【医師監修】ペースメーカーの人はインプラント治療ができないの?

【医師監修】ペースメーカーの人はインプラント治療ができないの?

この記事の監修医師一覧

柿木辰美先生
柿木 辰美 先生
専門:一般歯科
2013年 明海大学歯学部卒業。卒後は東京都内の歯科医院に常勤歯科医師として勤務。 現在は複数の歯科医院で非常勤歯科医師として、インプラントや歯内療法を軸に一般歯科診療を日々行なっている。

「インプラントは金属を骨に埋める治療のため、植え込み式の心臓ペースメーカーを使っている人はインプラントができないのかもしれない」と思っている人は多いかもしれません。しかし、ペースメーカーを体内に入れていても、インプラント治療ができるケースがあります。今回は、ペースメーカーをしていてインプラント治療をする場合と、インプラント治療の詳細をご紹介ます。

インプラント治療で考えられる体内式ペースメーカーのリスク

心臓ペースメーカーを体内に入れていても、インプラントは使うことができますが、リスクがないわけではありません。以下は、インプラント治療時に考えられるペースメーカーのリスクです。

電気メスは使えない

ペースメーカーを装着している場合、電流が流れる電気メスを使うのは危険です。そのため、ペースメーカーを入れている人は事前に医師に告げ、電気メスを使わない方法で治療しなければなりません。そもそも、電気メスの取扱説明書には、植え込み式のペースメーカーを装着している人への使用は避けることと記載されています。

最近ではフラップレス法といって、電気メスを使用しない手術法があります。この手術法では、心臓病や脳梗塞などの持病がある人でもインプラント治療が可能となりました。

【医師監修】フラップレスインプラントのメリットとデメリットとは?

感染症のリスクがある

インプラントを埋入すると、ペースメーカーが口内の細菌に感染するリスクが高くなります。

インプラントはインプラント周囲炎という病気になりやすいです。インプラント周囲炎とは天然の歯でいえば歯周病のようなもので、一度罹ると治療しにくく大変厄介でもあります。

インプラント本体は人工物のため感染はしませんが、インプラント周辺の組織が感染すると、細菌が血流に乗って体内にも流れ込んでしまうのです。その結果、稀にではありますが、感染性心膜症を引き起こす可能性があります。

抗血栓薬を使用していると血が止まりにくい

ペースメーカーを装着している人は、抗凝固薬抗血小板薬などの抗血栓薬を服用しているケースが多いものです。ペースメーカーは不整脈を完全になくすではなく、頻度を少なくする治療法だからです。

抗血栓薬を服用している場合でも、インプラント手術は薬の服用を継続して行います。もし服用を中断すれば、命に関わるような危険に晒すことになるからです。しかし、手術中は血が止まりにくくなることが考えられるため、止血対策などをしながら行います。

断られる場合もある

医師は基本的に、少しでもリスクがあることは患者さんに勧めません。そのため、病院や医師によっては、「ペースメーカーを装着している人はインプラントを控えてください」という治療方針のところもあります。

ペースメーカーを装着していてインプラントを希望する際には、ペースメーカーとインプラント治療のリスクや対処方法などを熟知した、経験豊富な医師を選ぶのが賢明でしょう。

内科主治医との連携が必須

植え込み式のペースメーカーをしている人は、内科と歯科の両主治医に相談し、両方の医師間でも連携を取りながら治療方針を固めます。

一般的に、不整脈がある人は、発作から半年以上経ってからのインプラント治療が望ましいです。しかし、ペースメーカーは再発予防という側面があるため、症状が改善したとしても油断はできません。その時の状態などを医師間で連絡しあい、手術日などを決定する必要があります。

そもそもインプラントとは

インプラントとは、医療界では体内に埋める機器の総称です。失った体の機能を元のように使うことを目的とし、体内に設置する人工機能を指します。ですので、顎骨に人工歯根を埋め込むデンタルインプラント、そして、心臓の人工弁であるペースメーカーもインプラントのひとつです。他には、骨折などをした際の骨を固定するためのボルトや、人工内耳などがあります。

