インプラントで副鼻腔炎になった!?治療中に起こるリスクを回避する方法

インプラントを入れると、まるで自分の歯がよみがえったような快適な生活を送ることができると聞き、年々、希望者が増えています。
インプラント治療の成功率は90%以上とされている一方で、治療中や治療後に副鼻腔炎を発症するなど、リスクがゼロではないことも忘れてはいけません。
ここではインプラントによる副鼻腔炎などのリスクやトラブルについて説明します。 インプラントの治療をスタートする前に、起こり得るリスクや、その対策法を知っておけば安心ですね。
- インプラントで副鼻腔炎になるかもしれないと聞いて不安になった。
- インプラントは外科手術だから、どんなリスクがあるのか知りたい。
- インプラントで起こるかもしれない副鼻腔炎って、どんな病気?
- インプラントで副鼻腔炎を起こすのは、いつ、どんなタイミング?
- どうすればインプラントで、副鼻腔炎などのリスクを回避できる?
インプラントで副鼻腔炎になる理由

インプラントで副鼻腔炎になることがあると聞いたのですが、副鼻腔炎というのはどんな病気ですか?

副鼻腔炎は、昔は「蓄膿(ちくのう)症」という名前で広く知られていた病気です。
なるほど、蓄膿症ならわかります。

副鼻腔とは、鼻の横の左右の部分で、上顎のすぐ上のところにある空洞のことです。副鼻腔炎になると、強烈な悪臭や頬の痛み、頭痛などが起こります。
それは辛そうですね。
インプラントで副鼻腔炎になるリスクがあるのは、上の奥歯にインプラントを埋め込む場合です。
奥歯は副鼻腔に近い場所にあるため、インプラント治療のなかでも特に難しいとされているのです。
また、上顎の骨は軽くて柔らかい海綿骨なので、他の骨よりも骨吸収という骨が痩せるスピードが早いことも、トラブルが発生しやすい理由のひとつです。
インプラントで副鼻腔炎になる3つのケース

上の奥歯のインプラント手術でいつ、何があったら、副鼻腔炎になりますか?

副鼻腔炎には、インプラントの治療中になるケース、治療後になるケース、治療を機に他の歯の影響でなるケースがあります。
インプラントで副鼻腔炎になるタイミングは、以下の3つのケースが考えられます。
治療中に副鼻腔炎になるケース
上顎の骨は他の骨より薄いため、インプラントを埋め込むには骨の量が足りない恐れがあります。
そんなとき造骨手術で骨を増やすのですが、その処置の際に副鼻腔との間にあるシュナイダー膜を破損してしまうことがあるのです。
それをきっかけとして細菌感染が起きて炎症が生じるのが「副鼻腔炎」です。
治療後に副鼻腔炎になるケース
インプラントを埋め込む際に誤ってシュナイダー膜を突き破ってしまったら、感染を起こし副鼻腔炎になってしまいます。
そこまでのミスの発生は稀ではありますが、残念なことに、治療する歯科医師が知識不足であったり、技術力が伴っていなかったりする場合、シュナイダー膜を傷つけて炎症を引き起こしてしまうことがあるのです。
他の歯の影響で副鼻腔炎になるケース
インプラントの手術が問題なく終わった場合でも、それがきっかけとなって他の歯が病変を起こし、副鼻腔炎になることがあります。
歯磨きなどの口内清掃が不十分な場合、虫歯菌や歯周病菌が上顎洞に入り込んでしまう恐れがあるのです。そこから細菌感染を引き起こし、副鼻腔炎になってしまうことが考えられます。
副鼻腔炎にならないための3つの対策

歯科では、副鼻腔炎を防ぐために、何か対策を講じていますか?

薄い上顎の骨に、無理に長いインプラントを埋め込まない、抜歯後は骨が十分に形成されるまで待つ、造骨手術(骨再生)を行ってからインプラントを埋め込む、ということを前提にしています。
なるほど。骨量を確保してから治療すると、副鼻腔炎を防げるということですね。

そうですね。急がず、慌てず、骨量が整うまで待ちます。
造骨手術には、以下の3つの方法がありますのでご覧ください。
ソケットリフト法
顎骨の厚みが5〜10mm程度ある場合、対応可能な方法です。
骨が安定するまで4〜6カ月くらい待ち、しっかりと骨が再生してからインプラントを埋め込む手術を行います。
サイナスリフト法
顎骨の厚みがごくわずかの5mm以下の場合、実施される方法です。
造骨とインプラント埋め込み手術を同時に行いますが、骨が安定するまで約半年間ほどかかります。
傾斜埋入法
斜めに埋入できるインプラントが開発されたことにより、上顎洞を避けて斜めに埋め込む方法です。
ただし、この方法は、高度な専門技術を修得した歯科医師でなければ難しい方法です。また、顎骨全体が薄い場合は対応できません。
万が一、副鼻腔になってしまったら

いろいろと配慮して治療してくださるのはわかるのですが、万が一ということもありますよね。もし副鼻腔炎になってしまったら、どうすればいいですか?

抗生剤を服用するなどをして様子を見ます。また、一般的な副鼻腔炎の処置と同様に、上顎洞の消毒を行うこともあります。これは耳鼻科で行われている治療です。
たいていは、どちらかの方法で治癒するケースが多いですね。
そうなんですね。治療法があると聞いて安心しました。
抗生剤を服用する、上顎洞の消毒を行う、このいずれかの方法で治癒することがほとんどです。
他には、内視鏡下鼻内手術で、上顎洞の自然孔を広げる方法もあります。
ただし、インプラントが突き抜けてしまっている場合には、改めて治療し直さなければなりません。
インプラント治療で起こるかもしれないリスク


治療中の医療ミス、細菌感染、治療後の歯周病などから副鼻腔炎になることがあるというお話をしましたが、その他にも以下のようなリスクがあります。
- 切開の際、神経や血管を傷つける場合がある。
- 細菌感染の恐れがある。全身疾患がある場合は要注意。
- ドリルの熱で、骨や神経を損傷する恐れがある。
- 麻酔が切れたら、痛みや腫れがでることがある
- インプラントと骨が結合しにくいことがある
- インプラント周囲炎になる恐れがある

インプラントのリスクを軽減するには、技術や知識をしっかりと持った歯科医師を選ぶこと、治療後のケアをしっかりと行って細菌の侵入を許さないことが大切です。
なるほど。リスクをあらかじめ知っておけば、回避することができますね

また、最近では、骨に最小限の穴だけ開ければインプラント手術ができる「フラップレス法」に注目が集まっています。ただし、最先端の知識と技術をもつ歯科医師でなければ対応できませんので、事前に可能かどうか確認が必要です。
それはいいですね。知識を拡げれば、トラブルに遭う可能性が低くなりますし、患者自身でより良い選択ができますね。お話を聞けてよかったです。
- インプラント治療で副鼻腔炎になるリスクがあるのは、上の奥歯。
- 上顎の骨が薄くなっている場合、副鼻腔炎になる可能性がある。
- 造骨処置をして、骨の量が十分になってからインプラントを埋入。
- 専門的な知識や技術をしっかり持った歯科医師を選ぶことが大事。
- インプラント治療後はセルフケアを徹底し、細菌感染を防ぐこと。