インプラントも歯周病になる?感染・炎症・膿…危険なインプラント周囲炎

インプラントも歯周病になる?感染・炎症・膿…危険なインプラント周囲炎

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杉田大先生
杉田 大 先生
所属:杉田歯科医院(千葉県船橋市)
専門:保存修復
2013年 東京歯科大学卒業。現在は杉田歯科医院での臨床のほか、株式会社DoctorbookでDental事業部のマネージャーを務める。
「インプラントは人工の歯だから、虫歯や歯周病にならない?」と思って安心しているとしたら、誤った認識です。
インプラントそのものは、確かに虫歯に侵されることはないのですが、歯周病に似た「インプラント周囲炎」を発症することがあります。
特に、細菌感染に弱いインプラントは、天然歯よりリスクが高いのです。
「インプラントにしたから大丈夫!」と快適な噛み心地を得たことでうっかり油断して、お手入れをサボっていると大変なことになりかねません。ここでは、インプラント周囲炎について、詳しくお伝えします。

【インプラント周囲炎】とは?

インプラント周囲炎とは、インプラントの周りの組織が細菌感染によって炎症を起こす病気です。症状は、歯周病に似ています。

歯周病とどう違う?

インプラント周囲炎は歯周病と症状が似ています。
歯周病とは、歯茎が炎症を起こし、悪化すると歯茎から血や膿が出る、歯がグラつく、といった症状がでるようになる病気です。歯周病菌が肺や血管に入ると、肺炎や心筋梗塞、脳卒中などの命にかかわる全身疾患にもつながる危険があります。
インプラント周囲炎も歯周病と同様で、場合によっては命を脅かす恐れもある怖い病気です。

歯周病より早期発見しにくい

歯周病は自覚症状が少ないので、なかなか早期発見しにくい病気なのですが、インプラント周囲炎は、それ以上に気づきくいと言えます。
同じ歯周病の原因菌の細菌感染によって発症しますが、インプラントの周りは深くくびれていて、炎症が発見しにくく、痛みなどの自覚症状が少ないまま進行するため、気付いた時にはかなりひどくなっていることもあります。

歯周病の10~20倍の速さで悪化

細菌感染により歯茎に炎症が起き、土台となっている骨が破壊されて痩せていくのですが、その悪化スピードが歯周病の10~20倍もの速さであることが特徴です。インプラント周囲炎では年間1~2mm程度の速さで骨が失われていくので、放置しているとあっという間に悪化します。

【インプラント周囲炎】の症状とは?

インプラント周囲炎がどのように進行するのか、順を追いながら具体的に説明します。

歯茎が腫れる

痛みや沁みなどの自覚症状が現れにくいインプラント周囲炎。そのため気づきにくいのですが、よく観察すると歯茎が赤くなったり腫れたりしていることがあります。

歯茎から出血する

歯茎から出血することがあります。インプラント周囲炎がいったん発症すると自然治癒することは基本的にないですが、体調によって症状が出たり出なかったりすることもあります。

歯茎が退縮する

歯を支える土台の骨が破壊されはじめると、歯茎が退縮してインプラントの白い歯の部分が長くなったように見えます。歯茎の痩せがひどくなると、インプラントの上部構造と埋入した本体を接続する部分が露出することがあります。

歯周ポケットが広がる

歯茎が腫れ、出血が日常化しはじめると、人工歯と歯茎の境い目の隙間の広がりが目立つようになります。これが、歯周ポケットです。
歯周ポケットが広がると、食べカスやプラーク(歯垢)が溜まりやすくなって細菌感染が進み、炎症が深い部分まで達し、周囲炎がどんどん悪化します。

膿が出る

細菌感染が進むと、化膿した部分から排膿されるようになります。ここまで症状が進めば気づきそうなものですが、痛みなどの解りやすい自覚症状がないせいで自分では異変に気付かずにいることも少なくありません。
膿が出ることによって口臭がひどくなり、周りの人に指摘されるようになって、ようやく異常事態に気付く人もいます。

インプラントがグラつく

歯茎や土台の骨が破壊されると、インプラントが固定されずにグラつきはじめます。最初は浮いているくらいの感覚ですが、徐々にグラつきがひどくなり、最終的にはインプラントが脱落してしまいます。

【インプラント周囲炎】を発症する原因とは?

インプラント周囲炎を発症すると、自然治癒することはありません。一度かかってしまうと自然には治らないので非常にやっかいです。
インプラント周囲炎を発症する原因を知って、発症の予防と早期発見に努め、進行を食い止めましょう。

口内の清掃が不十分である

インプラント周囲炎は、インプラント治療を受けたあと、口内を清潔に保つことができていなければ発症リスクが高まります。

歯磨きの方法が間違っている

「毎日きちんと歯磨きをしているのに、歯茎が腫れた!血が出る!」という場合は、歯磨きの方法を間違っているのかもしれません。
もし、歯ブラシ1本だけで歯みがきを行っているとしたら、十分とはいえません
歯磨きは、歯と歯の間のケアが命です。歯間ブラシやデンタルフロスといった歯間ケア専用アイテムを採り入れた歯磨きを、1日1回以上、行うようにしましょう。

