矯正の限界とは?どうしても出てしまう9つのリスクと対処法

矯正の限界とは?どうしても出てしまう9つのリスクと対処法

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杉田大先生
杉田 大 先生
所属:杉田歯科医院(千葉県船橋市)
専門:保存修復
2013年 東京歯科大学卒業。現在は杉田歯科医院での臨床のほか、株式会社DoctorbookでDental事業部のマネージャーを務める。

歯列矯正を検討している方はさまざまな悩みや要望を抱えていることでしょう。しかし、現在の矯正治療は必ずしもその全てに応えられるとは限りません。ここでは、矯正で歯並びを治したいと考えている方が知っておくべき矯正の限界とリスクについてご説明します。

矯正だけでは治療が難しいケースがある

骨格や顎の骨に問題がある場合

顎関節

矯正治療は歯槽骨の中に埋まっている歯を徐々に動かしていく治療です。顎のかたちまで変えることはできません。そのため、上下の顎の骨が左右にずれていたり、上下どちらの顎が大きすぎる・小さすぎるなど、骨格そのものに問題がある場合は、矯正によって歯並びを整えるだけでは問題が解決しないことがあるのです。

この場合には外科手術をした上で矯正をすることで対処できることがあります。例えば、重度の受け口や出っ歯などの治療では必要になることがあるでしょう。顎変形症など厚生労働省の定める疾患によるものと診断されれば、保険適用となることもあります。

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歯と顎の骨がくっついてしまっている場合(骨性癒着)

外科矯正

歯と顎の骨の間には歯根膜といわれるクッションがあります。何らかの理由でこの歯根膜がダメージを受けている場合は、歯と顎の骨の歯槽骨がくっついてしまうことがあるのです。骨性癒着(アンキローシス)と呼ばれます。

この状態では矯正で歯を動かすことはできません。レントゲンや治療前の検査ではわからないことも多く、矯正を始めてから「1本だけ動かない」といった感じで判明することも多いのです。

部分的にくっついている場合は一旦歯と歯槽骨を剥がしてから動かします。完全にくっついてしまっている場合には、顎の骨ごと切り取って移動させる外科手術(コルチコトミー)が必要になることも。口腔外科の専門医と連携して治療することになるでしょう。

顔全体の見た目の悩みが解消されないこともある

歯が痛む女性

矯正治療を検討する方は口元の見た目に悩みを抱えていることが多いでしょう。先述したとおり、矯正治療は歯を動かす治療であり、骨格を根本的に変えるものではありません。矯正は見た目の改善も重要ですが、噛み合わせを整えてお口の健康を取り戻すのが本来の目的なのです。

美容整形ではないので、必ずしも理想の外見を手に入れられるわけではありません。歯並びだけ整えてても見た目には満足できない可能性もあります。また顎が小さいことを気にしていた場合、抜歯をして矯正をしたことでさらに口元がスリムになり、さらに悩むことになるというケースもあります。

矯正をするときは見た目の要望や悩みも含めて相談に乗ってくれる歯科医師を選ぶといいでしょう。

注意
外科手術も併用することで骨格から変えることは可能ですが、健康上の問題がない場合には保険がきかず高額になりますし、リスクもあるので注意してください。

歯と歯の間に隙間ができてしまうことがある

鏡で歯を見る女性

矯正後には歯と歯の間にわずかな隙間ができてしまうことがあります。特に歯を抜いて矯正したときや、もともとすきっ歯だった場合に起こりやすくなります。噛み合わせの上では問題ないことが多いのですが、顎と歯の大きさのバランス的にピッタリと合わないケースがあるのです。

また、矯正で歯を動かすことによって歯茎が少し下がってしまい、歯の根元のほうだけ隙間ができてしまうこともあります。ブラックトライアングルと呼ばれるものです。こちらも健康上は基本的にリスクはないのですが、どうしても見た目が気になってしまう方もいるでしょう。

まずは再度矯正によって隙間を閉じられないか相談してみましょう。ただ、それ以上動かすのが難しかったり、隙間を閉じることで噛み合わせに問題が生じることも多いものです。その場合はコンポジットレジン(白いプラスチックの詰め物)で隙間を埋めたり、セラミックの被せ物をしたりすることで見た目を改善する方法もあります。

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どうしても抜歯しなければならないことがある

抜歯

歯並びが悪くなる原因の多くは、顎に対して歯が大きすぎて全ての歯がキレイに並ぶスペースが足りないことです。大人になると顎を大きくしたり、歯の並ぶラインを拡げたりするのは難しいので、スペースを確保するためにはどうしても抜歯が必要になるケースがあります。

