ディスキングで歯の形を整えれば、非抜歯で出っ歯を矯正できるって本当?

「出っ歯を矯正したいけど、できれば抜歯したくない」。果たしてそんな希望は叶うのでしょうか?
矯正に詳しい歯科医に話を聞いたところ、ディスキングという治療法を行えば、抜歯を免れる可能性があるといいます。
ディスキング、もしくはスライス矯正やIPRともいわれる治療法を取り入れることで、なぜ出っ歯の矯正を抜歯せずに行えるのか、また、ディスキングのメリット・デメリットについてもお伝えします。
- 出っ歯の矯正を考えている。抜歯せずに治したいけれど可能?
- 抜歯の代わりに歯を削る矯正法があると聞いたが、本当?
- ディスキング、スライス矯正、IPRについて詳しく知りたい。
- 非抜歯で横顔(Eライン)を美しく整えるのは難しい?
- ディスキング矯正のメリット、デメリットを知りたい。
非抜歯で出っ歯の治療をするのは難しい?

出っ歯を治したいけど、抜歯したくないなぁ…。どうしても抜歯しなくちゃダメかなぁ…。
先生、出っ歯の矯正って、歯を抜かないとできないんですか~?

程度にもよりますが、抜歯が必要になることは確かに多いですね。
そうなんですね~!なぜですか~?

出っ歯は前に歯が突出していますから、歯を大きく後退させるためのスペースが必要になるんです。抜歯して、そのための空間を作るわけです。
あぁ~!そういうことですね~!納得しました~!でも絶対に抜歯しないとダメですか…?できれば抜歯は避けたいなぁ…。
※出っ歯の矯正の方法については、下記の記事も参考になります。
非抜歯でも「ディスキング」で矯正できる


症状にもよりますが、非抜歯でも出っ歯を矯正する方法はありますよ。
えぇ~!あるんですね~!いったいどんな方法ですか~?

ディスキングが、そのひとつですね。
ディスキング…?初めて聞いた!どんな方法…?でも抜歯しなくて済むなら気になる…!
出っ歯の矯正は、抜歯せずに「ディスキング」という方法で行うことがあります。それではディスキングとはどんな矯正法なのか、見ていきましょう。
ディスキングとは?
ディスキングとは、Inter Proximal Reduction、和訳すると「隣接面の削減」という意味です。「IPR」と呼ばれています。スライス矯正やストリッピングいうのも、同じ治療法です。
ディスキングでは、抜歯する代わりに歯の両サイドを削ってスペースを作ります。
歯をキレイに並べるためにはスペースが必要
出っ歯を歯並びのU字型アーチにキレイに並べるためには、歯を動かさなければなりません。そのためはスペースが必要になりますが、必要量は、患者さんの症状によって異なります。
ディスキングで隙間をつくる
一般的に矯正治療を必要とする人の場合、平均4mmほど動かす必要があるといいます。
矯正のために抜歯することが多い小臼歯を抜くと5mm~7mmほどのスペースが確保できますが、1本抜いてしまってできるスペースでは広すぎる場合があります。
抜歯せずにディスキングでスペースを作ると、必要量に応じて削る歯の本数を調整できます。
削るのはエナメル質をほんの少しだけ
健康な歯を削ることに抵抗を感じるかもしれませんが、ディスキングで削るのは、ほんのわずか。
歯のもっとも表面の層であるエナメル質を、0.25mm~0.5mm削るだけです。エナメル質は1.5mmほどの厚みがありますので、ごくわずかの表面を削っても特に問題はありません。
治療時間は1本につき30秒程度
ディスキングは、歯間にデンタルフロスを入れるような要領で行います。
ダイヤモンドストリップというヤスリのような器具を通し、片面に対し8~12回ほど前後に動かすと0.1mmほど削れます。
歯を動かすために必要なスペースを確保するため、数本の歯に対してディスキングを行います。
ディスキングのメリット

歯を抜かなくても出っ歯を矯正できるなんて、ディスキングってメリットっていい方法ですね~!

