インプラントを安全に行う「サージカルガイド」とは?

インプラントを安全に行う「サージカルガイド」とは?
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インプラント治療の際に、医師からサージカルガイドの説明を受けて「なんだかよく分からない…」と不安になった人もいると思います。サージカルガイドは最近になって使われるようになったものだからです。まだ導入していない病院もありますが、「使わないでもできるなら」と考えるのは、少し結論を急ぎすぎです。ここではサージカルガイドの役割や、使わないとどうなるかなどをお伝えします。医師からの説明で疑問が残った人は、ぜひ読んで検討材料にお使いください。

INDEX
  1. サージカルガイドとは
  2. サージカルガイドはなぜ必要?
  3. サージカルガイドのメリット
  4. サージカルガイドにかかる費用
  5. サージカルガイド作成の流れ
    1. 顎の模型を作成する
    2. CT撮影をする
    3. 専用ソフトでシミュレーションする
    4. データを送付する
    5. インプラント手術を行う
  6. 3Dサージカルガイドとは
  7. サージカルガイドを使用しないリスク
  8. サージカルガイドのまとめ

サージカルガイドとは

サージカルガイドとは、インプラントを顎骨に埋入する際に深さや位置、角度などを正確にするためのものです。マウスピースのような形状をしており、埋入する箇所に設計によって定められた穴が開いています。決められた角度・長さしかドリルが進まないようになっているため、他の場所をドリルで傷つけることなくインプラントを埋入することが可能です。

サージカルガイドは独立した製品を販売している専門のメーカーと、インプラントメーカーがオプションとして販売しているものがあります。独立した製品で有名なのは、ノーベルガイドなどです。

サージカルガイドはなぜ必要?

従来のインプラント手術は、歯ぐきを切開し、ドリルで穴を開け、縫合するという手順で行っていました。高度で繊細な手術ですが、医師の経験や感覚だけを頼りに行う、いわばフリーハンドです。そのため、ほんの1mmズレただけでも、口内を損傷する可能性があります。

口の中には神経や血管が無数に走っています。フリーハンドで行う場合、いくら経験豊富で卓越した技術を持つ医師でも、神経や血管を損傷してしまう可能性があります。神経はごく細い側枝が何本も通っており、頬から鼻、目などの顔全体につながっているため、損傷すると顔の表情が変わったりしびれなどを引き起こしたりします。場合によっては医療ミスという重大なトラブルにつながりかねません。

しかし、サージカルガイドを用いれば、人間の経験や感覚に頼らずに正確にインプラント治療をすることが可能となります。そのため手術の危険性を回避し、患者さんへの負担も大幅に減らすことができるのです。

サージカルガイドのメリット

サージカルガイドはインプラント手術において、以下のような多くのメリットが生み出されます。

    • より正確な治療が行える
    • 基本的に切開手術の範囲を狭くできる
    • 手術時間が短縮できる
    • 神経や血管などを傷つけるリスクを減らせる
    • 術後の疼痛や腫れがない
    • 余計な隙間ができにくく細菌感染しにくい
    • 保証期間が伸びることが多い

従来のインプラント手術は、歯ぐきを切開して骨を露出しなければなりませんでした。しかし、サージカルガイドを使えば、切開を最小限にし、歯ぐきや骨に小さな穴を開けるだけで済みます。神経や血管などを傷つけることもなく、手術時間もかなり短縮できます。そのため、出血や術後に起こりがちな痛みや腫れがほとんどありません。ピンポイントで正確に穴を開けるので、余計な隙間ができることがなく細菌感染のリスクも減らせます。

インプラントメーカーのサージカルガイドを使用すると、インプラントの保証期間が伸びることがほとんどです。例えば10年が15年、20年まで保証されるといった具合です。インプラントのトラブルは年数が経ってからのほうが多いため、保証期間が伸びるとそれだけ安心の期間が増えます。

サージカルガイドにかかる費用

サージカルガイドはオーダーメイドで作成するため、費用は数万円かかります。一般的な相場は、5万〜10万程度です。インプラント同様サージカルガイドも自由診療なので、取扱メーカーや病院によっても異なります。いくらくらいかかるか、かかりつけ医に確認してみると良いでしょう。