歯科で行うインプラントは、正式にはデンタルインプラントといいますが、一般的にインプラントというと歯科のインプラントのことを指します。

インプラントの素材の種類

インプラントの素材は、チタン、ジルコニア、セラミックなどです。ジルコニアとセラミックは非金属ですが、チタンは金属です。

インプラントにチタンが使われる理由は、動物実験をしていたスウェーデンの整形外科医ブローネマルク博士によって、チタンは骨に強固に結合するということが偶然発見されたためです。1952年のことでした。その後、研究が重ねられ、1965年に世界初のチタン製インプラントが用いられました。日本でチタン製インプラントが使われ始めたのは、1983年です。それからは、チタンがインプラントの主な素材となっています。

植え込み式の心臓ペースメーカーは、電流で動作をコントロールしています。そのため、インプラントの金属を歯に埋めるとなると電磁干渉が起こり、誤作動を引き起こすのではないかと不安になるのも当然でしょう。しかし、心臓から歯までは距離があるので、ペースメーカーがインプラントによって誤作動や不具合を起こすことはほとんどありません

インプラントの治療

ペースメーカーを装着している人は、インプラント治療の流れも気になることでしょう。ここでは、おおまかな治療の流れを説明します。

初診・問診(カウンセリング)

初診では、詳しいお悩みをカウンセリングで相談します。口腔内の状態病歴、服用している薬なども、この時に医師に伝えます。

検査

フラップレス手術を行う場合には、従来のレントゲン検査と歯型の摂取に加えてCT検査を行います。CT検査では、三次元的に口腔内や骨の状態を詳細に知ることができます。

診断・説明

検査の結果を元に、分析・シミュレーションを行います。治療方針が決まったら、患者さんに詳しく説明されます。少しでも不安や疑問が残る人は、ここで納得がいくまで説明を求めましょう。

埋入手術

手術当日、インプラントの埋入を行います。手術中は局所麻酔を使うため、痛みを感じずに終了します。

固定期間(仮歯)

埋入したインプラント体と骨がうまく固定するまでは、3〜6ヶ月程度必要です。この間には仮歯を装着し、他の歯との噛み合せ具合すり減り具合などを見て、人工歯の微調整に役立てます。

人工歯装着

骨とインプラントがしっかりと結合したら、仮歯を外して人工歯を装着します。

インプラントには定期メンテナンスの通院が必要

定期メンテナンスは、最初のうちは1、2ヶ月に一度、その後は季節ごとに一度などのペースで通うことになります。定期メンテナンスは、インプラントを長持ちさせるために必要なものです。定期メンテナンスの内容は、口腔内の確認や専用機器でのクリーニング、歯磨き指導などです。

口の中に虫歯や歯周病が発生すると、口内感染によりインプラント周辺も細菌に侵されて、インプラント周囲炎になってしまいます。インプラント周囲炎は進行が早く、放置しておくと歯ぐき下がり痛みが発生するだけでなく、最悪の場合にはインプラントが抜け落ちてしまう可能性があります。

口内に虫歯や歯周病がないか、インプラントを含め口内になにか不具合が生じていないかなどをチェックするために、定期メンテナンスに通います。

もし、定期メンテナンスに通うことを怠ると、なにかトラブルがあって修理が必要な時に保証が使えないので、注意しましょう。

ペースメーカーを装着している人は医師に相談を!

心臓ペースメーカーを装着していても、インプラント治療は可能です。ただし、電気メスを使わないことや内科医と相談することなど、いくつかの条件があります。また、感染症のリスクがあるため、医療機関によっては断られる場合もあります。インプラントを検討する際には、必ずかかりつけの内科と歯科医に相談しましょう。歯科医選びは経験豊富信頼が置けることがポイントです。