ディスキングのメリットは、それだけではないですよ。
えっ?そうなんですか~?
抜歯しなくて済む
ディスキングのもっとも大きなメリットは、出っ歯の非抜歯矯正が可能になることですが、メリットはそれだけではありません。
ブラックトライアングルの改善
歯周炎になると歯肉が退縮し、歯と歯茎の隙間にブラックトライアングルという三角形の黒い隙間ができることがありますが、ディスキングで目立たなくすることができます。
まずはディスキングをして歯と歯の間にスペースをつくるのですが、矯正でそこを閉じていきますので最終的には目立たなくなります。
虫歯予防の効果
歯並びが悪い場合、隣同士の歯の接している部分がデコボコに重なり合っていることがあります。
ディスキングではスペースをつくるために歯の両サイドを削るのですが、ある程度なら形を整えることができますので、必要以上に重なり合った歯並びの乱れを軽減できることもあります。
歯と歯の隙間に溜まった汚れから虫歯になることが多いので、重なり合ったデコボコを減らせると、虫歯・歯周病予防に役立ちます。
歯のバランスが整う
顔や歯は、誰しも完全な左右対称ではないものですが、上下の歯の真ん中(正中)がズレていることが見た目でもわかるケースがあります。
そんな時、ディスティングを行うと歯の大きさやバランスが整います。
後戻りしにくい
ディスキングをすると、歯の大きさやバランスが整うため、隣り合った歯との接触が点ではなく面になります。
それによりしっかりと支え合うことができるので、矯正後にも後戻りしにくい環境をつくることができます。
ディスキングのデメリット

虫歯予防や後戻り防止にもなるなんて、ディスキングってメリットが多いですね~!逆にデメリットってあるんですか~?

個人差はありますが、一時的にしみることがありますね。
そうなんですね~。
歯を削るのでしみることがある
エナメル質は痛みを感じないので、ディスティングで痛みが発生することはないのですが、削ったばかりのタイミングではしみることがあります。
しみる場合も基本的には削ったばかりの頃だけですので、しばらくすれば気にならなくなるのが一般的です。
削りすぎると虫歯になりやすい
基本的にはディスティングをすると、歯の重なりが改善されて歯磨きで汚れを落としやすくなるので、虫歯や歯周病予防になります。
ただし、まれにディスティングで歯が弱くなり、虫歯になりやすくなるケースがあります。
横顔(E-ライン)の印象はほぼ変わらない
ディスティングでの治療が向いているのは、前歯だけが飛び出している状態の出っ歯です。
出っ歯の中には、前歯だけでなく、口元が全体的に前へ飛び出した状態になっているケースがあります。そんなケースでは、歯列矯正で抜歯するだけでも足りず、骨の一部を切除する外科手術が必要になることもあります。
また、横顔の美しい基準「E-ライン」は、鼻の頂点と顎を結んだラインより口が後ろにあることです。
このラインを整えるためには、顎の骨を後ろへ引っ込める必要があります。ディスティングだけではスペースが足りないことがありますので、歯科医と相談して治療法を決めましょう。
※出っ歯が歯列矯正だけで治せないケースについては、下記の記事が参考になります。
ディスキングは出っ歯の治療で抜歯を避けられる矯正法!


ディスティングは「歯を削って大丈夫?」と不安に思われがちな治療法ですが、メリットがたくさんあることをお伝えできたのではないかと思います。
そうですね~!抜歯を避けられそうですし、矯正の後戻り防止にもなりそうだから、ぜひやってみたいです~!

ただし、出っ歯の状態によっては対応しない場合もあります。歯科医の説明を聞いて、ディスティングを取り入れるかどうか決めるようにしてくださいね。出っ歯の場合は、
※出っ歯のスライス矯正(ディスキング)については、下記にも詳しい記事があります。
- 抜歯をせずに出っ歯の矯正を行うのは、症状によっては可能。
- 抜歯の代わりに歯の両サイドを削るディスティングを行う。
- ディスティングは、スライス矯正、IPRともいわれている。
- ディスティングで削るのはわずかだけ。痛みや問題は無い。
- ディスティングは非抜歯矯正の他にも多くのメリットがある。
