インプラント周囲炎とは?あご骨が痩せる危険なインプラントの病気

「インプラントは人工の歯だから病気とは関係ない」と思っているなら、それは誤った認識です。インプラントそのものは、たしかに虫歯や歯周病に侵されることはありません。
しかし、インプラントは「インプラント周囲炎」という特有の病気を発症することがあるのです。特に、細菌感染に弱いインプラントは天然歯よりもリスクが高いので、インプラントの快適な噛み心地を得たことでうっかり油断するのは禁物です。ここでは、注意すべき「インプラント周囲炎」について、詳しくお伝えします。
- インプラントも歯周病になるって聞いたけど本当?
- インプラント特有の病気ってどんなもの?
- インプラント周囲炎ってどんな病気か知りたい
- インプラント周囲炎にならないようにするにはどうしたらいいの?
- インプラント周囲炎になりやすい人の特徴があるなら知りたい
インプラント周囲炎の特徴
インプラント周囲炎とは、インプラントの周りの組織が細菌感染によって炎症を起こす病気です。症状は歯周病に似ています。
インプラント周囲炎と歯周病との違い

インプラント周囲炎と歯周病の違いは、インプラントの周辺組織が細菌感染によって炎症するのに対し、歯周病は歯の周りの組織が細菌感染で炎症することです。
どちらも同じ歯周病菌が原因。つまり、2つの違いは炎症がどこで起きるかの問題です。
同じ病原菌とは知りませんでした。

意外に知られていない事実です。
インプラント周囲炎はさらに以下のような特徴を持っています。
インプラント周囲炎は歯周病より早期発見しにくい

歯周病は自覚症状が少ないので、なかなか早期発見がしにくい病気ですが、インプラント周囲炎はそれ以上に気づきにくいといえます。
インプラントの周りは深くくびれていて炎症が発見しにくく、痛みなどの自覚症状がないまま進行してしまいます。気づいたときにはかなりひどくなっていて、ある日突然インプラントがポロッと抜け落ちてしまったという事例もあるほどです。

インプラント周囲炎も、周辺の組織が出血したり膿が出たりしていれば気づくことができます。
でもそれって、かなり進行しているってことですよね?

そうですね^^;
インプラント周囲炎は歯周病の10〜20倍の速さで悪化する

骨は歯茎よりも細菌感染に弱く、悪化スピードは歯周病の10〜20倍もの速さです。炎症がインプラントの周辺組織から骨にまで達すると、年間1〜2mm程度の速さで骨が失われていくので、放置しているとあっと今に悪化します。

インプラント周囲炎は発見しにくい上に進行が早いのが最大の問題です。
予防するのが一番でしょうけど、いち早く気づくには何に気をつければいいですか?

次でご紹介するような症状が出れば目安になります。
インプラント周囲炎の6つの症状とは?
インプラント周囲炎のはじまりは歯周病とよく似ています。以下の症状が表れたら、インプラント周囲炎を疑う必要があるでしょう。
- 歯ぐきが腫れる
- 歯ぐきから出血する
- 歯ぐきが退縮する
- 膿が出る
- 歯周ポケットが広がる
- インプラントがグラつく
なるほど、歯周病によく似ていますね。

毎日鏡を見て歯みがきをすると、変化にも気づきやすいと思います。
その他のインプラント周囲炎のリスク
インプラント周囲炎になると、以下のようなリスクもあります。
発症すると自然には治らない

インプラントは人工歯なので、天然歯のように自然治癒力がありません。そのため一度インプラント周囲炎を発症してしまうと、自然に治ることは基本的にありません。生活習慣の改善と、歯科医院での治療が必要です。

軽い症状なら除菌や清掃で落ち着くことが多いので、早めに受診することが重要です。
日々のチェックと早期対応ですね。
インプラントが脱落する

自覚症状が少ないインプラント周囲炎ですが、放置しているとひどいときにはインプラント体が脱落してしまうこともあります。せっかく高価な費用と時間をかけて入れたインプラント。やり直したりすることがないように、日頃からしっかりと予防をこころがけましょう。

脱落するくらいだと骨がなくなって再治療が難しいケースもあります。
それはできれば避けたいですね。
周りの天然歯の寿命を縮める

インプラント周囲炎は、残っている周囲の天然歯にも被害を及ぼすというリスクがあります。歯周病は感染するので、天然歯が歯周病になってしまう可能性もあるのです。

歯周病は最悪の場合、歯を失ってしまうので注意しましょう。
歯を良くするためにインプラントにしたのに他の歯が悪くなるなんて考えたくもないですね。
かみ合わせの悪化による体調不良が出る

