治療中に副鼻腔炎になった!?インプラントで起こりうる様々なリスク

治療中に副鼻腔炎になった!?インプラントで起こりうる様々なリスク

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柿木辰美先生
柿木 辰美 先生
専門:一般歯科
2013年 明海大学歯学部卒業。卒後は東京都内の歯科医院に常勤歯科医師として勤務。 現在は複数の歯科医院で非常勤歯科医師として、インプラントや歯内療法を軸に一般歯科診療を日々行なっている。

インプラントの治療で副鼻腔炎になるというのは、一体どういうことでしょうか?インプラントは、歯を失ってもほぼ元通りの生活を送ることができるため、近年は特に希望者が増えています。インプラント治療の成功率は90%以上とされていますが、その一方で、治療中や治療後に副鼻腔炎を含めたリスクも問題になっています。今回は副鼻腔炎をはじめ、インプラントで起こりうるリスクやトラブルについて、お伝えします。

インプラントで副鼻腔炎になる理由

副鼻腔とは、鼻の横の左右、上顎の上すぐのところにある空洞のことです。上顎洞とも呼ばれます。副鼻腔炎は、昔は「蓄膿症」という名前で広く知られていました。副鼻腔炎の症状は、強烈な悪臭や頬の痛み、頭痛などです。

副鼻腔と上顎とは、シュナイダー膜という薄い粘膜で仕切られています。インプラントで副鼻腔炎になる理由は、インプラントの手術中に何らかの理由で、シュナイダー膜を損傷してしまうためです。

インプラントで副鼻腔炎になる可能性があるのは、上顎の奥歯にインプラントを埋入する場合です。奥歯は副鼻腔と距離が近いため、インプラント治療のなかでも特に難しいとされています。また、上顎の骨は網目のような構造の軽く柔らかい骨(海綿骨)なので、他の骨よりも吸収が早いことも、トラブルが発生しやすい理由とされています。

インプラントで副鼻腔炎になる3つのケース

インプラントで副鼻腔炎になるのは、次の3つのケースが考えられます。

    • 治療中に副鼻腔炎になる場合
    • 治療後に副鼻腔炎になる場合
    • 治療を機に他の歯が病変し副鼻腔炎になる場合

1. 治療中に副鼻腔炎になる場合

治療中に副鼻腔炎になるのは、造骨手術で粘膜の下に骨を入れる際に、シュナイダー膜が破れて炎症が起きてしまうケースです。

奥歯の顎骨にインプラントを入れる際、骨があまりにも薄いとインプラントをうまく固定することができません。そこで、骨を増やして再生する手術をするのですが、骨を再生するときには自家骨(自分の骨の一部)か人工骨(人工の補填物)を入れます。自家骨や人工骨を入れる時に、シュナイダー膜を誤って傷をつけたり破ったりしてしまうと、細菌感染が起きて炎症が生じてしまうのです。

2. 治療後に副鼻腔炎になる場合

治療後に副鼻腔炎になるケースで考えられるのは、インプラントを入れる際にシュナイダー膜を突き破ってしまった場合です。造骨手術が成功したとしても、インプラント体が上顎洞を突き破っていると、そこから感染してしまいます。インプラント体が上顎洞内に突き抜けた状態を放置すると、感染による症状が起こります。

ですが、通常はシュナイダー膜までの距離を測り、数ミリ前でインプラント体が止まるように計算しています。ですので、突き破ってしまうというのは本当に稀なケースで、考えられるのは残念ながら治療者側の知識不足です。また、専用ドリルで骨に穴をあける際に、シュナイダー膜を傷つけて炎症を引き起こしてしまうというケースも報告されています。

3. 治療を機に他の歯が病変し副鼻腔炎になる場合

3つ目として考えられるのは、インプラント治療がきっかけで、他の既存歯が病変を起こし、副鼻腔に悪影響を及ぼすケースです。

インプラント治療後は、特に口内を清潔に保つことが重要ですが、口内ケアが不十分だと虫歯や歯周病になりやすくなってしまいます。もし、虫歯菌や歯周病菌が何らかの形で上顎洞に入り込んでしまった場合は、細菌感染を引き起こして副鼻腔炎になってしまうことが考えられます。

副鼻腔炎にならないために取られる対策

副鼻腔炎を防ぐためには、無理に長いインプラントを埋入しない、抜歯後に十分に骨が形成されるまで待つ、造骨手術(骨再生)を行うということが前提です。造骨手術には、以下の3つの方法があります。

    • ソケットリフト法
    • サイナスリフト法
    • 傾斜埋入法

ソケットリフト法

シュナイダー膜が下がっている時に、上顎洞の底を部分的に持ち上げてインプラントを埋入しやすくする方法です。上顎洞を上げた空間に、自家骨または人工骨を補填します。残っている骨が、5〜10mm程度ある場合に対応可能な方法です。骨が安定するまでの期間は4〜6ヶ月程度かかり、しっかりと骨が再生してからインプラント埋入となります。

サイナスリフト法

上顎洞の底全体を持ち上げて、自家骨または人工骨を補填し、同時にインプラントを埋入する方法です。残っている骨がごくわずかで、5mm以下の場合に行われます。骨が安定するまでは、約半年間ほどかかります。

