骨不足でもインプラント治療の可能性!サイナスフロアエレベーションとは

歯を失ってインプラント治療を受けた多くの人は、「まるで自分の歯が蘇ったように快適になった」といいます。
そのため、インプラント治療を希望する人は年々増えています。
しかし失った歯が「上顎の奥歯」であれば、「インプラント治療が難しい」「そのままではインプラント治療できない」と診断されるケースが多くなります。
では、どうすればインプラント治療が可能になるのでしょうか?
その治療法を実践している歯科の先生に、お話をおうかがいしました。
- 上顎の奥歯のインプラント治療は難しいと聞いた。それは、どうして?
- 骨不足でインプラント治療が難しいと診断された。何か良い方法はない?
- 上顎の奥歯のインプラント治療法「サイナスフロアエレベーション」って何?
- インプラントのための骨移植に、負担を抑えた安全な方法があるって本当?
- サイナスフロアエレベーションの新しい治療の進め方について知りたい。
上顎の奥歯のインプラント治療は難しいって本当?
上の奥歯は、インプラント治療が難しいのですか?それはいったい、どういうわけでしょう?

では、スカル…”しゃれこうべ”を思い浮かべてください。
スカル?しゃれこうべ?あぁ~、頭蓋骨のことですね。

そうです。頭蓋骨って空洞が多いと思いませんか?上顎の奥歯のすぐ上も、上顎洞(じょうがくどう)という空洞なんですよ。
あぁ、確かにそうですね。

空洞だから、インプラントを埋め込む骨が足りないことが多いのです。
なるほど。そういうわけですね。
骨の量が足りないケースが多い
インプラントは顎の骨を土台にして、人工歯根を埋め込む治療法です。
上顎の奥歯の部分は、土台にすべき部分が空洞になっているため、骨量が足りなくてインプラント治療が難しい人が多いのです。
無理に埋め込むと、インプラントが上顎洞へ突き抜けてしまったり、抜け落ちてしまったりという状態に陥るリスクがあります。
上顎には空洞があるから
上顎の奥歯のすぐ上に、上顎洞(じょうがくどう)という空洞があります。
特にアジア系の日本人の頭蓋骨は欧米人のような長さがなく、上顎洞が近くにあるため、この部分の骨の厚さが10mm以下という人がとても多いのです。
骨を増やす治療法がある
骨の厚さが10mm以下しかない場合はインプラント治療が難しいのですが、その場合は、骨造成の処置を行って骨を増やすことができます。
上顎洞に骨を増やす治療法を、サイナスフロアエレベーション(上顎洞底拳上術)といいます。
サイナスフロアエレベーションとは、どんな治療法?
おぉ、骨を増やせるのですね。どのような治療法ですか?

人工骨や自分の骨を移植して、それを4~6カ月ほどかけて増やします。そうすればインプラント治療ができますよ。
骨が足りないからといって、インプラントを諦めなくてもいいのですね。それは嬉しい。
サイナスフロアエレベーション(上顎洞底拳上術)の治療の進め方を紹介します。
1.上顎の粘膜をドーム状に膨らませる
上顎洞の底の粘膜を、小さな器具を用いて少しずつ引き上げ、ドーム状の空間を作ります。
2.リフト後、人工骨や自分の骨を入れる
リフトして作られた空間に人工骨や自分の骨を移植し、新しい骨が増えるのを待ちます。
3.4~6カ月後、周囲の骨と一体化する
4~6カ月ほど経過すると、空間が新しい骨で満たされ、移植した骨と一体化します。
4.丈夫な骨に熟成したことを確かめる
インプラントの土台になる丈夫で硬い骨になったことを確かめたら、サイナスフロアエレベーションが完了です。
5.インプラント治療をスタート
骨不足が解消されたら、インプラント治療のスタートです。土台になる骨に、インプラントの人工歯根を埋め込む手術を行います。
負担を抑えて骨の移植を行う、新しい術式とは?
これは新しい治療法なんですか?以前は、骨不足でインプラント治療ができないと諦める人が多かった印象がありますが…。

実は、かつては患者さんの身体への負担が大きいといわれて一部では敬遠されていた治療法でもあるのです。マイクロスコープが開発されたことで新しい術式ができて、痛みや腫れを抑えることが可能になりました。
おぉー、それはいいですね。
サイナスフロアエレベーション(上顎洞底拳上術)は、従来の方法ではかなり大きく歯の粘膜を剥がして、大きく骨を削り取らなければなりませんでした。
そのため、痛みや腫れが強く、手術における患者さんの身体への負担が大きかったのです。
その点、マイクロスコープや専門器具を用いる新しい術式なら、最小限の負担で骨の移植が可能になりました。
新しい技術で手術をするメリットは?
新しい術式でサイナスフロアエレベーション(上顎洞底拳上術)を行うメリットは以下の通りです。
- 骨不足でもインプラントを諦めなくていい
- 動脈を傷つけるリスクを減らせる
- 術後の腫れや痛みを軽減できる

歯ぐきを切り開く量が最小限で済みますので、安全で痛みが発生しにくいなど、大きなメリットがあります。
手術の後で、痛みが少ないのはいいですね。
サイナスフロアエレベーションの注意点とは?
新しい術式でサイナスフロアエレベーション(上顎洞底拳上術)の注意点は以下の通りです。
- マイクロスコープなど最新機器の導入が必須
- 治療できる歯科が限られている
- 術後の腫れや痛みが完全にないとはいえない
安全で、身体の負担も少なくなったなんて、素晴らしいことですね。

注意点は、どこでも誰でもできる治療法ではないというところです。マイクロスコープが導入されていない歯科医院も未だ少なくないですしね。
なるほど。そうなんですね。治療できる歯科を探さなければなりませんね。

事前に公式ホームページなどで調べるか、歯科医に直接、質問してみるといいですよ。
インプラントの最新情報については、下記の記事も参照してください。
- 上顎の奥歯のインプラントは、ほかの歯に比べて難しいことが多い。
- 空洞があるため、インプラントを埋め込む骨が足りないことが多い。
- サイナスフロアエレベーションで空洞に骨を移植し、骨造成が可能。
- マイクロスコープの開発と極小器具により、負担の少ない治療が可能に。
- 治療できる歯科医院が限られているので、事前の確認や質問が必須。