記で挙げたような外科手術を伴う出っ歯の治療は、指定された医療機関でのみ受けることができます。
どこでもできるってわけじゃないんですね。

外科手術をするには専用の設備とか専門知識が必要になってきます。
あ〜、それはそうですよね。でも、どうやって探せばいいんですか?
最寄りの指定医療機関を探す方法
地域の指定医療機関を探すには、厚生労働省のホームページが便利です。まずは、以下のURLをクリックして「地方厚生局」のサイトを開きます。
その後は、以下の手順に沿って探してみてください。
- 住んでいる地域の局をクリックして開きます。
- 上部にあるサイト内検索で、「施設基準届出受理医療機関名簿 矯診」か「施設基準届出受理医療機関名簿 顎診」と検索します。
- 説明文に「矯診」あるいは「顎診」が含まれているリンクを探します。
- 一覧から最寄りの医療機関を探します。
「矯診」は厚生労働省が定める疾患や、前歯の永久歯萌出不全による咬み合わせで保険が適用される医療機関、「顎診」は顎変形症で保険が適用される医療機関です。
一覧開いたらたっくさんありました〜。

これなら住所を見て近いところを探せますよね。
そうですね〜。便利ですね〜。
保険が利かなくても医療控除でバックできることも

先生、高額医療は医療控除が受けられるんですよね?

そうそう、申請すればかかった費用の一部が後から戻ってきますよ。
1月1日〜12月31日までに高額な医療費がかかった場合は、確定申告で申請すれば、その一部が還付されます。前歯の矯正治療だけでなく、他の医療機関にかかった費用や家族分を合算できるので、上手に利用しましょう。
申請には領収書と診療明細が必要なので、矯正治療の予定がある人は捨てずに保管しておいてくださいね。
出っ歯の矯正と保険の話のまとめ
出っ歯の矯正は治療費が高額になるので、できるだけ費用を抑えたいですよね。部分的な矯正でも10万円以上かかることが多いので、健康保険の対象かどうかを確認したり、医療控除のことを考えて自分や家族の分のお医者さんでもらった領収書と診療明細書をとっておくことをおすすめします。
- 出っ歯の矯正で保険が利くのは、骨格、永久歯萌出不全、国から指定された疾患が原因の場合
- 矯正で外科手術が必要といわれたら、保険が利くかどうか確認すると良い
- 手術を伴う矯正治療は指定医療機関でしか受けられない
- 保険が利かなくても医療控除を受けられる確率が高い