【基礎知識編】今さら聞けない虫歯とは?虫歯はなぜ起こるの?

誰もが小さい頃、周りの大人に「虫歯になるから気をつけなさい」と注意された経験があるのではないでしょうか。しかし、そもそも、虫歯はどのようなメカニズムでできるのかをしっかりと分かっている人はあまりいないかもしれません。虫の歯と書いて虫歯。思えば奇妙な言葉ですね。ここでは虫歯ができるまでを詳しくご紹介します。なんとなく分かっている人も、確認の意味でぜひご一読ください。
- 虫歯の原理を知りたい
- 虫歯菌の正体は?
- 虫歯を治さないとどうなる?
- 子どもの虫歯と大人の虫歯の違いはある?
- 虫歯はなぜ痛い?
虫歯とは?健康な歯が虫歯になるまで

プラーク、エナメル質、脱灰など、虫歯に関連するキーワードを使いながら虫歯のメカニズムについて、詳しく分かりやすくご説明します。
1.プラークが作られる

虫歯は口の中に常在する数種類の原因菌が、歯や粘膜についたわずかな食べカスをもとにプラークを作り出すところからスタートします。
口の中は、平常時は虫歯ができない中性のpHに保たれています。飲食をしても、すぐにだ液が酸を中和して中性に戻してくれます。ところが、食べカスが歯にくっついたりしてずっと残っていると、だ液の作用が追いつかず、口の中のpHは酸性に傾いてしまいます。すると、虫歯の原因菌が活発に活動し始め、食べカスを腐敗させてプラークを作り出すのです。

プラークは、白くてネバネバしたものです。
あれの正体って、食べカスが腐ったものだったんですね〜。

そうなんです。この時点で歯磨きをしてプラークを取り除けば虫歯にはなりません。
だから、「食べた後は必ず歯磨きしなさい」って言うんですね。
2.プラークの中で菌が増殖する

原因菌はプラークを作った後も、じっとはしていません。作り出したプラークの中でも増殖しています。
え!あの白いネバネバの中にも細菌がいるんですか?

そうです。プラークは原因菌の巣窟です。原因菌はプラークの中でも増えて酸を作り出します。
(ゾ〜!)
3.エナメル質が溶け出す

原因菌が作り出した酸は、歯の表面にあるエナメル質を溶かします。エナメル質の中にはカルシウムやリンといった歯を形成する成分がありますが、エナメル質が溶けると一緒に出ていってしまいます(脱灰)。

この時点でだ液が活躍できれば、歯を修復して元通りにできます。
再石灰化ですね!

そのとおり。ただ、原因菌が増えて上回っていると、再石灰化が追いつきません。
4.歯に穴があく

原因菌は酸を作りながらどんどん増殖し、やがて歯に穴をあけてしまいます。穴があいてしまうと、もう元には戻せません。歯の内部に原因菌がどんどん侵食してしまうのです。
へぇ〜、これが虫歯ができるまでのしくみなんですね〜。

そうです。だから歯みがきを怠ると虫歯を防げなくなっちゃいます。
歯みがきって簡単だけどすごく大事なんですね〜。
虫歯の痛みと症状

虫歯による痛みを感じるのは、症状がかなり進行してからです。原因菌が歯の表面を溶かしている段階では、まだ痛みを感じません(この時点で、歯の表面がうっすらと黒ずんで見えることもあります)。
しかし、歯の内部に入り込んで象牙質に達すると、噛んだ時などに痛みを感じることがあります(歯の表面は黒くなっています)。象牙質の先の歯髄にまで達すると、激痛へと変わります。

怖いのはこの後です。もっと症状が進むと神経が死んでしまい、痛みも感じなくなってしまうんです。
それ、治ったんじゃなくて神経までやられちゃったってことですか?

そのとおり。その頃にはもう歯冠(噛む部分)は破壊されてポッカリと大きな穴があいています。
子どもの虫歯と大人の虫歯の違い

子どもの虫歯と大人の虫歯は、症状の進み具合が少し異なります。子どもの場合は虫歯の入口は狭いですが、奥深く進行します。表面は目立たなくても内部では神経まで到達するので大きな痛みがあり、ある日突然天井が落ちるようにぽっかり穴があくこともあります。
大人の場合はこういうふうには進まないんですか?

