【歯科医が教える】誤嚥性肺炎とは?なりやすい人や原因・症状・予防法

誤嚥性肺炎は、高齢者がなりやすい病気としてよく耳にしますね。しかし、どんな病気なのか、何が原因でなってしまうのかはよく分からないという人も多いでしょう。
ここでは誤嚥性肺炎について、詳しくご紹介します。日頃からの様子で発見できることもあるので、周りに高齢者がいる人はぜひチェックしてみてください。
- 誤嚥性肺炎ってどんな病気?
- どんな人が誤嚥性肺炎になりやすいの?
- 誤嚥性肺炎の原因は?
- 誤嚥性肺炎は予防することができる?
1.誤嚥性肺炎はこんな病気

誤嚥性肺炎とは、誤って気管に入った異物が原因で、肺に炎症が起きることです。異物の多くは食べ物や飲み物、唾液などで、通常はむせることで排出できます。しかし、排出する力が弱いと異物が肺の中に留まって、炎症が起きてしまうのです。
1-1.誤嚥性肺炎の死亡率は年々増加している
誤嚥性肺炎による死亡率は、1979年では男性264人、女性159人だったのに対し、2016年には男性21,730人、女性16,920人と大幅に増加しています。

また、世界の国と比べてみても、日本は誤嚥性肺炎の死亡率がとても高く、死亡原因の上位にあります。

誤嚥性肺炎での死亡率が高いのは、体力や免疫力が低下した高齢者の人口が多いこと、欧米と違い食事を長時間楽しむ文化がないことなどが原因と考えられます。

誤嚥性肺炎は高齢者がなりやすいので、老人性肺炎とも呼ばれています。
こんなに死亡率が高いなんて知りませんでした!
グラフの出典元:東京都健康安全研究センター「人口動態統計から見た日本における肺炎による死亡について
1-2.誤嚥性肺炎のメカニズム

誤嚥性肺炎のメカニズムは、以下のようになります。
- 食べ物や飲み物が誤って気管に入る
- 飲食物と一緒に細菌が気管に入る
- 肺が異物を排除しようと炎症を引き起こす(肺炎)
そうか、肺炎って、肺の中で免疫力が戦って炎症を起こしているんですね!

そのとおり。ただ、高齢者は体力がないので急激に悪化したり治療が難しくなります。
1-3.誤嚥性肺炎になりやすいのはこんな人

誤嚥性肺炎になりやすいのは、以下のような人です。
- 高齢者
- 病気などで免疫力が下がっている人
- 病気のためチューブで栄養を摂取している人
- 食べ物をあまり噛まないで飲み込む人
- 食べている時にむせやすい人
- 口内の清潔が保たれていない人
高齢者以外でもなるんですか?

病気などで免疫力が下がっていたり、病気や怪我でチューブから栄養を摂取している人はなりやすいですね。
2.誤嚥性肺炎の主な症状

誤嚥性肺炎の症状は多岐にわたります。睡眠中でも唾液が原因で起こることがあるので、同居している家族は注意が必要です。
- 激しい咳が出る
- 濃い痰が出る
- 発熱する
- 呼吸が苦しい
- 呼吸すると肺から音がする
- 飲み込む前や後にむせる・咳き込む
- 食べ物をなかなか飲み込めない
- なんとなく元気がない
- ボーッとしている
- 食事に時間がかかる
- 夜間に咳き込む
後半5つは誤嚥性肺炎の症状とは気づきにくいですねー。

そうなんです。ですので、周囲の人がよく観察することが大切です。
不顕性誤嚥とは、誤嚥性肺炎の一般的な症状が表れない誤嚥のことです。病気が原因で神経が麻痺していたり、筋力の衰えなどで嚥下機能が低下していたりすると、むせないのに誤嚥していて本人や周囲が気づかないことがあります。
3.誤嚥性肺炎の原因
誤嚥性肺炎は、以下のようなことが複合的に起こって原因となります。
3-1.口周りの筋肉の衰え

身体の筋肉と同じで、口周りの筋肉も加齢に伴って衰えていきます(唇、頬、舌、喉の筋肉)。これにより咀嚼力や嚥下力が低下して、誤嚥性肺炎の原因となります。
飲み込むって、色んな所の筋肉を使うんですね!