サージカルガイド作成の流れ

サージカルガイドが作成されるまでの大まかな流れを説明します。

1.顎の模型を作成する

事前に顎の模型を作り、これを元にサージカルガイドを作成していきます。

2.CT撮影をする

歯科用CTで口内を撮影し、神経・血管の位置骨量・骨質などを確認します。

3.専用ソフトでシミュレーションする

CT画像をパソコンの専用ソフトで分析し、埋入位置やインプラントのサイズなどをより綿密に確認・設定します。

4.データを送付する

作成は技工所などの専門機関で作成されます。データを送付し、サージカルガイドが届くまでに通常2〜3週間かかります。

5.インプラント手術を行う

手術では、届いたサージカルガイドを口腔内に装着した状態で、インプラントを埋入します。

3Dサージカルガイドとは

最近では、CT画像と3Dスキャナで撮影した3Dデータを元に作成する「3Dサージカルガイド」が登場しています。作成方法も、技工所などの専門機関に送るだけでなく、病院から送ったデータを技工する機関と連携しながら微調整して設計する方法や、3Dプリンタ光造形の機械を自院に導入して直接作成する病院も出てきました。

サージカルガイドを3Dデータと光造形で作成する動画がありましたので、詳しく知りたい方は見てみてください。(引用:ランドマーククリニック)

サージカルガイドができるまで【Landmark Guide 作製工程編】 - YouTube

サージカルガイドができるまで【Landmark Guide 作製工程編】 - YouTube

サージカルガイドを使用しないリスク

インプラント手術で考えられるリスクは、大きく以下の4つです。

    • 骨と結合しない
    • 適切に埋入されていない
    • 神経や血管の損傷
    • 細菌感染

インプラント本体と骨がうまく結合しない理由は様々な要因がありますが、ひとつには適切な位置や角度に埋入されていないということです。また、インプラント手術のリスクでもっとも多いのは神経の損傷です。埋入時はドリルを使用しますが、ほんの少しの手ブレなどでも神経を損傷する場合があり、顔の神経や筋肉に影響を及ぼします。血管を損傷してしまうと場合によっては大量出血してしまいます。また、次いで上顎洞への落ち込みとなっています。上顎洞は鼻の横の空洞ですが、上顎洞を突き破って穴を開けた場合には、インプラントが上顎洞に落ち込むというトラブルが発生します。

従来のインプラント手術は、「切開」「剥離」「縫合」が伴います。細菌感染には細心の注意を払いますが、それでもほんのわずかでも細菌があれば、そこからインプラント周辺に感染してしまう恐れがあります。そのため、インプラント手術は衛生管理の整った専門の手術室で行う必要があります。しかし、インプラント手術をするのは大学病院から個人が開設したクリニックまで色々あり、衛生状態は医療機関によって様々なのが実情です。中にはインプラント手術後に痛みや腫れが引かず、別の医療機関で検査した結果、せっかく入れたインプラントを取り除かなければならなくなったというトラブル例もあります。

また、インプラント手術には時間がかかり、術後痛みや腫れ、内出血による顔のアザなどができるのも致し方ないとされていました。通常痛みや腫れは自然に引きますが、顔のアザは自然に色がひくまで2〜3週間かかることもあり、接客業など人前に出る人は、仕事に支障をきたすこともあります。

インプラント手術を医師の経験や感覚だけに頼ると、上記のような様々なトラブルが発生するリスクがあるのです。

サージカルガイドのまとめ

サージカルガイドは、正確にインプラントを埋入することで、以下のような患者さんの負担を減らすことを目的にしています。

    • 手術時間が短い
    • 術後の痛みや腫れがほぼない
    • 医療ミスが少ない
    • 手術中の細菌感染を防げる
    • 保証期間が伸びる

費用はかかりますが、サージカルガイドは長期的に見ればたくさんのメリットがあります。サージカルガイドを用いる病院は、患者さんのことを考えてより緻密に治療を行おうとしているのであり、信頼できるといって良いでしょう。