妊婦さんは歯周病になりやすい!早産リスクは約7倍!?5つの簡単予防法

妊娠すると、ふだんは歯が丈夫な人でも歯周病になることがあります。
妊娠中は体調が不安定で、お口のケアにまで手がまわらなくなりがちな時なので困ってしまいますよね。
ですが、歯周病が悪化すると早産のリスクが7倍にも跳ね上がるなど、おなかの赤ちゃんにも悪い影響を及ぼします。
放置していては危ない、でもケアするのが難しい、妊婦さんにとって代表的な悩みのタネでもある歯周病について、そのリスクの原因と予防方法を紹介します。
- 妊娠すると歯が悪くなりやすいと聞いた。なぜなのか、その理由を知りたい。
- 妊娠すると歯周病になりやすいというが、胎児への影響について知りたい。
- 妊娠中は体調が不安定でオーラルケアが難しい。いい方法があれば知りたい。
- 妊娠中に定期検診やクリーニングのために歯医者さんに行ってもいいのか知りたい。
妊娠すると歯周病になりやすい!その理由とは?

先生、妊娠したら歯が悪くなりやすいって、本当ですか?妻が妊娠中なので、勉強しにきました!

その通りです。妊婦さんは歯周病になりやすいといえますね。お子さんがいると心配という方は多いようですが、歯科医院にはむしろ行くことをおすすめします。
歯医者さんに行った方がいいんですね!赤ちゃんに害はないのでしょうか?

問題ありません。それよりもお口の環境が悪いまま放置していると、赤ちゃんにもよくない影響がでますからね。できるだけ早く歯科検診に行ってくださいね。
妻に伝えておきます!

それでは、なぜ妊婦さんが歯周病になりやすいのか、その理由を見ていきましょう。
女性ホルモンが急激に変化するから

妊娠すると、女性の身体は赤ちゃんを健やかに育む準備を始めるため、女性ホルモンが大きく変化します。特に妊娠初期から中期にかけては、女性ホルモンの分泌量が急増します。
実は、その女性ホルモンを好む歯周病菌がいるのです。プレボテラ・インテルメディアという歯周病菌で、妊娠3カ月頃になると、通常の約5倍くらいまで増加します。
歯周病菌が増えやすいお口の環境になるから

女性ホルモンは、歯ぐきからじわじわと分泌されます。歯周病菌にとって、妊婦さんのお口の中は非常に居心地の良い環境なのです。
女性ホルモンのエストロゲンは、歯周病菌の栄養源になるので増殖を促してしまいます。炎症物質を刺激する作用がある女性ホルモンプロゲステロンは、月経時の10倍以上にもなることから、ちょっとした磨き残しからも歯ぐきの炎症を起こしやすくなります。
細菌は、乾燥した場所で活発化します。妊娠すると、唾液の分泌量が減りますので、歯周病菌が進行しやすくなる一因となっています。
オーラルケアが不足するから

妊娠中は体調がすぐれず、歯磨きがうまくできない時があります。そうなると、歯周病があっという間に進行してしまいます。歯周病菌は就寝中に活発になりますので、特に夜寝る前に歯磨きをしないままでいると、朝起きたら歯ぐきに炎症が起きていたということになりかねません。
できるだけ体調のよい時に歯磨きを心がけ、それでも歯ブラシを口に入れられないという時は、無香料のデンタルリンスや水うがいでお口のケアをしましょう。
赤ちゃんが危ない!歯周病の怖ろしい影響とは?

歯周病は口の中のことだから、赤ちゃんには直接関係ないのかなぁ…?

歯周病が進行すると、おなかの赤ちゃんにも影響を及ぼすことがあるんですよ。気を付けてくださいね。
赤ちゃんにも影響するんですね!どんな危険があるのでしょう?

歯周病が悪化すると、細菌が血管に入り込み、命にかかわる全身疾患につながることがあります。妊婦さんの場合は、早産・低体重児出産のリスクが高まるんですよ。
えーっ!怖い!先生、妻を守るため、予防する方法を教えてください…!
妊婦さんが歯周病にかかっていると、早産・低体重児出産に至る可能性が高くなるという数多くの研究結果が報告されています。
1996年のアメリカの研究では、そのリスクは、歯周病にかかっていない妊婦さんの7倍になると発表されています。この数字は、高齢出産や喫煙・飲酒が母体に及ぼすリスクよりも高い数字ですから、その危険性がわかります。
体調が不安定な時期ですが、妊婦さんは、おなかの赤ちゃんのためにも、歯磨きやお口のケアを、いつも以上に念入りに行う必要があるのです。
歯周病は、唾液を介して感染することもわかっています。赤ちゃんは無菌で産まれてきますが、一緒に生活する家族から歯周病菌やむし歯菌がうつります。同じ食器やタオルを使う、お顔にキスをする、時にはフーフーと冷ましてたべさせることでもうつる場合があります。
赤ちゃんを無菌で育てるのは無理とはいえ、2歳を過ぎる頃まで感染しなければ、将来むし歯や歯周病になりにくいお口の環境になるとされています。
対策としては、赤ちゃんが生まれてくる前に家族がオーラルケアをしっかり行って細菌を減らしておく「予防」が大切です。家族全員で歯科医院へ通って、歯のクリーニングを受けるようにしましょう。
妊婦さんはオーラルケアが大事!5つの歯周病予防法

妊娠したら、歯周病になりやすいんですね。妻にもしっかり予防してもらわないと…!でも何に気をつけたらいいんですか?先生?