ポイント
特に日本人は歯のサイズに比べて顎が小さく、矯正で抜歯が必要になるケースが多いといわれています。

どうしても抜歯をしたくないのであれば、歯科医師に相談してみましょう。歯の両側面を削るディスキング (ストリッピング)やインプラント矯正など、なるべく抜歯をしない選択肢もとれることも。

また永久歯に生え変わる前の小児期から始めれば、顎の成長を利用しながら治療できるので、抜歯をしないで済む確率が高まります。

注意
適切な診断による矯正に伴う抜歯は健康上のデメリットはほとんどありません。むしろ無理に抜歯をせずに治療するリスクもありますので、担当医と相談しながら慎重に検討してください
矯正で抜歯しないほうがいい?抜歯が必要な理由と非抜歯矯正のリスク

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治療期間や結果を完璧に予測できない

矯正の治療期間は平均で2年ほどですが、経験豊富な専門医でも正確な期間を予測するのはなかなか難しいもの。矯正は圧力をかけてゆっくりと歯を動かしていく治療です。無理に力をかけるとリスクがあるのはもちろん、強く圧力をかければ早く歯が動くわけでもありません。患者さんによって歯の動くスピードは異なりますし、長い治療期間のなかでお口の状態は変化します。

またきちんと毎月の調整のための通院ができるか、補助器具のゴムかけをサボらずやってくれるかなど、患者さんが治療に協力的かどうかによっても左右されます。満足のいく成果を得るためには、担当医としっかりコミュニケーションを取りつつ、前向きに治療に取り組むのが大事なのです。

ポイント
マウスピース矯正ではコンピュータ上での3Dシミュレーションによって歯の動きや治療結果を事前に視覚的に確認できますが、予測が完璧でない点は同様です。

矯正後に後戻りしてしまう

口を隠す女性

矯正によって動かした歯は、自然と元に戻ろうとします。矯正後数年間はこの「後戻り」を防ぐために「リテーナー(保定装置)」をつける必要があるのです。

どうしてもサボってしまう方も多いですが、リテーナーはしっかりとつけましょう。せっかく時間と費用をかけてキレイにした歯並びが台無しになってしまったらショックですよね。後戻りして再治療する方も少なくないですが、また一から治療をやり直すことになってしまいます。

また噛み方の癖や舌で前歯を押すような癖がある方は矯正のときにしっかりと直しておく必要があるでしょう。

ポイント
矯正をしたかどうかに関わらず、歯は生涯少しずつ動いていきます。基本的に奥歯が前に倒れていく傾向にあるのです。年齢を重ねると、「出っ歯になった気がする」「前歯が凸凹になってきた」と感じるのはこのため。

治療中や治療後に噛み合わせに違和感を覚える

歯が痛む女性

矯正では段階的に歯を動かしていきます。矯正は噛み合わせを正しく整えることが最大の目的ですが、実はそのステップは治療の最終段階。治療を始めてしばらくは噛み合わせに違和感が出ることが多いかもしれません。

またキレイな噛み合わせになっても、今までと違う感覚にすぐには慣れないこともあるでしょう。そのため治療中や治療直後に「失敗したかも……」と心配になる方も多いのです。

治療中は矯正器具があるためにそもそも思うように食事ができないことも多いので、噛み合わせの違和感は気にしないでおきましょう。また治療後しばらく経っても慣れないときは担当医に相談してください。微妙なズレが生じていることもありますし、歯並びの原因となった噛み方の癖が影響していることもあります。いずれにせよ、しばらくは時間がかかるものだと思っておきましょう。

歯を動かすときは痛みが出る

矯正で歯を動かすときはどうしても痛みが出ます。特に治療を始めた直後や、毎回の調整後に強く痛みが出ることが多いようです。だんだんと慣れてくることがほとんどなので、痛み止めなども活用しながら辛い時期を乗り切りましょう。

より弱い力で効率的に歯を動かす「セルフライゲーションブラケット」や「マウスピース矯正」は痛みが出にくいといわれているので、不安な方は検討してみましょう。

矯正の限界やリスクをしっかり理解した上で治療しよう

口元を気にする女性

矯正はこのような限界やリスクが少なからずあります。どうしても完全には解決できない問題があるのも事実です。事前にしっかりとこうした情報を把握した上で、信頼できる歯科医師と十分に相談して治療計画を決めるのが重要だといえるでしょう。