命を落とすかもしれない?歯周病を予防!全身疾患との怖い関係

歯周病が、怖ろしい全身疾患につながることをご存知でしょうか?
歯周病は細菌による感染症です。歯周病が悪化して細菌が口内にうようよといる状態になると、細菌が血管や気管に入り込むリスクが高まります。
そうなると、やがて歯周病菌が全身を巡り、心臓や脳や子宮などに影響し、時には命を脅かすほどの重い病気を引き起こすことにもなりかねません。
この記事では、歯周病を起因として命を落とすことになるかもしれない、怖ろしい全身疾患について解説します。
- 歯周病は、しょせん口の中だけの病気に過ぎないと軽く見ている。
- 歯周病をきっかけに、肺炎や心臓病で亡くなる人がいるって本当?
- 妊娠すると歯周病にかかりやすくなる。放置すると早産リスクも。
- 歯周病にかかると、関節炎やリウマチにもかかりやすいのは本当?
- 歯周病から怖ろしい病気につながらないよう、予防の方法を知りたい。
歯周病は感染症。細菌が全身を巡ると、どうなる?

毎年、歯周病を起因とする肺炎によって、たくさんの命が失われています。
肺炎のほかにも、狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、関節炎・リウマチ、骨粗鬆症、妊娠性高血圧、早産・低体重児出産といった、命を脅かしかねない重篤な疾患のリスクが高まります。
それぞれの発症リスクについて、みていきましょう。
歯周病菌が「肺」へ入ると…?

歯周病菌が肺に入り込むなんてことが、あるんですなー。

食べもののカケラや唾が、誤って気管に入ってしまうことはありませんか?誤嚥(ごえん)というのですが。
あー、時々むせて気管に吸い込んでしまうことがありますなー。
高齢の方など、飲み込む力が弱くなっていると誤嚥(ごえん)が起こりやすくなります。歯周病菌が口から呼吸器を介して肺に入り込むと、肺炎、ぜんそく、咽頭炎といった疾患のリスクが高まります。
歯周病菌が「血管」から全身へ送られると…?

歯周病菌が血管に入ってしまうこともあるんですな。

そうですね。特に歯ぐきから出血していなくても、何らかのタイミングで血管に細菌が侵入することがあります。
うーん、そんなことが!?怖ろしい話ですな!
歯周病菌が血液に入って全身を巡ると、さらに怖ろしい疾患へとつながります。
プラークを作って血管を詰まらせ、動脈硬化を起こすことがあるのです。心臓発作、心内膜炎、脳梗塞といった重篤な疾患を発症することも少なくありません。
心臓発作に関しては、起こすリスクが3倍近くまで高まるといわれています。
妊娠している女性が歯周病にかかると…?

えー、妊婦さんにも何かリスクが…?おなかに子どもがいるのに?

妊婦さんは歯周病にかかりやすく、悪化もしやすいので注意が必要なんですよ。
なんと…!危険が大きいですな…!
妊娠中はホルモンバランスが大きく変化するため、歯周病が発症・悪化しやすくなります。
歯周病菌が全身を巡ると、妊娠性高血圧、早産、低体重児出産のリスクが高まります。
陣痛を促進し、早産のリスクや低体重で出産に至ったりするリスクが7倍以上に膨れ上がるといわれています。
歯周病と関係が深い全身疾患について

- 誤嚥性肺炎
- 狭心症・心筋梗塞
- 脳梗塞
- 関節炎・リウマチ
- 骨粗鬆症
- 妊娠性高血圧
- 早産・低体重児出産

いかがですか?歯周病がさまざまな全身疾患へのリスクを伴うことを知っていただけましたか?
うーん、歯周病がそんな重大な病気のきっかけになるかもしれないとは、正直なところ考えたこともなかったですな。

それでは、歯周病に端を発する全身疾患がどのような病気であるのか、見ていきましょう。
誤嚥性肺炎
飲み込む機能を嚥下(えんげ)といいます。本来、食道へ入るはずの食べ物や唾液が、誤って気管に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」といいます。
「誤嚥性肺炎」は、その時、一緒に歯周病菌が肺に入り込んでしまうことから発症します。
狭心症・心筋梗塞
「心疾患」は、日本人の死因2位とあって、命を落とす人が多い疾患です(厚生労働省:人口動態統計2018参考)。歯周病を患っていると、狭心症・心筋梗塞を引き起こす確率が高くなります。
歯周病菌が狭心症・心筋梗塞を引き起こす原因として、さまざまな説があります。そのひとつが、血管壁から血液中に入り込むことができる歯周病菌「ジンジバリス菌」の影響です。
歯周病菌が作り出すさまざまな危険因子から身体を守るため、血液内にも炎症物質が作り出されるのですが、それが血栓となって血管を詰まらせて心筋梗塞を引き起こすとも考えられています。
脳梗塞
脳梗塞は、糖尿病などの生活習慣病によって発症するリスクが高まります。
糖尿病の患者さんは歯周病にもかかっている率が高いのですが、脳梗塞を発症しやすい状態にあるといえます。
歯周病を治療していると糖尿病が改善することもわかっています。必然的に脳梗塞のリスクも下がります。
全身疾患を予防する意味でも、普段から歯周病の予防に力を入れましょう。
関節炎・リウマチ

