ペースメーカーを利用している人はインプラント治療ができないの?

植え込み式のペースメーカーを使用している人は、インプラント治療ができないと思っているかもしれません。しかし、ペースメーカーを体内に入れていても、インプラント治療ができるケースがあります。ここでは、ペースメーカーを入れていてもインプラント治療ができる理由や考えられるリスク、インプラント治療に際して注意が必要なその他の病気などをご紹介します。
- ペースメーカーを使っているがインプラントを入れたい
- ペースメーカーの利用者はインプラントができないと聞いたけど本当?
- ペースメーカーをしているとなぜインプラントができないの?
- 他にもインプラントができない病気があれば知りたい
【結論】ペースメーカーでもインプラント治療はできます

心臓ペースメーカーを使っていても、インプラント治療をすることは可能です。
植え込み式の心臓ペースメーカーは電流で動作をコントロールするため、インプラントの金属が反応して誤動作を起こしてしまうのではないかと不安になるかもしれません。しかし、心臓と歯までの距離はけっこう離れているので、電磁干渉を起こす確率は極めて低いといえます。

治療はかかりつけ医と相談の上すすめていきます。
それなら安心ですね。
ペースメーカー利用でのインプラント治療のリスク
インプラント治療ができるケースもありますが、リスクがまったくないわけではありません。
電気メスは使えない

ペースメーカーを装着している場合、電流が流れる電気メスを使うのは危険です。ペースメーカーを利用している人は事前に医師に告げ、電気メスを使わない治療をしなければなりません。そもそも、電気メスの取扱説明書には、「植え込み式のペースメーカーを装着している人への使用は避けること」と記されています。
最近ではフラップレス法といって、電気メスを使用しない手術法もあります。この方法が登場したおかげで、心臓病や脳梗塞などの持病がある人でも、インプラント治療が可能となりました。

フラップレスをしている歯科医院なら、他院で断られた人でも治療できることがあります。
それは心強い!
感染症のリスクがある

インプラントを埋入すると、ペースメーカーが口内の細菌に感染するリスクがあります。
インプラントがかかりやすい病気として、歯周病菌がもととなるインプラント周囲炎があります。歯周病菌は血管や肺に入ると感染症や肺炎を引き起こすため、ペースメーカーを体内に利用している場合、稀に感染症心膜症にかかることがあるのです。
合併症と考えていいのでしょうか?

そのとおりです。本当に稀ですけど、ゼロではありません。
抗血栓薬を使用していると血が止まりにくい

抗血栓薬を服用している場合、手術中は血が止まりにくくなることが考えられるので、止血対策をしながら行います。ペースメーカーを装着している人は、抗凝固薬や抗血小板薬などの抗血栓薬を服用しているケースがほとんどです。ペースメーカーは不整脈が起こる頻度を少なくする治療法なので、薬との併用が必要だからです。
抗血栓薬を服用している場合でも、インプラント手術の際には薬の服用を続行しながら行えます。もし服用を一時的にでも中断すれば、命に関わる可能性があるためです。
なんだかちょっと難しいなぁ。

血液をサラサラにする薬を飲んでいる人は、薬を止めないで対策しながら手術するということです。
あ〜、なるほど!
治療を断られる場合もある

どんな医師でも、基本的に少しでもリスクがあることは患者さんに勧めません。そのため医療機関や医師によっては「ペースメーカーを装着している人はインプラントをしない」という治療方針をとるところもあります。
ペースメーカーを利用していてインプラント治療を希望する場合には、リスクや対処法などを熟知している経験豊富な医師を選ぶのが望ましいでしょう。

かかりつけの内科の先生に紹介してもらうのもおすすめです。
それが一番安心ですね。
内科主治医との連携が必須

植え込み式のペースメーカーをしている人は、内科と歯科の両主治医に相談し、医師間でも連携をとりながら治療方針を固めます。
一般的に不整脈がある人がインプラント治療をする時は、発作から半年以上経ってからが望ましいとされています。ペースメーカーは再発予防という側面があるため、症状が改善しても油断はできません。その時の状態などを医師間で連絡しあい、手術日などを決定する必要があります。
自分の思い込みだけではやらないほうがいいですね。

後々の重大なトラブルにもつながるので、事前の問診で必ず申し出てください。
インプラント治療をするとき注意が必要な病気
インプラント治療は外科手術を伴うため、全身疾患がある人には大きな負担がかかる可能性があります。
心臓病

現在心臓の病気で通院している人や既往歴がある人は、必ず主治医に相談しましょう。特に安静状態でも狭心発作がある場合や回数が増してきた場合は、心筋梗塞に移る可能性も考慮して、歯科治療は避けるのが一般的です。
心筋梗塞や狭心症の人ですね。

そうです。インプラントだけでなく、虫歯や歯周病治療も避けたほうがいいです。
糖尿病

現在糖尿病で、医師の指示通り通院していない場合や血糖値のコントロールができていない場合は、インプラントの治療は難しいでしょう。

手術中に血糖値が不安定になることが考えられます。
それは大変ですね。
骨粗鬆症

骨質が不十分な場合や、治療のためにビスホスホネート系の薬を使用している(またはしていた)場合は、インプラント治療や抜歯をすると骨が壊死する危険があります。

薬の種類や服用していた期間によっては治療が可能な場合もあるので、主治医によく相談しましょう。
肝臓病・腎疾患・がん

肝硬変や重度の肝臓病の人は、手術中に血が止まらなくなるというリスクがあり、インプラント治療後に服用する薬によっては肝機能を更に低下させてしまう可能性があります。
腎臓病やがんの治療中の人は、免疫力が低下しているためインプラント手術をするのは危険です。インプラント体と骨との結合が難しい・血が止まらなくなる・治癒が遅くなるなどのリスクが考えられます。

既往歴のある人も、必ず申し出てください。
かかりつけの医師とよく相談して決めましょう
植え込み式のペースメーカーを利用している人や、全身疾患がある人は、インプラント治療を受ける前にかならず医師に相談しましょう。すでに回復している人でも服用している薬や骨・血液に影響がないとも限りません。詳しく説明して、安心して治療を受けてください。
- 歯から心臓までは遠いので電磁干渉を受けにくいと考えられる
- 電気メスを使用しない手術法でリスクを回避できる
- とはいえ感染症のリスクはある
- 抗血栓薬を使用している場合は止血対策を行う
- リスクを避けるために断られる場合もある
- 内科医との連携は必須
- 糖尿病、骨粗鬆症など他にもインプラント治療が難しい病気がある