顎関節症からくる身体の不調とは?不眠、肩こり、しびれ、うつ症状も

「顎関節症になってから偏頭痛が頻繁に起こる気がする」
「顎から音がするようになってから眠れない」
それは決して気のせいではありません。顎顎関節症は一見関係ないような離れた場所にも影響を及ぼすのです。
ここでは、顎関節症からくる身体の不調について、詳しくご紹介します。「もしかして、これも顎関節症が原因?」と思うような不調が続く人は、ぜひ読んでみてくださいね。
- 不眠が続くけどもしかして顎関節症が原因?
- 顎関節症になってから右または左半身のしびれや痛みがある
- 偏頭痛や歯、目の痛みがいつも同じ側にある
- 顎関節症になったが、ひどくなるとどんな症状が出るのか知りたい
1. 顎関節症からくる身体の不調の具体例

顎関節症で起こる不調は多岐にわたります。なぜ、顎と関係のない全身の場所にトラブルが起こるのか不思議ですね。
顎関節は、頭と身体をつなぐ身体の要です。上顎は頭部につながり脳にも近く、下顎は背骨や頚椎へと続いています。そのため、顎関節にトラブルが起こると、全身に様々な症状が引き起こされるのです。
顎関節症は一つの病気ではなく症候群で、顎周辺からくる様々な症状の総称です。日本顎関節学会では、顎関節症の原因や症状を、以下のように分類しています。
- 咀嚼筋痛障害・・・顎を動かす筋肉
- 顎関節痛障害・・・顎の関節
- 顎関節円板障害・・・顎の関節にある関節円板
- 変形性顎関節症・・・顎関節を構成する骨の変形
分類する理由は、最初に検査して症状を識別する必要があるからです。顎関節症と一口に言っても、症状の原因は筋肉や関節、骨など様々。それを踏まえて、顎関節症で起こりうる色々な症状をご紹介していきます。
1-1. 顎や歯の痛み

顎や歯の痛みは、顎を動かす時の筋肉の痛みからのもので、いわば、あご周辺の筋肉痛と言えます。歯の痛みに関しては、関連痛といって直接トラブルがない場所も連動して痛みが生じるものです。
顎も筋肉痛になるんですね!

連日の疲労が溜まっている時やストレスが多い時などに出やすいですよ。
1-2. 偏頭痛、目痛、めまい

顎関節は耳のすぐ前にありますね。左右の顎関節のバランスが少しでも崩れていると、動きがなめらかでなくなり、頭痛やめまい、眼痛などを引き起こします。

顎関節は脳に近いので、脳神経や眼圧にも影響を及ぼします。三半規管に関係があるという報告もありますよ。
それでめまいも起こるんですね!
1-3. 肩、首、背中のこり

顎関節のバランスが崩れると背骨に歪みが生じます。肩や首の筋肉は、崩れたバランスを調整しようとして通常ではない力の入れ方や動き方をしてしまうため、筋肉が疲労してしまうのです。
姿勢が悪いと変なとこが凝ったりしますよね!

そうそう。左右の顎関節を接点にして線を引いて、どちらかが傾いていると背骨も歪んでいる可能性が高いですよ。
1-4. 腕や手指のしびれ

下顎の下にある頚椎や首から鎖骨の上につながる神経が圧迫されると、腕や手指のしびれの症状となって出てきます。
顎の関節って、本当に色んな所とつながってるんですね!

筋肉だけでなく、神経や皮膚、筋膜などでつながっているので、症状も幅広いんです。
1-5. 不眠

顎周辺の筋肉が緊張していると、自律神経が乱れて不眠症になることがあります。自律神経の出入り口は、首と肩のちょうど接点、鎖骨の上あたりにあるからです。
顎の動きは脳に刺激を伝達しているため、顎のバランスが崩れた状態を放置していると、だんだん脳に緊張が生まれて眠れなくなるのも原因と考えられます。
顎関節症って自律神経にも影響するんですね!

そうですね。関係ないように見えて、脳や首肩の緊張も関係があるんですよね。
1-6. 右あるいは左半身の異常

目、耳、鼻、歯、舌、肩、首、腕、足の痛み、違和感、硬直など、右側あるいは左側だけ異常が出るのも、顎関節で全身の歪みが生じたことが原因と考えられます。
こんなことになるなんて大変じゃないですか!

