歯科治療によるAir Way(気道確保)|歯並びの悪さが招く健康への悪影響

歯並びが悪いと喉の空気の通り道が狭くなり全身が酸素不足になってしまうというリスクがあります。
そこで、近年では”歯科治療による気道の確保”という考え方に注目が集まっています。
歯並びの悪さが原因で不定愁訴などの全身の健康に悪影響をもたらすことが多いのですが、一般的にはまだ良く知られていません。
そこで、ここでは歯と気道の関係について、詳しく説明します。
- 何科にかかっても体調不良の原因が分からない
- 頭痛や肩こりは歯並びの悪さが原因ではないかと思っている
- 舌の位置がおかしいと酸素不足になると聞いたことがある
- 睡眠時無呼吸症候群は舌の位置と関係がある?と思っている
1. 歯科治療によるAir Way(気道確保)とは

歯科治療による気道の確保とは、理想的な咬み合わせで気道を確保するということです。
歯がU字型にきれいに並んで、かつちょうど良い高さの咬み合わせならば、舌は正常な状態を保てます。しかし、歯並びと歯の咬み合わせの調和が取れていないと、咬み合わせが悪いと酸素をうまく取り入れることができません。
歯科治療にとって気道の確保は、吸いこんだ酸素を全身にうまく送り出せるかどうかの重要なポイントなのです。

えー、咬み合わせが悪くて酸素不足になるなんて、考えたことなかったです〜。

そうですね。一般的にはあまり知られていない事実です。しかし、大げさでなく人間が生きる上でとても重要ですよ。2章で、詳しく説明しますね。
2. 舌房(ぜつぼう)を確保する重要性

歯科治療では、歯列の内側にある口腔の容積を広げて舌房を確保することが重要です。舌房とは舌の房、つまり舌を収めるベロの部屋のことです。
舌房がしっかりとあれば、口を閉じている時に舌先が上の前歯の裏の歯茎に軽く触れ、舌全体は上顎にくっついている状態になります。
しかし、舌房が狭いと、舌の居場所がなくなり喉の奥の方に行くしかありません。結果として気道が舌で塞がれて空気が通る道が細くなり、呼吸がしづらくなります。
こういったことから、舌房を確保するのはとても大事なことなのです。

舌房が狭いから舌が収まらなくなって、それで気道が狭くなるんですね。

よく「舌の正しい位置」とか言いますよね?これは舌房のことを説明しているのです。

なるほど〜。
2-1. 舌房が狭くなると起こりうるリスク
舌房が狭くなると1回に吸える酸素が少なくなり、酸素不足に陥ります。舌房が狭くことで起こりうる健康被害は、以下のものです。
- 偏頭痛
- 睡眠障害
- 疲労感
- 慢性的な冷え性
- 肩や首のこり
- 腰痛
- 顎関節症
- 顔のゆがみ
- 喘息
一見、歯の咬み合わせとは結びつかないようなものばかりですが、その理由は以下の図を見てもらうと一目瞭然です。

出典:心身の健康をつくる 歯の矯正(各務 肇)
舌房が狭くなると酸素不足になります。酸素不足になると血流に乗って届くはずの新鮮な酸素が不足し、末端に行く頃にはなくなってしまうので手足が冷えます。
歯並びの悪さや舌房の異常は神経系や骨の歪みなどにも影響し、顔面や首から下のあらゆる器官に影響が出てしまうのです。
3. 舌房が狭くなる2つの理由
では、なぜ舌房が狭くなるのでしょうか。その理由は以下の2つです。
- 舌に問題がある
- 間違った矯正治療
詳しく説明しますね。
3-1.【理由その1】舌に問題がある