よく気が付きましたね。そう、口の中だけの問題じゃないんです。
3-2.唾液量の減少

唾液の分泌量は、加齢に伴い減っていきます。唾液には食べ物を柔らかくして飲み込みやすくする働きがありますが、分泌量が減ると飲み込むのが困難になってしまうのです。
また、唾液の量が減ると口内細菌が増えて、誤嚥した時に肺炎になりやすくなります。
何かで、唾液がなくなった時が命が終わる時って読んだことがあります!

それはあながち間違いじゃありませんよ。唾液には生命維持に必要なものがたくさん含まれているんです。
3-3.抜けている歯がある、入れ歯が合っていない

抜けている歯や合っていない入れ歯があると、よく噛んで食べることができません。食べ物が大きいままだとうまく飲み込めず、無理に飲み込んで気管に入ってしまうことがあります。
噛むことって、やっぱり大事ですね!

そうですね。合ってない入れ歯は痛みや違和感もあると思いますよ。できれば早く治してほしいです。
3-4. 口内の衛生状態がよくない

病気や寝たきりの人は、歯磨きがつい疎かになり口内の衛生状態が良くない場合があります。また、身体の栄養状態も低下するので免疫力が落ち、なおのこと口内細菌が増えてしまいます。
誤嚥性肺炎は、口の中の細菌が肺に入って炎症を引き起こすものです。

嘔吐物と一緒に唾液を飲み込んでしまう事故もよくあります。
うーん、いろんなことに注意が必要なんですね…。
4.誤嚥性肺炎を予防する5つの方法
誤嚥性肺炎は、誤って飲み込まないように食事は一旦やめて、薬の投与で治療をします。しかし、治療中は体力や栄養状態が一時的に落ちるので、できれば治療に至る前に気をつけたいものです。そこで、誤嚥性肺炎を予防する方法をご紹介します。
4-1.肩、顔、首、口周りの緊張をほぐす

口周りの筋肉が固くなっている人は、肩や首なども固まっていることが多いです。肩、顔、首、頬、唇などをマッサージやストレッチすることで、日頃から柔らかくしておきましょう。

マッサージやストレッチはテレビを見ながらでもできるので、毎日続けることが大切ですよ。
分かりましたー!
4-2.よく噛んでゆっくり食べる

食べるのが早い人や、あまり噛まずに飲み込むくせがある人は、よく噛んでゆっくり食べるように意識しましょう。
急いで飲み込まないってことですね。

はい。よく噛むと食べ物が小さくすり潰されて、飲み込みやすくなりますよ。
4-3.口の中がなくなってから次の食べ物へ

次から次へと食べ物を口に運ぶと、噛む時間が短くなってしまいます。食事の際には口に入れたものをよく噛んで飲み込んでから、次の食べ物を口に運ぶようにしましょう。

現役時代に忙しかった人は、この癖がなかなか抜けないことが多いんですよね。
あー、なんか目に浮かびます。お昼は立ち食いそば屋でササッと済ますとか。
4-4.ながら食べをしない

新聞を読んだりテレビを見たりしながら食事をすると、食事に集中することができません。食事に集中しないと噛む回数が少なくなって誤嚥する可能性もあります。食事はしっかりと食べ物に向き合って、味わって食べる習慣をつけるのがおすすめです。
これもまたありがちな…。

特に男性や一人暮らしの人に多いですけど、食事をゆっくりと味わうのも楽しいですよ。
ですよね!
4-5.歌を歌う

意外かもしれませんが、歌を歌うのは誤嚥性肺炎の予防に効果があります。歌は歌うだけで口周りの筋肉が鍛えられ、唾液の分泌を促すからです。
カラオケが趣味の人なんかはいいですね!

家にいる時だって、歌を口ずさむだけで気分もよくなって一石二鳥ですよ。
誤嚥性肺炎を予防して健康な人生を送ろう
誤嚥性肺炎は、死亡にもつながる怖い病気です。ちょっとした意識の使い方で予防できますので、今回ご紹介した内容を参考に、ぜひ今日から実行してみてください。どれも簡単なことですが、続けやすいことから始めるのがコツです。
- 誤嚥性肺炎とは、誤って気管に入った異物が原因で炎症が起きること
- 日本は誤嚥性肺炎の死亡率がトップクラス
- 飲食物や唾液と一緒に細菌が気管に入って肺炎になってしまう
- なんとなく元気がない、ボーッとしているなど結びつかないような症状も誤嚥性肺炎の可能性がある
- 原因は口周りの筋肉の衰え、唾液量の減少、口内の不衛生など
- 日頃から顔周辺のマッサージやトレーニングをして柔らかくしておくことが予防につながる