何も特別なことは必要ないんですよ。いつもと同じケアをきちんと行ってください。ただ、妊娠中はお口のケアがしづらくなると思いますのでケア不足にならないように注意してくださいね。
いつもと同じケアをきちんと…ですね!つわりがひどい場合は、どうしたら良いでしょう?

体調のよいタイミングに、こまめに歯磨きを行うといいですよ。一度にしっかり磨くのが無理なら、何回もうがいをするとか、そういった配慮をするだけでも効果がありますよ。キシリトール100%のガムを嚙むのもおすすめです。
なるほど、勉強になりました!
普段以上にお口のケアを心がける

妊娠中は、ホルモンバランスが大きく変化し、体温が上がりやすいため唾液の分泌量が減り、歯周病菌が増えやすい状態です。
本来なら、いつも以上にお口の中を清潔に保たなければいけないわけですが、この時期は体調が不安定で歯磨きがしにくいことでしょう。
女性ホルモンには疲労感を誘発する作用もあるため、妊婦さんには特有のだるさがあり、歯磨きが後回しになってしまいがちです。
大変なときですが、おなかの赤ちゃんのためにも、いつも以上に念入りにお口のケアをするように心掛けましょう。
洗面所に椅子を置いておいて、座った姿勢で歯磨きをするなど工夫をしてみてください。
食後・寝る前にしっかりと歯を磨く

歯磨きの効果が高いタイミングは、食後すぐと夜寝る前です。大変なときですから、効果的に歯磨きを行いたいですね。食事をした後は、少なくても30分以内に歯を磨くことをおすすめします。
また、夜は唾液の分泌量が減ります。唾液は、細菌を洗い流す作用があるのですが、その唾液パワーが発揮されにくい就寝中に歯周病が進行しやすいのです。
夜寝る前は、しっかりと歯磨きを行うのがおすすめです。
特に、歯と歯のすき間、歯と歯ぐきの境い目などに溜まった歯垢を落としきれるように、デンタルフロスなど歯間ケアできるアイテムをプラスすると、歯磨きの効果アップを図れます。
水分を摂ってお口を乾燥させない

妊娠すると、唾液の分泌量が減るため、お口の中が乾燥しやすくなります。乾燥すると感染症にかかりやすくなりますが、歯周病も同じです。乾燥した環境で活発化するため、できるだけお口の中は乾燥させないように気を付けましょう。
唾液のパワーは、お口の中の細菌を洗い流します。減少した唾液の代わりに水分をしっかり摂って、お口の中を潤すようにしてください。
ただし、糖分が入っている飲み物は、むし歯菌を増殖させる原因になります。水、お茶をこまめに飲むようにしてください。食事の後に飲むのもおすすめです。
ダラダラ飲み食いをやめる

歯周病の大敵は、ダラダラと飲み食いを続けること。ダラダラ食べのリスクは、妊婦さんだけに限りません。
ただ、妊娠すると、ふだんはお菓子をあまり食べない方でも甘いものや酸っぱいものが欲しくなることがあります。糖がお口の中にあると、むし歯菌や歯周病菌が大喜び。快適な環境でどんどん増殖し、お口の環境を悪化させます。
また酸っぱいものは、歯を溶かす原因になるので、甘いものと同じように気を付けなければいけません。
甘いもの・酸っぱいものを食べること自体がトラブルを招くわけではありませんので、食べ終わったら歯磨きやブクブクうがいをするようにしてください。
歯医者さんでプロケア&歯周病予防

歯磨きをどんなにしっかりできたとしても、磨き残しがゼロになることはありません。とても上手に磨ける人でも、全体の20%ほどは磨き残しがあるのです。
お口の中には、歯と歯ぐきの間の歯周ポケットの奥底など、歯ブラシが届かない場所があります。そんなところに気づかないうちに蓄積汚れが溜まり、そこから歯周病になることがあります。
ふだんなら問題のないちょっとした磨き残しでも、妊婦さんは炎症が起きやすいため、あっという間に妊娠性歯肉炎といわれる状態まで悪化することがあります。
妊婦さんこそ、歯科医院での検診やプロによるクリーニングをうけることが大切なのです。
毎日のセルフケアが基本であることは変わりありませんが、歯科医院でのプロケアも併用しながら、お口の健康を守りましょう。
妊婦さんは歯周病を予防して母子ともに健康に!

今日学んだことで、夫婦共々がんばれそう!歯医者さんでプロケアも受けられるしね。

妊婦歯科検診は大切ですよ。妊娠期間中に歯科検診を何度か無料で受けられる制度を設けている市町村が多いので、確認してみてくださいね。
- 妊娠中は、歯周病になりやすいお口の環境になるが、オーラルケア不足になりがち。
- 歯周病が悪化すると、早産や低体重出産のリスクが7倍高まるという研究報告がある。
- 歯周病予防のコツは、食後・就寝前の歯磨き、ダラダラ飲み食いをやめる、歯科定期検診。