知らなかった!前歯のインプラントや修復治療は、他の歯よりも難しい

前歯は、すべての歯の中でも特に目立ちやすい場所です。失くしてしまったら、できるだけ早く修復したいと考えますよね。
その時、気を付けなければいけないのは、前歯の修復治療には、ほかの歯よりも注意すべき点が多い点です。
早く修復することばかりに気を取られていると、後でとりかえしがつかなくなるケースもあります。
今回は、インプラントをはじめ前歯の修復治療に詳しい歯科医院の先生にお話をうかがいました。
- 前歯の虫歯が悪化して抜歯を免れない。最適な治療方法を知りたい。
- 前歯を失った時、歯を補うには、どんな治療法が最適なのか知りたい。
- 欠損した前歯に、自分の親知らずを移植できると聞いたけれど、本当?
- 前歯をインプラント治療するが、いずれ矯正もしたいと思っている。
- 前歯のインプラント治療は他の歯よりも難しいと聞いたが、本当?
前歯を失った時、考えられる治療法は?
前歯は人目に触れる機会が多いですから、どんな治療法があるのか気になりますね。

ブリッジやインプラント、移植、入れ歯などが挙げられますね。
けっこう選択肢がありますね。どう違うのでしょう?

では、それぞれの治療のメリット・デメリットについて紹介します。
ブリッジ
ブリッジは両隣の健康な歯を支えにするために削り、欠損歯を補う人工歯が連結した被せ物を装着する治療法です。
失った歯に代わる人工歯には、歯根がありません。支えになる隣接歯がしっかりした状態であることが、長持ちの秘訣です。
メリットは、保険診療が適用する治療なので、比較的リーズナブルに治療できることです。
デメリットは、長く使い続けるうちに支えの歯に負担がかかって状態が悪くなったり、歯肉が下がってブリッジにすき間ができたりすることです。汚れが溜まりやすいので、口臭の原因になりやすいという問題点もあります。
インプラント
インプラントは、人工歯根を顎の骨にしっかりと埋め込む治療法です。
メリットは、よく噛めることをはじめ、たくさんあります。誰もが「暮らしが快適になった!」と言います。見た目が自然であることも含め、自分の天然歯がよみがえったかのような感覚で使い続けられます。10年以上、長持ちするという特徴があります。
デメリットは、外科手術を伴うこと。そして、基本的に保険が適用されないため、治療費は全額自己負担であることです(※注)。
治療費に幅があることからも推測できると思いますが、歯科医の技術や知識によって仕上がりに差がある事実は否めません。
また、前歯は抜歯すると歯茎が痩せやすいという特徴があるため、時間が経つとインプラントと歯茎の接合部の見た目が変わってくるという例もあります。
移植
歯を失った時、「できるだけ自分の歯を大切にしたい」という場合は、再生療法の一種である「歯牙移植」という治療法があります。前歯として移植する歯は、親知らずや生えてこずに歯茎の中に埋まっている歯があれば、それが使われることになります。
メリットは、たとえ歯を失っても根っこの部分に歯根膜が十分に残っていれば、歯牙移植の方がインプラントよりも安定感が得られます。噛み合う歯を傷めることもありません。自分の天然歯を移植するのですから、異物反応などの心配もない治療法です。
歯を移植した後は、4~5カ月程度で普通に噛めるように馴染みます。条件は厳しいですが、保険適用になるケースもあります。詳しくは歯科医に確認してください。
デメリットは、インプラントよりも歯科医の技術力が求められる難易度の高い治療であるということです。外科手術が必要で、最低2カ所に対して行わなければなりません。
また、移植する歯と移植する場所の歯根のサイズが違うと、移植できないという問題があります。
入れ歯
前歯の入れ歯は、部分入れ歯ですので、金属製のバネを近くの歯にひっかけて固定することになります。メリットは保険適用の入れ歯はリーズナブルに作れますが、デメリットは金属のバネが目立つということです。噛む力についても、あまり期待できません。
けれども自費診療の入れ歯なら、金属のバネがなく、自然な見た目のノンクラスプデンチャーが作れます。口の中でのフィット感もあって、使い心地でも納得できることでしょう。
前歯のインプラントは奥歯よりも難しいって本当?
えっ、前歯のインプラントって難しいのですか?