インプラント周囲炎によってグラつきが生じると、ほかの歯とのかみ合わせが悪くなり、頭痛や耳鳴り、肩こりなどが慢性化することがあります。

ひどい場合には顔に歪みが生じることもあるので侮れません。
かみ合わせってそんなに大切なものだったんですね。
細菌感染で命を落とす恐れも…

インプラント周囲炎は歯周病と同じで、原因菌が肺や血管に入ると、肺炎や心筋梗塞、脳卒中などの命に関わる全身疾患にもつながります。
歯周病菌でこういう話は聞いたことあるけど、インプラント周囲炎もそうなのか…。

原因菌は同じなので、歯周病と同じことが起こり得るんです。
インプラント周囲炎を発症する原因と対処法
では、インプラント周囲炎を発症する原因とその対処法をご紹介します。
口内の清掃が不十分である

インプラント周囲炎の原因は、プラークによるものです。プラークがインプラントと周辺組織の隙間に溜まって炎症を引き起こすので、対策としてはプラークを作らせないように歯みがきを徹底することが重要です。

プラークとは歯垢のことです。歯みがきや歯間ブラシ、洗口剤などでこまめにケアしましょう。
普通の歯と同じように、食後と寝る前でいいんですか?

そのとおりです。
歯磨きの方法が間違っている

せっかく歯を磨いても、磨き方が間違っているとプラークや食べカスを除去できません。正しい歯みがきの仕方は力を入れず、1本ずつ丁寧に小さく磨くことです。

歯みがきだけでは不十分なので、歯間ブラシやデンタルフロスも併用してください。
歯科医院での定期メンテナンスを受けていない

インプラントは治療した後も定期的なメンテナンスが必要です。3ヶ月から半年に1度は治療した歯科医院に行き、定期検診を受けましょう。定期検診ではレントゲン検査や細菌量の検査のほか、インプラントやお口全体の状態やクリーニング、口内の清掃状況についても確認もします。その時のお口の状況に応じて効果的な歯磨き指導も受けられますので、セルフケアのクオリティも上がるでしょう。

プロのクリーニングは、セルフケアではしきれないところもきれいにできます。
それは受けないと損ですね。
生活習慣病がある

インプラント周囲炎は生活習慣病のひとつです。どちらが起因になっているかについては様々な見解がありますが、生活習慣病を患っていると歯周病やインプラント周囲炎の発症リスクや進行速度が速くなることは、世界中の多くの研究機関から報告されています。
生活習慣病の治療をすると、インプラント周囲炎の症状に改善が見られたという研究結果も数多く報告されているので、まずは生活習慣病を治療・改善しましょう。

健康診断で引っかかった人は食事や運動から見直してみてください。
(思わずお腹をサスサス…)
喫煙者である

タバコに含まれるニコチンは歯ぐきの血流を悪くし、インプラント周囲炎のリスクが高めます。喫煙していると急速に骨が失われることが分かっているからです。

歯周病を専門に扱う学会でも、禁煙推進のための活動が熱心に行われています。
それはよほどのことですね。
45歳以上である

定期的に行われている厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、高齢になるほど歯周ポケットを持つ人の割合が増えていると報告されています。特に歯周病は、45歳以上の人が歯を失う要因の第一位。高齢になるほどインプラント周囲炎のリスクが高まるといえます。
僕もそろそろ注意しなきゃいけない年齢だな…。
インプラント歯周炎にならないように予防しよう!
インプラント周囲炎は、インプラント治療を受けた人なら誰もがかかる可能性が高い病気です。そのため歯科医院ではメンテナンスの重要性をしっかりと説明します。インプラント周囲炎を予防するには、日頃のセルフケアと歯科での定期検診、生活習慣病の改善などが必要です。せっかく入れたインプラントを長持ちさせるために、予防につとめましょう。
※この記事では一般の方に向けて分かりやすくするために、インプラント周囲炎とインプラント周囲粘膜炎を併せてインプラント周囲炎と表記しています。
- インプラントはインプラント周囲炎にかかりやすい
- インプラント周囲炎は発見しにくく進行が速い
- 歯ぐきからの出血や腫れがあったらインプラント周囲炎の可能性あり
- インプラント周囲炎は自然治癒しないし命を落とす危険もある
- 予防するには日頃から口内を清潔にし、定期メンテナンスに通うこと
- タバコや生活習慣病もインプラント周囲炎に関係がある