歯科医院での定期的なメンテナンスをしていない

インプラント歯周炎を予防するためには、歯科医院での定期検診+メンテナンスが欠かせません
インプラントの治療が終わったら、「もう歯科医院に通院しなくても良くなった」と喜ぶのではなく、「インプラントを長持ちさせるために、定期検診&メンテナンスのための通院が始まる」と考えてください。

生活習慣病がある

インプラント歯周炎は、生活習慣病のひとつです。ほかにも糖尿病・歯周病といった生活習慣病の症状がある場合は、インプラント周囲炎が悪化しやすいリスクが高まります。
生活習慣病と歯周病・インプラント周囲炎との関連について、世界的にさまざまな研究が進められています。どちらが起因になっているかについては様々な見解があるのですが、生活習慣病を患っていると歯周病やインプラント周囲炎の発症リスクや進行スピードが速くなることは、多くの研究機関から報告されています。
また、生活習慣病を治療すると、歯周病やインプラント周囲炎の症状に改善が見られたという研究結果も数多く報告されています。

喫煙者である

喫煙は、歯周病やインプラント周囲炎のリスクが高まる要因です。喫煙していると歯茎の血流が悪くなり、急速に骨が失われることが解っています。歯周病を専門に扱う学会でも、禁煙推進のための啓蒙活動が熱心に行われています。

45歳以上である

定期的に行われている厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、高齢になるほど広い歯周ポケットをもつ人の割合が増えることが報告されています。特に歯周病は、45歳以上の人が歯を失う要因の第一位とあって、高齢になれば歯周病やインプラント周囲炎を発症するリスクが高まるといえます。

【インプラント周囲炎】になると、どんなリスクがある?

最後に、これまでもお伝えしてきたインプラント周囲炎のリスクについてまとめます。

発症すると自然に治らない

インプラント周囲炎を発症すると、自然治癒することは基本的にありません。生活習慣の改善と歯科医院での治療が必要です。

インプラントが脱落する

なかなか自覚症状が少ないインプラント周囲炎ですが、放置しているとひどい時にはインプラント体が脱落してしまういことも。せっかく埋入した高価なインプラントを失ったり、治療をやりなおしたりすることがないよう、日頃からしっかりと予防を心掛けましょう。

周りの天然歯の寿命を縮める

インプラント周囲炎は、インプラント1本だけの問題ではありません。周囲炎ということからも想像がつくと思いますが、周辺組織を傷めます。当然、まわりの天然歯も歯周病に侵されるリスクが高くなり、残っている他の天然歯を失うことにもなりかねません。

噛み合わせの悪化による体調不良

インプラント周囲炎によって歯にグラつきがでてくると、噛み合わせに影響が出てくることがあります。そうなると、他の歯に負担がかかり、周りの歯の寿命を縮めます。
また、噛み合わせのバランスが乱れると、頭痛や肩こりが慢性化するといった体調不良につながることもあります。ひどい時には顔に歪みが生じることもあります。

細菌感染で命を落とす恐れも

インプラント周囲炎が進行して細菌が増殖すると、細菌が気道や血管に入り込んで全身を巡り、重篤な疾患を引き起こすことがあります。

【インプラント周囲炎】の予防は正しい歯磨きが基本

怖ろしいインプラント周囲炎のリスクについてお伝えしてきましたが、毎日しっかりと正しい歯磨きでプラークコントロールを行えば予防できます。必要以上に不安になることはありません。
プラークコントロールとは?
プラークコントロールとは、インプラント周囲炎の原因となるプラーク(細菌の温床となる歯垢)を減らすこと。毎日の歯磨きは、プラークを除去することを意識して行います。
甘いものをダラダラ飲み食いし続けるといった生活習慣を改善して、プラークができやすい口内環境をつくらないことも大切です。
正しい歯磨きとは?
    • 食後、できるだけすぐに歯磨きを行う。
    • 就寝中は口が乾燥して細菌が活発化しやすいため、歯磨きしてから寝る
    • 歯間ブラシやデンタルフロスを採り入れた歯間ケアを 1日1回以上は行う。

3カ月~半年に一度の定期検診で予防できる

インプラント治療後の定期検診では、レントゲン、細菌量の検査、歯茎やインプラントの状態のほか、口内の清掃状況についても確認します。その時のお口の状態に応じて、効果的な歯磨きの方法についての指導も受けられますので、セルフケアのクオリティも上がります。
定期検診の際にはプロによるクリーニングを受けられますので、セルフケアでは落とせない蓄積汚れをきれいに清掃できます。
インプラントを周囲炎から守り、長持ちさせるためには定期検診は必要不可欠です。

※この記事では一般の方に向けてわかりやすくするために、インプラント周囲炎とインプラント周囲粘膜炎をあわせてインプラント周囲炎と表記しています。
writer
ナチュラル・ハーモニー
ナチュラル・ハーモニー
大手出版社出身、ディレクター・ライター歴15年以上。歯科ライティング実績は500件以上。都道府県主催テレワーク講座にも登壇。趣味は観劇と史跡巡り。柴犬好き。