傾斜埋入法

その名の通り、インプラントを斜めに傾けて、上顎洞を避けて埋入する方法です。従来は顎骨に対して、インプラントを垂直に埋入する方法が主流でしたが、技術の進化により斜めに埋入できるインプラントが開発されました。ただし、この方法は埋入の角度や位置の計算が複雑なため、高度な技術を要します。また、顎骨全体が薄い場合には対応できません

副鼻腔になってしまった場合の対策

万が一、インプラント治療で副鼻腔になってしまったら、抗生剤を服用するなどをして様子を見ます。また、上顎洞を消毒する治療法もあります。これは通常の副鼻腔炎の処置と同じで、耳鼻科でも行われる治療です。大抵はどちらかの方法で、治癒するケースが多いようです。

その他には、内視鏡下鼻内手術という手術で、上顎洞の自然孔を広げる方法もあります。ただし、インプラントが突き抜けてしまっている場合には、インプラントを埋め直す必要があるでしょう。

その他のインプラントのリスクと対処法

インプラントで考えられる、その他のリスク対処法もご紹介します。

治療中のリスク

    • 神経や血管を傷つける場合がある
    • 細菌感染の恐れがある
    • ドリルによって熱が生じる

神経を傷つける可能性とその対処法

口の中には、多数の神経や血管が通っています。しかも、口内はとても狭い空間です。そのためインプラント手術には慎重に慎重を重ねますが、場合によっては神経や血管を傷つけてしまうリスクがあります。

最近ではより正確に、他の部位を傷つけないようにするため「フラップレス法」という方法を導入している歯科も多いです。フラップレス法は、事前にマウスピースのような手術用ガイドを作って手術をする方法です。ガイドは、決まった位置・角度・深さにしかドリルが進まないようになっています。

【医師監修】フラップレスインプラントのメリットとデメリットとは?

細菌感染の可能性とその対処法

手術中に治療部位に細菌感染をした場合、インプラント周辺の組織炎症を引き起こすことがあります。最近ではインプラントのトラブルが良く取り上げられているのであまりないと思いますが、衛生状態がよくない環境で手術をした場合に、細菌感染する恐れがあります。また、全身疾患などがある場合も、細菌感染のリスクが高いです。

【保存版】インプラントと全身疾患の関係と治療後の全身へのリスク

ドリルの熱とその対処法

インプラントの手術には、骨に穴を開けるため歯科専用の細いドリルが用いられます。ドリルで骨を削る際、回転によって熱が生じるので注水しながら行います。熱が生じるのを防ぐには、ドリルの先端の骨にもっとも近い部分に、確実に注水することが必要です。

些細なことと思うかもしれませんが、水量が少ないと熱によって骨の細胞が死滅してしまいます。骨細胞の死滅は神経麻痺などの後遺症にもつながるため、きちんとした技術と知識を持つ医師を選ぶことが重要です。

治療後のリスク

治療後にもリスクが生じる可能性があります。

    • 痛みや腫れが生じる場合がある
    • 骨が結合しない場合がある
    • インプラント周囲炎になる可能性がある

痛みや腫れが生じる可能性とその対処法

インプラント埋入の手術中は、局所麻酔をするため痛みは感じませんが、骨を削る手術の後なので、どうしても痛みや腫れが出てしまうことがあります。

手術後は、痛み止めの抗生物質などが処方されます。痛みも腫れも自然に引きますが、処方された薬がなくなってもまだ引かない場合には、何かトラブルが起きている可能性もあります。できるだけ早く医師に相談しましょう。

骨が結合しない可能性とその対処法

骨が結合しない理由は様々です。個人の骨の状態なども関係しますし、固定する前に細菌感染してしまうケース、固定期間中に大きな負荷がかかってしまうケースなどもあります。

対処法としては、インプラントが固定されるまでは、なるべく力をかけないことです。硬いものを噛まない、歯ぎしりや食いしばりなどをしないよう心がけましょう。

インプラント周囲炎になる可能性とその対処法

インプラント周囲炎は、インプラントの歯周病と考えるとイメージが湧きやすいと思います。インプラント周辺の組織は、天然の歯に比べると炎症が起こりやすく、しかも一度かかると治りにくい上に症状が進むスピードが早いので、非常に厄介です。インプラント周囲炎になると、歯周病のような痛みや腫れといった症状が出て、最悪の場合には骨が吸収されてインプラント体が露出したり抜け落ちてしまったりします。

インプラント周囲炎を防ぐには、毎日の歯磨きが重要です。それと同時に、定期メンテナンスは必要不可欠です。歯間ブラシなどを併用したセルフケアと、定期メンテナンスによる専門的なクリーニングで、インプラント周囲炎を予防しましょう。

インプラントで起こりうるリスクのまとめ

インプラントが原因で副鼻腔炎になるのは、治療中の医療ミス細菌感染、治療後の歯周病などからの感染によるものと考えられます。また、その他のインプラントで考えられるリスクは、以下のものとなります。

治療中
    • 神経や血管を傷つける場合がある
    • 細菌感染の恐れがある
    • ドリルによって熱が生じる
治療後
    • 痛みや腫れが生じる場合がある
    • 骨が結合しない場合がある
    • インプラント周囲炎になる可能性がある

インプラントのリスクを少しでも軽減するには、技術や知識をしっかりと持つ医師を選ぶこと、治療後のケアをしっかりと行って、細菌の侵入を許さないことです。