前歯は、抜歯した後の歯茎の状態が悪くなりやすいので、そのままインプラントを埋め込むと問題が起こることがあります。
ええっ、どんな問題ですか?
インプラント埋入部の骨が薄い
前歯の治療は、見た目がきれいであることが重要です。けれども前歯部は、ほかの部分に比べて骨量が少ないので、インプラントを良い位置に埋め込めない恐れがあります。
もし骨量が足りない場合は、骨造成や骨移植を行って、インプラント治療ができる状態に整える必要があります。
歯茎の骨や肉が無くなりやすい
インプラントを埋め込んだ後も、歯肉が痩せてしまいやすいのが問題です。歯肉が退縮すると、インプラントの人工歯根と、上部構造をつなぐ結合部が前から見えてしまうことがあるのです。
もし見えても目立たないように、インプラントの土台を金属にするのをやめて、ジルコニアセラミックにする方法があります。
見た目の美しさを求められる
前歯は非常に目立つところなので、機能面だけでなく、見た目を美しく仕上げることが重要です。
そのほか、前歯の治療における注意点は?

前歯の歯並びを整えたいと考えていませんか?
いつか矯正できればという気持ちはありますね。

それでしたら、先に矯正してください。インプラントを入れてしまうと、歯を動かせなくなります。
そうなんですね。それは気を付けなければ。
歯並びを整えたいなら矯正治療を優先する
もし、噛み合わせや前歯の歯並びが気になっていて、「将来、歯列矯正をしたい」と考えているなら、前歯にインプラントを入れてしまうと、歯を動かせなくなってしまいます。先に矯正治療を行うようにしましょう。
歯の状態にもよりますので、診断を受けて治療の進め方を決めるようにしてください。
インプラント治療の前に噛み合わせをチェック
前歯にインプラントを入れる時は、まだ、噛み合わせや歯並びが気になくても、後から矯正したい問題が出てくるかもしれません。
インプラントを入れると矯正が難しくなることに配慮し、治療前に念のため噛み合わせのチェックを行っておくといいでしょう。
定期検診に通ってインプラントを長持ちさせよう
前歯に限らず、インプラントは治療後、定期的な検診が欠かせません。天然歯のような自浄作用がないので細菌感染に弱く、インプラント周囲炎のリスクがあります。歯肉が痩せて、見た目によくない影響が出ることもあります。
けれども定期検診に通っていれば、異変があると担当の歯科衛生士がすぐに気がつきますので、早期対応が可能です。
インプラントを長持ちさせるためにも、定期検診にきちんと通うようにしましょう。
前歯の治療は難易度が高い。歯科医としっかり相談を

前歯は歯茎が薄かったり、歯肉が痩せやすかったりするデリケートな場所です。そののままインプラントを入れてしまうと後で問題が発生することがありますので注意が必要です。
そうなんですね。これまでそんな風に考えたことがありませんでした。少し驚きでした。

より良い治療のために、歯科医の話に耳を傾けて、どの治療法が最適なのか、十分検討するようにしてくださいね。
- 前歯は目立つということもあって修復治療は、他の歯よりも注意点が多い。
- 前歯はブリッジ、インプラント、移植、入れ歯といった修復治療が可能。
- 前歯は歯茎が薄く、骨や歯肉が痩せやすい部分なので治療の難易度が高い。
- 前歯は骨量が少ないままインプラントをすると、長持ちしないことがある。
- より良い治療のために、歯科医からの説明をしっかり聞くことが大切。