そうなんです。顎関節症は命には関わらないけど、生活に支障が出るような症状になることがあるんです。
これはまずいですよ…。
1-7. 併発する病気からくる不調

歯の治療をした後に顎関節症になったと考える人もいますが、ほとんどの場合は併発したタイミングがたまたま重なり、因果関係に結びつけられるようです。併発する恐れのあるものは、以下のような病気です。
- 虫歯や歯周病
- 線維筋痛症
- 関節リウマチ
- 膠原病
- 顎関節の慢性疼痛
- うつ病
これらの病気を併発した場合は、歯科とそれぞれの科が連携して治療を行っていきます。
併発すると大変ですね。

治療も長期に渡るので、顎関節症はできれば早期に治療したほうがいいんです。
2. 顎関節症の治療法
顎関節症からくる不調の治療は、背骨の歪みを矯正したりホットパックで痛みのある部分を温めて自律神経を緩めたりすることで緩和します。
ただ、根本の原因である顎関節症を治さないことには、また再発してしまいますね。そのため、顎関節症からくる不調は、顎だけ、背中だけなど部分的に見るのではなく、顎関節と症状のある部分を総合的に治療していくことが必要です。
2-1. 日常的な生活の見直し

日常的に自分でできることは、生活習慣の見直しです。以下のことを改善すると姿勢が良くなり、顎関節の改善に向かわせます。
- 硬いものを長時間噛まない
- 同じ方でばかり噛む癖をやめる
- 頬杖をつくのをやめる
- 猫背をやめる
- 噛み締めや食いしばりをやめる
- 足を組んで座らない
- 同じ側の肩にバッグをかけない
- 長時間同じ姿勢でいるのをやめる
- 長時間スマホをいじらない
- ストレスを解消する

ただし、顎の痛みが激しい時は、噛む癖を直すのは後でいいですよ。
痛くてそれどころじゃないですよね。
2-2. 痛みの緩和

歯科医院では、まずは夜間につけるマウスピースやスプリントと呼ばれるもので痛みを緩和します。
中には咬み合わせが原因ではないかと思い、矯正を行う歯科医院もあるようです。しかし、顎関節症の初期では顎の関節や筋肉に炎症が起きて咬み合わせが変化している場合があります。その状態で矯正すると、元の咬み合わせに戻った時に不具合が生じるので、いきなり矯正は行いません。

マウスピースは寝ている間の歯ぎしりや食いしばりによる筋肉の緊張を緩和してくれます。
ちょっと楽になりそうですね!
2-3. 理学療法

理学療法には、筋肉のマッサージやホットパック、低周波治療、レーザー照射(鎮痛)、ストレッチ、顎の動きを柔らかくする訓練などがあります。
ストレッチや顎の動きの訓練は、医師の指導のもと自宅でも行えます。

筋肉や関節を柔らかくしたりするのが目的です。
なるほど!痛みが和らぎそうです!
2-4. 薬物療法

薬物療法とは、消炎鎮痛剤などを使って痛みを和らげる方法です。症状に応じて薬や服用方法が違うので、医師の指示を守ってください。

薬でも改善しない場合は、治療方針を変えることもあります。
薬でも良くならないことがあるんですか!

医師の方でも模索しながら最適を見つけます。顎関節症はそれくらい難しいんですよ。
3. 顎関節症の治療はどこで受けられる?

顎関節症の治療は、症状や治療法を見ても一筋縄ではいかないことが分かりますね。そのため、顎関節症は専門家にかかるのがおすすめです。専門家を探すポイントは、以下の2つです。
- 顎関節症を扱う歯科医院や口腔外科
- 日本顎関節学会の専門医・指導医がいる歯科医院
一般の歯医者さんは顎関節症を扱っていないこともあるんですか?

歯医者でもそれぞれ知識に幅があるので、きちんと顎関節症の専門的な治療をしているところの方が安心ですよ。
4. 顎関節症からくる体の不調は放置してはいけない
顎関節症は、はじめは顎の違和感程度ですが、放っておくと慢性的な頭痛やめまい、ひどい場合は半身のしびれや痛みなどに発展してしまいます。症状の範囲や状態はどんどん重くなるので、身体の不調があり顎関節症が原因かなと思ったら、できるだけ早く専門家に診てもらってくださいね。
- 顎や歯の痛み、偏頭痛、眼痛、めまい
- 肩、首、背中のこり、腕や手指のしびれ
- 不眠
- 半身の痛みなどの異常
- 虫歯や歯周病、顎関節の慢性疼痛などを併発するケースもある
- 治療は必ず顎関節症の専門家がいる歯医者で行う