そうなんです。大人の虫歯について詳しく説明しますね。
危険!怖い大人の虫歯
大人の虫歯のでき方には、3通りあります。
- エナメル質が溶かされ象牙質に到達する
- 表面が侵される慢性う蝕
- 歯の根の先に膿がたまる
最初の象牙質に達する虫歯は、子どもの虫歯と同じでき方です。しかし、あとの2つは大人特有といっても良いでしょう。もう少し分かりやすく説明します。
理由1.大人の虫歯は広く浅い

大人の虫歯の特徴である慢性う蝕とは、歯の表面が長年の蓄積で黄ばむ虫歯のことです。歯の表面全体に広範囲に広がります。つまり、”広く浅く”なのです。歯の内部奥深くには到達しませんが、全体的に歯を弱めます。
へぇ〜。こんな虫歯もあるんですね〜。

浅いので、痛みもありません。痛みがなくて気づかないから怖いんです。
ジワジワと歯が弱まっていく感じなんですね。
理由2.昔の治療跡が虫歯になりやすい

若い頃の虫歯治療した跡の被せものの下で、虫歯が進行していることもあります。被せものは経年劣化などによって隙間ができますが、その隙間から細菌が入り込み、繁殖して虫歯となっているのはよくあるケースです。
特に神経を取っている場合はとても厄介で、細菌は歯の根深くまで侵食し、膿を作り出しています。ある日突然顔が痛くなる・口臭がひどくなる・膿が上顎洞(上顎の上にある空洞)に入り込んで副鼻腔炎になるなどの症状で現れます。

神経を抜いた歯は自浄作用がないので、だんだん茶色くなっていきます。
じゃあ1本だけ茶色かったら神経がないかもしれないんですね。

そのとおり。しかも、虫歯になっているかもしれません。
理由3.歯ぐきが下がったところから虫歯になる

歯ぐき下がりは加齢によって起こるもので、誰にも避けられません。歯茎が下がった箇所はエナメル質で覆われていないので、虫歯になりやすくなります。

エナメル質で覆われていない部分は柔らかいので、細菌がつきやすいんです。
へぇ〜、そういう要因もあるんですね〜。
こんな人は虫歯になりやすい

大人になってからも虫歯になりやすい人とそうでない人がいます。虫歯になりやすいのは以下のような人です。
- 口や唇が乾きやすい
- 口呼吸やいびきの癖がある
- 甘いものや清涼飲料水が好き
- タバコを吸う
- 寝る前に歯を磨き忘れることがある
口内が乾きやすい人や、口呼吸などのクセがある人は、だ液料が少なくなります。甘いものには砂糖や甘味料が含まれているので、頻繁に甘いものを取る人は、年中虫歯にさらされている状態です。
タバコのニコチンは歯ぐきの血流を悪くする作用があり、歯の周辺組織の自浄作用が働かなくなって虫歯になりやすい環境を作ります。また、タールは歯にこびりついて歯を茶色くし、慢性う蝕の元となります。
最後に歯みがきですが、1日のうちでもっとも口内細菌が繁殖するのは就寝時。ですので、寝る前の歯みがきはとても効果的です。

寝る前は時間をかけてじっくりと歯と歯ぐきの境目なんかを磨くといいですよ。
分かりました〜!
定期検診で日頃から虫歯チェック!
虫歯の初期症状は、自分ではなかなか気づきにくいものです。歯医者さんでは定期検診を行っています。電話で予約すれば、専用機器での徹底的なクリーニングや虫歯や歯周病のチェックなどをしてくれますので、賢く活用して虫歯を予防しましょう。
- 虫歯は原因菌がプラークを作ることで始まる
- プラークの材料は微量の食べカス
- だ液は歯を守る役割がある
- 子どもの虫歯は狭く深いので痛みがあり、気づきやすい
- 大人の虫歯は広く浅く、神経をとっていると痛みも感じないので気づきにくい
- 歯の根に膿がたまると深刻
- だ液量が少ない人、甘いもの好きの人、タバコを吸う人は虫歯になりやすい