歯周病菌のポリフィロモナス菌が、リウマチ発症のきっかけとなる免疫異常に関係しているという研究が進んでいます。実際に、関節炎やリウマチを患っている人の多くが、同時に歯周病も発症しているという調査報告があります。
さらに、歯周病の予防のために、口内に存在する細菌のコントロールを行っている人といない人では、関節炎やリウマチの発症リスクに差がでてくることもわかっています。
関節炎・リウマチを患うと運動機能にも影響が出て、歯ブラシやデンタルフロスを使ったセルフケアが満足にできなくなることがあります。お口の中にの菌の繁殖を止められなくなり、ますます全身疾患が悪化するリスクが高まります。
骨粗鬆症

骨粗しょう症になると、骨の量が少なくなって、骨がもろくなり、骨折しやすくなります。
骨は、骨代謝を繰り返して強さを維持しているのですが、骨粗しょう症になると代謝のバランスが崩れ、骨が弱くなってしまうのです。
骨代謝には女性ホルモンのエストロゲンが欠かせません。そのため、閉経によって分泌量が急激に減る60代以上の女性に、骨粗しょう症の発症が多くみられます。
また、女性ホルモンが減少すると、歯周組織に炎症が起こりやすくなり、歯周病の進行スピードが増します。歯周病の予防や改善のための治療を行い、歯周組織の炎症を抑えると、骨粗しょう症を改善できることもわかっています。
妊娠性高血圧
妊婦さんは、とても歯周病にかかりやすい状態です。妊娠性高血圧を発症するリスクも高まります。妊娠性高血圧は、歯周組織でつくられた炎症物質を起因とするため、通常時より発症のリスクが2.4倍も高まるといわれています。
早産・低体重児出産

歯周病を発症した妊婦さんは、妊娠22週~36周までに赤ちゃんを出産する早産や、2500g未満の赤ちゃんを出産する低体重児出産のリスクが高まります。
原因は、歯周病菌によって歯周組織に作り出される炎症物質です。これが血管に入り込んで体内を巡り、やがて子宮に影響を及ぼし、早産などの異常事態につながるのです。
口腔ケア・歯周病の予防で症状は改善する?

ほーう、どうやら命を落とす原因になっている重い病気は、実は歯周病がきっかけであることも少なくないようですな。

そうなんです。それぞれの病気に深い関係があることも多いので、歯周病の治療をしたら、ほかの病気も改善したということもありますからね。
ほほーう、それは見逃せませんなー。

でしょう。お口の健康は全身の健康の要というのは一理あることなんですよ。
正しい歯磨きの方法がわからないまま、毎日、なんとなく歯を磨いているせいで磨き残しが溜まり、それが歯垢になって歯周病菌を繁殖させてしまうケースは少なくありません。
適切なセルフケアを行えば、歯周組織の炎症を鎮めて症状を改善することができます。
介護を必要とする高齢者や闘病中でなどで口内のセルフケアが難しい方は、訪問歯科を利用してプロによる口腔ケアを受ける方法もあります。
口腔ケアでお口のリハビリテーションもできますので、嚥下機能が回復したケースや、口臭が改善してお世話をする方の負担が少なくなったというケースもみられます。
毎日の歯磨き+歯科医院でのプロケアを併用


歯周病は、毎日の歯磨きを励行すれば症状を改善できる病気です。
食事と寝る前の歯磨き、そして1日1回以上は歯ブラシ+デンタルフロスなどの歯間清掃器具を使った念入りな歯磨きを継続していくだけでも効果があります。
ほほーう、それで重い病気が予防できるなら、取り組むべきですなー。

歯ブラシでは届かない部分に溜まった歯垢の清掃などは、歯科医院でプロのメンテナンスにおまかせしましょう。
定期検診では自分のお口の状態がわかりますし、担当の歯科衛生士がついてくれることもありますので、一人でケアを続けるよりも歯周病の治療や予防に対するモチベーションが上がりますよ。
ほほーう、それはやる気がでそうですなー。
- 歯周病は感染症。起因として重い病気につながるリスクがある。
- 歯周病を起因に、肺炎や心臓病、脳梗塞で亡くなる人がいる。
- 妊婦さんは歯周病にかかりやすい。早産リスクが高まるので要注意。
- 正しい歯磨きのやり方を知って徹底すれば、歯周病を予防できる。
- 歯科の定期検診&プロケア推奨。正しい歯磨きの方法も教えてもらえる。