舌は筋肉の塊です。しかし、舌に十分な筋力がないと舌房が狭くなってしまいます。
赤ちゃんは舌で乳首をしごいて母乳を飲みます。母乳が終わっても唾液を飲み込むという行為によって、舌の筋肉は発達していきます。舌は口内を広げ、あごの成長も促します。
唾液がたくさん出れば唾液もたくさん飲むことができますが、唾液はあごを使わないと作られません。大きな唾液腺はあごの周辺にあるからです。
柔らかいものばかり食べていると、十分に唾液を飲むことができなくなります。そのため舌の筋力が十分に発達できず、舌房が狭くなってしまうのです。
舌の筋力が十分に育たないまま大人になり、さらに加齢に伴う筋力の低下でさらに問題が顕著化すると言われています。「誤嚥性肺炎」も老人になってから発生する問題ではなく、幼少期からの問題が老人になってから表面化しただけだという説もあります。

へぇ〜、舌って実はすごく重要な働きがあったんですね〜。

そうですね。舌は生まれたときから死ぬまで生命維持に関わる大事な器官なのです。
3-2.【理由その2】間違った矯正治療

実は、間違った矯正治療でも舌房が狭くなってしまうことがあります。歯列をただきれいに並べるだけの矯正治療は、舌との調和がうまくいかず舌房を狭くしてしまうのです。
人工的に無理やり作られた歯列では口内の空間が狭くなることがあります。その状態では舌が左右の歯にギュウギュウ押されて盛り上がります。
悪いことに、今まで自力で歯を並べることができなかった筋力のない舌は後方(喉の方)に押しやられてしまい、その結果気道が狭くなって細い笛のようになってしまうのです。

調和が取れていることを簡単にチェックするには、舌を見ることです。歯並びと舌の調和がうまくいっていないと、舌の両脇に歯型がついています。

えっ!(思わず鏡を取り出して自分の舌を見る)
4. 気道確保を前提とする最良の矯正歯科の選び方

気道確保を前提とする最良の矯正歯科を選ぶには、治療前のカウンセリングで咬み合わせの重要性や気道確保について説明をしているかどうかをチェックすることです。
上記のような矯正歯科は、「Air Way Dentistry」をしっかりと理解しています。
「Air Way Dentistry」とは気道確保を中心に行う歯科治療のこと。「Air Way Dentistry」では、これまで説明してきたように、適切な咬合高径(咬み合わせの高さ)をすることが重要と考えています。
もしも、適切な咬み合わせの高さ(咬合高径)の確保なく場当たり的な治療を繰り返すと、口内の高さを失うことになり、舌房が狭くなることにつながります。
すると、「2-1. 舌房が狭くなると起こりうるリスク」でお伝えしたような様々な健康被害が出てしまうのです。つまり、安易な抜歯や舌房に配慮がない治療は、健康被害を招くということです。
「Air Way Dentistry」を理解している矯正歯科は、これらのことを分かりやすく説明してくれるはずです。
「咬み合わせが大切」というのはどの歯科医院でも言うことですが、なぜ咬み合わせが大切なのか詳しい説明がなければ、こちらから聞いてみましょう。もしも、内容まで詳しく説明できないようであれば、別の歯科医院を検討するのがおすすめです。

う〜ん、矯正歯科なんてどこも同じだと思ってました…。

そうですね。患者側がきちんとした知識を持っていれば、自分の受けたい理想の医療を受けられます。

そういうことですね〜。
歯科治療によるAir Way(気道確保)のまとめ
補綴などの歯科治療では、後の健康への影響を考えるとAir Way(気道確保)という考えなしで行うのはとても危険です。
特に矯正治療は見た目の美しさだけでなく、咬み合わせが重要です。うまく咬み合わせが調整されていないと口腔容積が狭くなり、気道が十分に確保できなくなって治療後に様々な不定愁訴に悩まされる可能性が高いからです。
そういったことから、矯正治療を行う時はその歯科医院が「Air Way Dentistry」を行っているかどうか確認し、安心して治療を受けましょう。
- 歯科治療による気道の確保とは、理想的な咬み合わせで気道を確保すること
- 理想的な咬み合わせがなされないと舌房が狭くなる
- 舌房が狭くなると偏頭痛や腰痛、冷えなど様々な不定愁訴が起こる可能性が高い
- 舌房が狭くなる理由は「舌の筋力が弱い」「間違った矯正治療」の2つ
- 矯正治療を行うなら「Air Way Dentistry」を理解している歯科医院を選ぶのが賢明