ワーファリンを飲んでいるとインプラントできない?薬とインプラント

インプラントができない理由としてよく目にするのが「ワーファリン」です。なぜワーファリンを飲んでいるとインプラントができないのか、自分も似た成分の薬を飲んでいるけどインプラントはできるのだろうか、と疑問を持つ方のために、ここではワーファリンをはじめ、薬とインプラントの関係について説明していきます。
- ワーファリンを飲んでいる人はインプラント治療ができないと聞いたことがある
- なぜワーファリンを飲んでいるとインプラントができないの?
- ワーファリンと似た薬を飲んでいる人も治療できないの?
- アスピリンを飲んでいる人もインプラントができないと聞いたけど本当?
ワーファリンは血液をサラサラにする薬です

ワーファリンは薬の商品名で、血液をサラサラにする効果があります。心筋梗塞や脳梗塞などに対して処方されます。現在は高齢化社会ということもあり、日常的にワーファリンを飲んでいてインプラントを希望する人も多くなってきました。
心筋梗塞や脳梗塞は、動脈硬化などが進んで血液がどろどろになり、血管の中で固まって血栓ができることにより起こる病気です。血液が滞ると酸素や栄養分が送れなくなり、細胞が死滅してしまいます。この状態が心臓の筋肉に起こるものが心筋梗塞、脳に起こるものが脳梗塞です。
ワーファリンは血液が固まるのを防ぐ「抗凝固薬」です。血液には元々、傷を修復するために固まる物質が複数含まれており、そのうちのいくつかがビタミンKによってつくられています。ワーファリンは、ビタミンKを阻害することで、血液の流れを良くする薬です。
血液に固まる物質が含まれているとは知りませんでした。

健康なら非常に役立つ機能ですが、病気では仇となることもあるといえますね。
ワーファリンを飲んでいる人はインプラント治療ができないの?

インプラント治療は、ワーファリンを飲んでいてもできるケースも多いです。以前はインプラント手術をする際に、大量の出血を防ぐためワーファリンの服用を一時止めていました。しかしそれでは心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まりかえって危険であることが分かり、現在では服用を止めずに止血対策をしながらインプラント治療をします。また、最近ではフラップレス法という手術もあります。
手術ができる場合はなにか基準があるんですか?

後で出てきますが、事前に行う血液凝固検査の値で決定されます。
同じような効能を持つアスピリンの場合

昔は鎮痛剤といえばアスピリンでした。アスピリンは鎮痛剤として使用されますが、心筋梗塞や脳梗塞などにも処方される薬です。アスピリンは「抗血小板薬」と呼ばれ、血中の血小板血栓が産生されるのを防ぐのです。
血中には、壁にできた傷を塞ぐ係の「血小板」と、それをさらに強力なものにするための「凝固因子」という係がいます。凝固因子はドロッとした糊のようなものを作り、血小板と合体すると血栓になって傷口をしっかりと防ぐのです。
しかし、動脈硬化によって血管にコレステロールがたまると、これが災いします。動脈硬化が起こった部分にはお粥状のドロドロとした塊ができますが、塊は血管内を狭くし、剥がれると血管の壁に傷を作ります。すると、血小板と凝固因子が反応して血栓が作り出され、ただでさえ狭くなっている血管内をさらに詰まらせてしまうのです。これが、心筋梗塞や脳梗塞のメカニズムです。

アスピリンは血小板が血栓を作るのを防ぎ、ワーファリンは凝固因子がつくられるのを防ぐ薬です。
なるほど!それで両方とも血液をサラサラにする薬とひとくくりにされているんですね。
ワーファリンと同じ効能を持つその他の薬

ワーファリンやアスピリンは商品名です。抗凝固薬や抗血小板薬は、別の名称の薬もあります。以下は、代表的な薬(商品名)です。
抗凝固薬 | ワーファリン(ワルファリン) |
---|---|
プラザキサ | |
エリキュース | |
リクシアナ | |
抗血小板薬 | バファリン |
バイアスピリン | |
プラビックス | |
パナルジン | |
エパデール | |
プレタール | |
アンプラーグ | |
アンギナ―ル | |
ドルナー | |
プロサイリン | |
ペルサンチン | |
オパルモン | |
プロレナール | |
セロクラール | |
ロコルナール |
これらの薬を処方されていると、インプラントができない可能性があるということですね。

治療前にお医者さんと相談する必要がある薬です。
ワーファリンやアスピリンを処方される病気

抗凝固薬や抗血小板薬を処方されるのは、以下の病気です。
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
- 動脈硬化
- 狭心症
- 高脂血症
- 静脈塞栓症
- 心臓弁膜症
- 脊髄管狭窄症 など

持病があっても程度や薬の服用状況によっては可能なので、諦めずに相談してほしいです。
抗凝固薬や抗血小板とインプラント治療

抗凝固薬や抗血小板薬を服用している人がインプラント埋入を行う場合には、薬の服用を中断せずに手術を行います。その場合には、局所の止血剤を使用したり、止血を行ったりしながら手術を進めます。
止血剤には、骨ワックスや特殊ガーゼ、シリコンスポンジ、シーネ(ギブスなどを作る際に使われる固定剤)などを使用します。

止血しながら手術するので通常より時間がかかりますが、慎重に行うためには必要なことです。
そうですね。安全第一ですね。
服用を止めるとかえって危険!

以前は手術中の出血を心配して、服用を一時中断してインプラント手術を行っていました。しかし、国内外から、抗凝固薬や抗血小板薬を中断して抜歯をした場合に合併症の比率が高い・予後の状態が悪くなるなど複数の報告がありました(抜歯も出血を伴うため、インプラント手術の参考とされています)。
そのため、日本循環器学会の“抗凝固薬・抗血小板薬のガイドライン”では、抜歯時には抗血栓薬の継続が望ましいとしています。インプラント手術もこれに準じて、服用を継続したまま手術をします。ただし、手術前には特定の検査が必要です。
ここでさっき言っていた血液凝固検査が出てくるのですね。

そのとおりです。
服用している人が事前に行うPT-INR検査

ワーファリンやアスピリンを飲んでいる人が、インプラント治療ができるかどうかを事前に調べる検査を、PT-INR検査といいます。
PT-INR検査とは、国際標準に則った血液凝固薬系の血液検査。年齢や病気など様々な条件によって適正値が異なりますが、2.0〜3.0未満までが出血や梗塞によるリスクが低いとされています。検査はごく小さな機器で行うことができ、歯科医でも実施しているところがあります。

ただし、内科医と歯科医師とが連携してインプラント治療を進めることが前提です。
流れとしては最初に歯科医院で相談するのがいいですか?

少しでもリスクがあれば対応しないという歯科医院もあるので、そのほうがスムーズかもしれませんね。
薬を服用している人は必ず医師に相談しよう
ワーファリンは抗凝固薬、アスピリンは抗血小板薬で、梗塞や血栓症などの病気に用いられます。服用していてもインプラント治療ができるケースもあるので、諦めずにまずは医師に相談し、事前検査を受けてみましょう。
- ワーファリンは血液をサラサラにする薬
- ワーファリンを飲んでいても治療できるケースは多い
- アスピリンも同じ役割がある
- 血液をサラサラにする薬には色々な商品名がある
- 心筋梗塞や脳梗塞以外にも処方されている場合がある
- 服用している人は薬を止めずに治療を行う
- 事前のPT-INR検査で3.0未満なら治療できる